『神保町「わたる」のテイクアウトで、充実のディナーを楽しむ』蓼喰人さんの日記

蓼喰人の「蕎麦屋酒」ガイド

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蓼喰人 (男性・東京都) 認証済

日記詳細

 レビューで述べたように、「呑ませる蕎麦屋」として人気の高い神保町「わたる」が、このコロナ禍により本来の夜の営業を一時的に休んで、テイクアウトを主体とした昼の営業を始めている。
 今回はこちらの仕事が集約された「晩酌セット」と、日替わりご飯の「鯛飯」を買って帰り、その夜に家で味わってみた。

 「晩酌セット」の内容は「料理4品+サービスの一品」「出汁き玉子」「天とじ」一式、それに1合の酒が付いている。

 15種類ほどの中から選んだ一品料理は「筍土佐煮」「鶏白レバーしぐれ煮」「海老アボカド含め煮」「人参ナムル」それにサービスで付けてくれた「切り干し大根炒め」で、それぞれパックから出して小鉢に盛ってみるとなかなか見栄えが良い。
 必要に応じて少し温めてみたが、すべてに丁寧な仕事が施されており、酒の肴に好適で味が濃すぎることが無いのも有り難い。
 いずれも美味しかったが、特に滋味深い筍、臭みの無いレバー、セロリなども入った切り干し大根が良かった。

 「出汁き玉子」は、焦げ目を付けない綺麗な仕上がり。
 結構甘めの味付けだが、持ち帰り用のため出汁の含みは少な目にしたしっかりとした食感が好ましい。
 
 「天とじ」は、大き目のパックに結構な数の天ぷらが収まっていた。
 野菜ばかりの所謂「精進揚げ」だが、種類が豊富でなかなか面白い。
 外見では見分けがつきにくいが、小さ目にカットされた茄子・椎茸・しめじ・いんげん・しし唐・玉ねぎ、さらに百合根・新生姜・長芋(食感からして菊芋かも)などがそれぞれ2.3個ずつ確認できた。
 これにはビニールのタレ瓶入りの割下、生卵1個、さらにあしらい用の三つ葉も付いており、仕上げは自分で行うスタイル。
 
 我が家では小型の土鍋を用いて調理した。
 割下を煮立てた中に天ぷらを並べ、火が通ったところに溶き卵を流して三つ葉を散らして蓋をする。
 予熱で蒸らすように火を入れて、1.2分で半熟状態となり完成。
 割下はそばつゆベースで、出汁が効いていて旨味十分。
 天ぷらの衣が潤びてそれが玉子に馴染み、一見濃いように思えてなかなか良い味に出来上がった。

 店売りの酒が1合付くが、銘柄は山形庄内の「鯉川 特別純米」が瓶に詰められて添えられていた。
 銘柄名や簡単な紹介文が記された紙片が、瓶の首に巻かれているのも芸が細かい。
 料理を一品ごと丹念に味わいながらの一杯は、実に快適。
 もちろん酒はこれだけでは足りず、ワインなどがプラスされたのは言うまでもない。

 別に購入した「鯛飯」も良かった。
 薄味だが鯛の旨味が米の一粒ごとに染み込んでいる。
 パックにたっぷり詰められており、この日は1膳分を電子レンジで温め、残りはおにぎりにして翌日に美味しく頂いた。
 
 全体的に繊細な仕事が施されており、こちらの技が随所に示されていた。
 期せずして充実した家呑みが出来て、大いに満足できた。
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