『2014年10月 趙楊の会 秋の旬の四川食材』satotsujiさんの日記

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日記詳細

【2014年10月中旬再訪】 趙楊の会 秋の旬の四川食材

四川料理では間違いなく日本トップのシェフの料理で、四川省の迎賓館(国の運営)である金牛賓館で20代で総料理長(国家公務員として)を任され米国大統領や中国国家主席のコースを出した天才の力(天才故の英才教育を受けています)、『引き出しをうまく開けられるか否かは、参加するお客の食に対するこだわりや飽くなき情熱、店との信頼関係構築が出来ている点、四川料理の造詣の深さによる所が大変大きい』。

また、『 四川料理(中国料理)で美味しいものを食べたい場合の常識なのだが、必ず、2〜3週間前には、予約確定し、予算を決め、人数を決め(出来れば、8人くらいからがベター)、参加者の嗜好に合わせたメニュー決めをする 』必要があります。このプロセスを、コダワリの無い人に任せてしまうと、そういうコダワリの無い料理になってしまいます。

突然、当日に行って、「最高のモノを出してくれ」、といっても、作りおきのありきたりなものしか出せません、ということになります。貴重な乾物を丁寧に戻して下ごしらえをするのに、最低一週間、食材によってはもっと時間がかかります。お客も(幹事役も)謙虚になって趙楊さんと最高の場を作り上げる努力が必要です。


料理は正宗川菜(正統な四川料理)。日本人向けにアレンジしたものではありません。最近流行りの、ヌーベルシノワなどのような創作系とは対極に位置します。従って、重厚な正統的な料理を受け入れられる方には大変良い店ですが、外国人向けに調整されたものを好まれる方には、難がある可能性があります。

(こういう正統なお料理ですから、所謂、町の中華食堂で出る、チャーハン、餃子、杏仁豆腐などは当店ではついぞ食べた経験がありません。作れない訳ではなく、作らないだけでしょう。)

ちなみに、今回は、8月末に交詢ビルの店が閉まる前に、9月下旬の四川訪問時に食材を確保し易いように、今回の日程、人数、概算予算を決めて、お願いをしていました。
つまり、1ヶ月以上前。

小生も食べなから、勉強を続けており、日々の研鑽の継続が大事と感じている次第です。

2014年10月6日に再オープンした趙楊さんは、旧店舗の交詢ビルから程近い出来たばかりのビルの7階にあります。

交詢ビルでは、ビル側からの希望で昼営業をしていましたが、今は従来の当店のやり方である、夜営業一本に戻して、正統四川料理のコース提供に集中されています。

今回も、いつものメンバーで個室を貸し切り、和気藹々と楽しみました。3回連続で参加されている人もいらっしゃり、皆さん、この会になじまれてきております。

この「趙楊の会」、今回で、3回目となりますが、参加された皆さんは、春の料理、夏の料理、秋の料理を楽しまれ、次回暮れには真冬の薬膳料理を楽しむ予定となっております。(本格的な薬膳料理は、特に冬に食べると丁度良いらしく、コース全体を食べ終わると、真冬でも半袖で帰れるほど身体からエネルギーが出るそうです。)

さて、今回は、15,000円のコースで過去3回の『趙楊の会』の中では、最もリーゾナブルなものでしたが、この位の値段に抑えながら月一で訪問され、どんどん引き出しを開けようと20年以上続けている料理業界のプロもおられるようです。ただ、値段よりも、この時期に趙楊さんで食べる意義は、9月末に四川の現地を訪問され、趙楊さんの昔からの食材調達のネットワークから仕入れられた、フレッシュなまさに季節の最高の香りや味わいの食材を使った料理を楽しめる良さがあります。

今回のコースの内容は以下の通り

1 十二種類の冷菜(前菜)

1-1 クラゲの巻物
1-2 チシャ(西洋レタス、山くらげ)の茎
1-3 乾物湯葉の戻し
1-4 地鶏の青山椒ソース
1-5 芝海老のネギソース
1-6 大根(紫キャベツの汁で)
1-7 スモークダックと梨
1-8 牛レバーとキノコを蒸して固めたもの
1-9 インゲン豆の上海蟹ソース
1-10 ゴールドピータン
1-11 ズッキーニ
1-12 スモーク豆腐と兎のミカン蒸し

2 鯛のすり身団子とキヌガサタケ卵のスープ
3 ナマコとヤクのペニス四川漬物唐辛子煮込み
4 秋の四川アヒル料理
5 トリュフとフカヒレの姿煮
6 キノコと筍燻製の煮込み
7 おおしろ豆と牛肉の薬膳料理
8 四川屋台の名物料理(モツそば)
9 雪蓮花の実デザート

最初の12種類の前菜が圧巻で、秋の四川の食材がふんだんに使われているのが、わかります。ここまでのものが用意できる店もそうそうは無いでしょう。

今回新しく当店でデビューした5年物の瓶出し紹興酒を飲みながら、この贅沢な前菜を食べることで、食欲を刺激します。ちなみに、この紹興酒は、色付けされていないもので、写真のお茶のようなものがそれです。

今回は、前回よりもピッチが速く、直ぐに30,000円の五稜液の白酒に移りました。

どれも皆好きなのですが、個人的な好みでは、

1-2 ザーサイかと勘違いしたチシャの茎(別名: ステムレタス、山くらげ)のピリ辛感と食感、
1-4 地鶏の青山椒ソースの青山椒の強力な香り、
1-8 一見豆腐の角切り焼きに見える牛レバーと各種のキノコを蒸して固めたもののこのコクと旨味の凝縮した味わい、
1-10 のより上品な味わいで初めて食べるゴールドピータンが、良かった。

2 鯛のすり身団子とキヌガサタケ卵のスープは、当店の実力を知るのにぴったりな一品。何より、透明度の高い黄金色のスープに、朝鮮人参を始めとする滋味溢れる食材のエキスが染み出し、幸福を感じる香りと味がします。お吸い物やスープは、店の顔ですが、まさに本日の顔となるお料理です。趙楊さんの意気込みが伝わる一品。ちなみに、高級中華食材でキノコの女王と呼ばれる『キヌガサタケ』の卵は、今回の四川渡航で調達されたもので、滅多に食べられるものではありません。それを、自家製の鯛のフワフワなすり身団子と、このスープとを一体にさせることで、今まで食べたことの無い食感になっていきます。

3 高級乾物の、子孫繁栄にも効くと言われて珍重されている、ヤクのペニスと、やはり高級乾物の黒ナマコを戻して作った一品ですが、戻し方が匠で、プルンプルンになっています。それを、酸味と唐辛子の辛味のついたソースで絡めてあるのですが、ご飯と共に食べたくなる味です。唐辛子が、漬物になっているので、生や乾燥させた時の、鋭い刃のような辛さは丸く抑えられて、料理を上質にしてくれています。

4 金木犀の香りとアヒルの焼き物の香りが渾然一体となった、秋の四川料理。ハチミツも使っているそうで、金木犀(桂花)は、漢方薬の効能としては、「お腹を温め、寒さを散らし、“気”の巡りをよくすることで、ストレス過多症状を改善する働きをする」らしく、やはりハチミツの殺菌消毒効果ともあわさって、風邪などにもなりにくい料理なのでしょう。医食同源の思想が垣間見える料理です。

5 今回、私が一番感動した料理がこちらです。四川トリュフの最高級の物はこれまでも使われていましたが、採れたてのモノを使うと、どんなに凄いことになるのか、今回初めて分かりました。部屋中がトリュフの香りです。この1ヶ月以内位でしたら、まだあの凄い香りで楽しめるはずです。今までも当店で、凄い香りや味覚の料理は楽しませて頂いておりますが、このトリュフとフカヒレは初物です。フカヒレ料理は、昨年暮から数えて3回目ですが、全て味付けも異なり、同じ食材でもこれなので、本当にとんでもない方です。

6 乾した筍(玉蘭片)を5日間掛けて戻して燻製にしたもの、各種のキノコ(二種類のアガリスク、他)で作った一品。やはり、これらも、四川渡航時に調達したものを使っており、この時期にピンポイントで食べたことの無い私は初めて食べました。このソースは、食材からの出汁がでていて、好きな味わいでした。

7 和牛のホホ肉を5時間煮込んで、ホロホロに煮込みながら原型を留める、大きな白豆が上に、また砕かれた緑豆(実際の色は、黄色)が下にあり、薄味でこのままでも、上品な料理になり得るもの。漬けだれは、複数の調味料を掛け合わせて作ってあり、普通に再現するのは難しい。先ほどの上品な牛肉や白豆を、このタレに付けると、全然違った強烈な料理になるから、面白い。

実は、これも薬膳なのだそうだが、どの辺が薬膳なのか、聞きそびれてしまった。

ただ、参加者皆さん、流石に食べログの重鎮レビューアーさんばかりとあって、皿を舐めるように、スープの一滴、ソースの一滴まで残さず召し上がるのは、脱帽もの。私も漬けだれも残さず頂きました。

趙楊さんも、皿まで食わんばかりの勢いに、喜ばれたと思います。

8 四川屋台の名物料理、モツそば。

これは、『やっぱりモツが好き』さんが来るから、モツそばになった、訳ではなくて、もともと正宗四川料理では、高級店でもモツは使われるのです。私は、これまで何度となく趙楊さんには来ていますが、このモツそばは初めてです。サツマイモの澱粉で作ったそばと、辣油ベースの汁とが合いますね。

9 最後のデザートである、雪蓮花の実を使ったデザートも、かつて皇帝しか使用が許されなかった高度4000m級の山でしか入手出来ない貴重な薬草で、いまでも採取量が少なく中国の特権階級でしか手に入らないそうです。流石、金牛賓館元総料理長だけあって、その辺も抜かり無く入手するルートがあるのでしょう。ちなみに、薬効は、アトピーやアレルギーに効く、冷え性予防、血行が良くなるとか。やはり、これからの時期にぴったりな内容なのでしょう。味わいも優しく身体か喜ぶ内容でした。

趙楊さんの料理は、極めて深く、良さが十二分に分かるためには、通い続け、勉強しつづけないと分からないでしょう。

今回の御会計:
155,900円 (税・サ込み)
20,000x6
19,900x1 (端数の方)
16,000x1 (お酒を殆ど飲まれなかった方)
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