行列のできるさんのマイ★ベストレストラン 2009

きっと明日いいことが。

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行列のできる (70代以上・千葉県) 認証済

マイ★ベストレストラン

レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
1位から10位までランキング付けした「マイ★ベストレストラン」を公開中!

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今年は1年を通して食べログの取材を続けることができました。健康に感謝です。2008年から参戦しておりますので、2度目のベストテン。対象は440軒とのことです。昨年は130軒ほどですから、、今年がおそらく空前絶後のレビュー数になると思います。

今年は生まれて初めて1年の四分の一を大阪で過ごすことになり、関西のお店で数々の感動をいただきました。また、短い期間でしたが津軽半島、能登半島、八ヶ岳とまわってレビューにいろどりを与えてくれたことも、ついきのうのようです。極私的なレビューにお付き合いいただきました読者のみなさまには心から感謝申し上げます。皆様のはげましなしでは、ここまで続けることはできませんでした。

1.『慈久庵』
場所は、茨城県常陸太田市の里山の中。今年も秋口に訪問し、また新たな感動をいただきました。少しシャイに見える店主小川さんの手から、想像を超える素晴らしい出来のおそばをいただくことが出来ました。都心の繁盛店をたたみ、一念発起してふるさとで始めた焼き畑でのそば作り。それに続く里山再生運動。今年も着実に前に進み、仲間で収穫したそば、小麦を供給するお店のリストがまた長くなりました。このリストの中には是非行ってみたい上州上田のパン屋さんも含まれています。飲食店の枠を大きく超えた活動、それに引きずられて自然本来の味を提供する。このような理想的なお店がもっと増えないかと思うばかりです。ちょっと差がある1位でした。

2.『たま木亭』
場所は、京都府宇治に近い黄ばく。大阪に居ればこそやっと訪問することが出来ました。レビューを見て絶対に食べてみたかった数々のパン。そのどれもが、思わず意表をつく小さなサプライズが用意されていて、その極旨な味とともに新鮮な驚きが楽しめるパン。こんなのは、どこにもないですよ。開発されて年月を経ているパン種もあるようですから、またあっと驚きながら深い味に感銘を受ける、そんな新製品をどんどん送り出してほしいですね。

3.『粟ならまち店』
場所は、奈良市ならまち。奈良大和の伝統野菜を見事な演出とともに世に紹介するお店の姿勢に興味があって訪問しました。巷間に伝えられているように、それは見事な一編のストーリーを感じるお皿の数々で、味、いろどり、バラエティ、アクセントと表情を変えながら目の前に現れる大和野菜を堪能させていただきました。お料理の説明も卓越しており、上位2席と遜色ない思い出に残るお店でした。

4.『やまがた屋』
場所は、大阪市北新地。店主山形氏の絶妙トークで進行する焼肉ライブショー。極上のホルモンが山形氏のゴッドハンドにより、最上級の旨みが引き出された焼肉に変身。素材のかたまりから、惜しげもなく周囲を切り捨てて本当に旨い部分だけを残すその大胆な下拵え。焼肉を知り尽くした名人から、特上の贈り物をいただきました。

5.『たかはし中華そば店』
青森県弘前市にあるラーメン屋です。津軽半島を車で回る旅の途中で入ったお店です。青森県伝統の煮干しラーメンのお店で、地元でもなかなかお目にかかれない超濃厚煮干しスープを張ったラーメン。煮干しを内臓ごと全部入れて出汁をとるので、独特のえぐみがあってうまい。昨年に引き続き煮干し系ラーメンは根強い人気を博し、都会では行列店が出来ました。しかし青森にあるここが元祖。伝統の本当の本物の煮干しラーメンのお店。なかなか行けるところではありませんが、幸運にも賞味させていただきました。

6.『中華蕎麦とみ田』
千葉県松戸市にあるラーメン、つけ麺屋でいまや実力日本一。東池袋大将軒のラーメンの神様山岸氏の孫弟子にあたる店主富田氏は、独自の感性と努力で日本一のつけ麺を完成させた。行列で2時間待っても食べたい1杯。つけ麺の発明者でもある山岸神様も孫弟子が作るつけ麺に満足な笑顔を見せる。全国からファンが集まり、連日長蛇の列が出来るが、店主富田氏は、急ぐことなくあせることなく、基本に忠実な手法で1杯1杯丁寧な麺作りを今日も続けている。

7.『幸楽』
静岡県浜松市の老舗のとんかつ屋さん。うまいとんかつを食べてもらおうと、店主が探し当てた豚肉。うまみのバランスが良く、脂身はどんなとんかつからも経験できない口の中でのデリシャス・メルティング。ご夫婦で一心同体となり、噛むごとにうまみがあふれ出てくるとんかつを提供する。健康で元気な店主ですが、もう70歳を数えて後継者のいない状況ゆえ、機会があれば浜松で途中下車してまでもいただきたい崇高な黒豚とんかつです。

8.『和菓子処 ほうせん 茶寮 宝泉』
京都下鴨にある和菓子販売と座敷にあがって和菓子をいただける甘味処を兼ねたお店。このお店、歴史を感じるお屋敷をそのまま使っていて、靴を脱いでお座敷に上がります。注文するのは、純度100%のわらび粉から手作りする、注文を受けてから手作りするピュアわらび餅。今まで見たことがない黒い色、いままで味わったことのない食感、今まで食べたことのない日本固有の上品な甘さ。日本庭園を眺めながら、すばらしい逸品をいただくことが出来ます。お抹茶もおいしい。

9.『無鉄砲大阪店』
大阪市大国町にあります。京都に本店がある、超濃厚トンコツのラーメン屋。濃厚でありながら一口食べるとその旨みにびっくり。濃さもすごいが、味も比例してすごい。ここまで濃度を上げながら、臭みもなく旨みだけを取り出す技術に脱帽。同じ系列の弟子の店がむしゃらでトンコツの濃度だけは同一のラーメンを食べましたが、旨みが伴っていないことを発見。旨みを取り出す、旨みを残す技術のすごさを改めて感じました。がむしゃらに濃度をあげても、旨みはあがらないよ。京都店、豚の骨が交通不便もありますが、この大阪店、はんぱじゃないよ。

10.『西洋厨房いとう』
京都知恩院前にあります。独自のルートで入手する京都の野菜を巧みに使い、構成、調理、見せ方に工夫のあるフレンチを提供していただきました。ランチでいただきましたが、シェフいとうさんの生真面目な調理と巧みな技は短い時間でしたが、十分楽しむことができました。個人的に通算500回目のレビューのお店として指名させていただき、その重責を十分果たされ、楽しませていただき、深く感謝いたします。

(選外)『New Delhi』
  名古屋のあるインドカレーのお店です。ナンとタンドリーチキンのレベルの高さから、もう一度訪問できたらベスト10に選ぼうと思っていたお店。訪問したときに食べたデリーセットのカレーの量が多くなくて、カレーの評価が十分できてませんので、潜在的な評価を踏まえての選外。ビリヤ二も食べたいし、2010年にどうなるか楽しみです。

ということで、〆てみるとベスト10のうち、自宅がある関東からは2軒、関西から6軒、東北、中部からそれぞれ1軒とバラエティに富む結果となりました。この10軒をはじめ、今年であった440軒のそれぞれから楽しい時間を提供していただき、生活が、人生が豊かになりました。また新しい出会いを求めて、来年もさすらいの美級ハンターの旅を続けたいと思います。
                            行列 拝

マイ★ベストレストラン

1位

慈久庵 (常陸太田市その他 / そば)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥3,000~¥3,999

2011/10訪問 2011/10/04

里の秋を疾走し、茨城県水府村の慈久庵に。日本の素晴らしい秋の景色の中でいただく蕎麦三昧。

(2011年10月 再訪)
2年ぶりとなりましたか。慈久庵が、最初に蕎麦のうまさを教えてくれたと思ってます。蕎麦の魅力を教えてくれたと言い換えてもいいかもしれません。蕎麦店で★を5つつけたのは、ここだけ。

やっぱり秋にきました。紅葉にはまだ1ヶ月あります。里山では、もう柿が色づいてました。ほうぼうで煙があがり、何を燃やしているのでしょう。慈久庵の場合、どのくらいの行列ができるのか、まだ予測できません。行列の後ろになれば間違いなく2時間待ち。そう思って早めに家を出て、お店の前に着いたら開店2時間前。いくらなんでも早すぎました。竜神大吊橋まで行って紅葉の進み具合でも見てこようかな。

それでも少し黄色や赤が混じり始めてます。確実に季節が動いていました。お客さんのいない売店に入り、時間をつぶします。しみこんにゃくがあったので買いました。この地方独特のこんにゃくの冷凍乾燥品です。慈久庵にもどり、いつもの縁側に座って時間が経つのを待ちました。手にしているのは蕎麦本。いろんな店に行きたくなります。

定刻前に店主の小川さんが店から出てきました。招じ入れられます。靴を脱いで、入り口で小川さんからおしぼりと品書きを受け取り、お好きな席へ、といつものルーチンです。座るのは、厨房に一番近いテーブル。ここからですと、厨房で働く店主の姿が格子窓越しに見えるのです。

今日は、3点セットをやめて、葱天せいろ(1700円)にしました。魂胆があるのです。もう1軒、なかなか行けなかったお店に行こうかなと。店主の小川さんがこわそうだというレビューを散見します。忙しいと怒っているように見えると。違うと思います。真剣になったときの表情かな。それと、まず無口です。でも、こちらから話しかけると、いろいろ教えてくれます。この日は、とてもおだやかなお顔でした。今月末にひかえている蕎麦の収穫のことを考えているのかなあ。蕎麦が満開な畑を見ました。

どうしてかなあ。慈久庵のこの部屋に入ると落ち着くんです。この椅子やテーブルのデザインもいいなあ。1番目に入店したので1番目に調理してくれます。2番目が同じオーダーなら一緒に調理。違うなら、1番を配膳するまで2番を始めません。2時間待ちの理由です。小川さんの手で配膳されたのは20分後でした。

いつ見ても迫力ある蕎麦です。なんでしょう、この星は。殻の黒や甘皮の茶色は分かりますが、黒、茶、黄が七色になって透明な蕎麦の中に点在しています。粗挽きです。芳しい蕎麦の香りにくらくらします。江戸蕎麦細打ち。蕎麦の豊かさが匂いにも味にも。どうやって閉じ込めたのか、どうやって開かせたのか。つゆは濃厚な辛め出汁。ほんのさきっちょにつけて、一気にすすります。やっぱり慈久庵だなあ。大げさに言えば、胸が熱くなって・・。だめですね、フォールインラブです。夢中でいただきました。2分で蒸篭が空に。

地葱の天ぷらは、岩塩でいただきます。蕎麦と一緒には食べません。葱の天ぷらを自宅でもしようと思って勉強のためにいただきました。な~んだ、目からうろこの天ぷらでした。

この日も忙しい時間の中で少し話ができました。前を向いて歩き続ける人です。里の再生ももう次の段階に入って来ていると感じました。小川さんの熱意が地域を動かしてます。今月末収穫する蕎麦が食べられるころ、来年初頭かなあ、またこの部屋に戻ってきたいとおもいました。


(2009年10月再訪)
約1年ぶりの訪問です。同じ季節での訪問ですが、里山で感じる秋はごくわずか。紅葉もまだまだのようです。

小川さんのご活躍はこの1年も目をみはるものがありました。相変わらずマスメディアからは好意的に取り上げられ、里の再生運動も順調に推移しているような記事も拝見しました。千葉に帰ってきて短期間での自宅滞在ですが、どうしても慈久庵でお蕎麦が食べたくて、小川さんの仕事振りを拝見したくて自宅から120kmかなたの山里にある慈久庵を訪れました。

見覚えのあるフランスのカントリーハウスと日本の曲がり家を融合させたデザインの家が登山道に突然現れます。実家に帰って来たようなふっと安堵感を感じました。同時に、あのお蕎麦を食べられる、というわくわくした高揚感。

定刻、小川さんが営業中という看板を持って中から出てきます。そこで、外で待っていた客が中に招き入れられます。物静かで余計なことは言わない話し方。華奢な体躯のどこにあれだけのエネルギーが潜んでいるか不思議な思いです。

今回オーダーしたのも慈久庵コース4品(3100円)。こんにゃく、そばがき、せいろ、デザート。この日は前回と違い、Bさんも同行してます。二人でひとつ、地葱の天ぷら(600円)を追加しました。

窓の外に広がる里山を見ながら、お料理を待ちました。小川さんが一人でオーダー取りから後片付けまでスタイルは同じですから、このお店に入ったら時間の流れをすべてお任せします。その時間の流れを楽しみます。

さあ、お料理が順番に出てくる時間が来ました。最初はこんにゃくからです。本当にうまい、味があるぷよぷよのこんにゃくに感激もあらたに。この続くお料理はどれもすばらしく旨さにふるえましたが、初稿ですでに8000文字を使い切っていて、それぞれの評を載録するスペースがありません。評は初稿にゆずるとして、地葱のてんぷらだけ。葱の食べ方で、初めての経験でした。そぎ切りにしたネギを天ぷらに。衣を薄くして、パリッと揚げてます。南米の海の塩が添えられました。この爽やかな天ぷら。絶対自作しよう。蕎麦には、えびでもいかでもなく、このような素材の天ぷらだけが蕎麦を生かすんだなあ、とあらためて思いました。


(2008年11月初稿)
慈久庵のことを初めて食べログで知ったのは、およそ3か月前のこと。庵の主小川宣夫さんのことがだんだん分かるにつれ、慈久庵でお蕎麦を食べたいとずっと焦がれていました。

ご自身でお生まれになった古里である茨城県水府村(現在は、常陸太田市)に慈久庵を創設、理想の蕎麦処にしようと近在の蕎麦農家に声をかけて。いい蕎麦を手に入れるべく伝説では農家から手に入れた玄蕎麦すべてを粉にして吟味したとか。
かつて蕎麦の一大産地だった水府から、一軒また一軒と蕎麦農家が消えていき、良質な蕎麦を手に入れようとしたとき、その事実が重くのしかかる。しかし、小川さんは持ち前のバイタリティで2つの解決法を見出し、成功の道を大きく歩み始める。

ひとつは、大きなテーマになった里山の再生。蕎麦の生産だけでは生計が立てられないが、裏作に小麦を栽培することで成り立つ道を柱とした里山の再生。近在の農家に熱く訴え二毛作の裏表、蕎麦、小麦の生産量を徐々に増やしていく。そうなると、蕎麦と小麦の消費増大の道筋をつけなければならない。

良質な小麦の消費を目的に、常陸太田に粗挽き蕎麦と石臼うどんの慈久庵鯨荘塩町館を開店させた。さらに小麦の消費を伸ばすため、乾うどんの生産を昨年2007年から始めて運動を加速させる。

2つ目の解決法は、一度荒れた畑はもとに戻らないと言われているのを焼畑農業の手法で見事に再生させ蕎麦を収穫できるようにする。そこでご自身のホームページでは、“幻の焼畑そばを食しませんか!”とズバリ呼びかけている。焼畑をすることで畑からストレスがなくなる、と。

常磐道那珂インターをおりて1時間、どんどん都会から離れて山と畑と農家が主役になる里へと走り進んで行きます。この日も、まさに日本の正しい秋晴れ。綿雲がひとつふたつ浮かぶ透きとおった青い空。窓から入って来る空気が冷たくて、気持ちがいい。農家には必需品の柿の木が、どの家のも柿の実をたわわにみのらせ、平和な光景が広がっています。さすがの、晴天の連休日。常陸太田を抜ければ名所袋田の滝もすぐそこなので、紅葉狩りが目的の人も一緒に北へ北へと向い、里は1年ぶりの活気にあふれています。

開店60分前。2番目のお客さん到着。40分前、突然小川さんがお店の外へ。縁側でまつお客さんが座る座布団を持っての登場でした。縁側に座れるだけの座布団を抱えて。おお、これで、100%食べられる。5分前、開店。

この日のオーダーは、慈久庵コース5品で。5人掛けのテーブルで、ひとり。贅沢を堪能させていただきます。このとき、お店のそとで待っていた人は1時間以上は待ったのかもしれません。相席はなし。相席の雰囲気ではない、真剣な場所。だから、1時間前に来て待っていたほうがずっと楽しいのに。

1品目。こんにゃくです。もちろん自家製のさしみこんにゃく。この辺一帯はコンニャクイモの生産が盛んで、さしみこんにゃくが名産品になってます。小川さんがお盆に乗せて運んできます。なにしろ、お店は小川さんひとり。オーダーとり、調理、配膳、片付け、レジまで全部一人でやります。普通のお店の感覚とは全く違います。わたしは待つあいだも、慈久庵がでている雑誌、本を読んで外の景色を見て、ものすごく楽しかったのですが。

素敵なお皿にそぎ切りされたこんにゃくがのってます。小川さんは、お料理を持ってきてお料理の説明をしてくれますが、こっちは初老のビューアーなので小川さんの小さな声では聞き取れませんでした。わさびを付けて召し上がって、とかそのような事をおっしゃってたのか、と。小川さんは、むだなことは言わず、必要以上の大きな声は出さない、あるいはシャイ?なのかも知れません。

何もつけないこんにゃく。うまい。こんなさしみこんにゃく、初めてです。ぶりっとした食感にうまみがあるこんにゃく。むかしは、みんなこんなおいしいこんにゃく食べていたんだ。大量生産で道を踏み外した、のか。次に、すったばかりのわさびをちょい乗せて。これも、いい。おいしい。でも、何もつけないほうがおいしい。ぺろっと、あっという間に全部なくなりました。食べた後のお皿もかわいいので、記念撮影しましょう。そば湯と一緒にいただきました。そば湯は、最後まで熱いのが出されます。途中、一回そば湯ポットごと新しいものに交換されました。

2品目。そばがき。結構な量です。湯気が立ってます。小川さんからは、“はじめは何もつけずに・・・・・・”。あとは、わかりませんでしたが、ねぎと味噌が別のお皿で来ましたので、お好みでつけたら、とか言ったのでしょう。

このそばがき。本日一番でした。あつあつ、ほふほふ、ふくよか、なめらか、もっちり、あまさが、蕎麦そのものの香りのなかにあるんですよ。このそばがきは、いままでのどれとも違いました。うんまい。もう、いや、うますぎる。くろい点々があって、これは粗挽の特徴ですね。ねぎをちょっと、みそをちょっと、で試しましたが、これも何もつけないほうが格段においしい。量もたっぷりで、しあわせな時間もたっぷり。

ちょっとベランダに出てみます。まあ、なんと目の前はずーと秋たけなわの里の風景が広がっています。景色を楽しめ、とはこのことだったのですね。テーブルもあり、そとでも食事、お茶ができます。風景の記念撮影を。

3、4品目。粗挽きせいろ蕎麦と野草の天ぷら。きれいな色のお蕎麦です。そばがきと同様、黒のてんてんが多く、食欲をそそります。この蕎麦こそが、焼畑農法で自家栽培し手刈り天日乾燥したものを石臼で粗挽に自家製粉した蕎麦粉から打ったものです。野草の天ぷらは全部説明していただきましたが、聞き取れたのは、たんぽぽだけ。知識のなさで、すみません。お塩の説明がありましたが、これもわからず。

おそばを何もつけず、ひとくち。うーん、さわやかなうまさ。不思議なさわやかさ。細いけどこしがあります。ホントにおいしいお蕎麦です。そばの香りが高く、こんなしあわせあっていいんかい、と思えるうんまいお蕎麦です。くちの中でふあっと一瞬の香りを残して、すうっとのどを通り過ぎて行きます。

“蕎麦も饂飩もめんを打つだけでは未完成。おいしいつゆと出会って、はじめてその真価を発揮する。”小川さんは著でそのような発言をしていますので、それではめんつゆにつけて食べてみましょう。

うあー、やっぱりおいしいですね。つゆは、こいくちであまみは少ない。きりりとした味で節のかおりが立っています。結局、お蕎麦だけをそのまま食べたのが半分、残りの半分だけがつゆと一緒にいただきました。おそばも過去最高点。残りのつゆは、お約束のそば湯に。しあわせすぎる。

5品目。もう最後になってしまいました。本日のデザート。いちじくのふろふき。いろんな料理を考えだすものです。いちじくの上に味噌がのっています。

いちじくのうまみがすごい。久しぶりに食べるいちじくでしたが、こんなおいしかったっけ、というぐらい、うんまい。ただ、かわをむいて、なにかシロップのようなものに漬けただけ?煮た感じはしません。とにかく、うんまい。味噌は控えめでインパクトではなく味のひろがりのためか、いちじくのあまさをより引き出すためか。文句のつけようなし。いや、むしろ大絶賛のデザートで雄大な舞台の一幕の終了です。

  • 葱天せいろ
  • 黒、茶、七色の星
  • 葱天

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2位

たま木亭 (黄檗(JR)、黄檗(京阪) / パン、サンドイッチ)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2009/09訪問 2009/09/21

写真を見てなんじゃあこりゃあの衝撃から10ヶ月。やっと食べれた日本一のパン。うまさもなんじゃあこりゃ

(2009年9月再訪)
この日は、京都東山の西洋厨房いとうに向かった日です。京都に行くなら是非たま木亭に寄り道して、焼きたて熱々のパンを千葉から駆けつけてくれたBさんに食べてもらおうという計画を立てました。

行列も3回目の訪問。シアワセモノです。お店に着くと珍しくお客さんは4人だけ。おお、ゆっくり買えると思ったら、いつのまにか満杯に。数えたら8人になってました。千葉のおみやげも買って、行列も未食のパンを3種類買って、そして実食するのはパンシュ。焼きたての熱々が厨房のワゴンに乗っており、すみません、今食べたいので、と言ってトレイに乗せていたパンシュ2個と交換してもらいました。

黄ばく駅にてくてく向かいながら、ものすごく熱いパンシュを取り出し2人で食べます。あじじじ。どお?すごい、このパン。こんなおいしいパン食べたことない。そうでしょ、すごいでしょ。サイコロベーコンからまだ脂が染み出てきて、実にうまい。ポテトもエスカルゴバターと渾然一体。パン生地のうまいこと。あじあじで噛み切れません。もう2度と経験できない経験を二人で楽しみました。あなたも、是非。

丹丹フランス
ぎっしりの黒豆自体がめちゃうま。ミルククリームが一緒に入っていて、フランスパンの生地ですから。やってくれましたね。

リュスティック
はじめてのリュスティックは、なかのもっちりさが矢張りはんぱなくすごい。このために、パンナイフ買いましたよ。オーブンタースターとバターは、いつものホテル朝食ビュッフェ会場で。

西洋あんぱん
シェフ、やってくれましたね。がぶり、で食べると中からオレンジピールが。あれ?間違えたかな?二口目、うま~いチョコレートの層にぶつかり、へ~、これ、なるほど西洋あんぱん、ですわ。

(2009年8月再訪)
8月1日から大阪入り。その後ばたばたと仕事と生活を立ち上げているうちに、すっかり忘れていたのが自身の食べログ参戦1周年記念。8月2日にことですから、無理ないよねって自分慰めしてますが。8月2日が365日目で、この日のレビューが430件目。まあ、よく食べたわ。この1年。オセロ中島のゲキ太りを笑えなくなり。

さて、つかみ寿司に満足してから向かった先が京都。ならば、ここは絶対に素通りできませんよ、JBLさんのご実家の隣駅、たまき亭に行きましょうか。このお店の魔力にかかってしまいました。はんぱなく、うまい。シェフの仕組むどっきりを楽しみたい。可能な限り、全種類食べたい。

場所もわかってるし、買うものも簡単。食べたことないもの。ただ一人生活なんで、今回も食べれるだけ5個買いました。

買ったあと向かった先は、へへ、京都大学。harukaさんがかつて侵入を敢行。そこで食べた、という故事に基づいて追体験しようというのです。

ピッタリのターゲットがありましたよ。クニャーネ。

クニャーネ(168円)
(クニャマン生地のコロネに自家製カスタードクリームと生クリームをたっぷり合わせたクリームを、ご注文いただいてから絞ります。サクサクの食感を味わってください。)
(注)お店から、パン名を書いたポップだけの撮影許可を得ておこした文章です。ただ、”焼きたて”の紙がクリップで留められて、それで隠れた文字を想像して書いているので間違いもあり得ます。また、隣のポップを激写間違えたり。すまんすまん、って先に。

このクニャーネはクリームがタップリ入り、いかにもすぐ傷みそうなので食べました。大学の構内入り口には守衛所のようなところがありましたが、無人。ちょっと失礼して。

これ、分かりやすく言えばビアドパパ方式でクリームが入ったばかり。ひとくち噛むと、コロネがバリンバリンでうまい。ものすごく硬いばりんばりんなので、噛むと皮が飛び散ります。キャンパスに棲むありんこや小鳥におすそ分け。クリームがまだ冷たくておいしい。口のまわりにクリームをつけっぱなしで食べます。誰もいないキャンパス。これが168円。驚きです。

山栗ショコラ(210円)
(栗と生クリームとチョコレート)
これがまたサプライズでしたね。このパンのトッピングがかりかりでメチャうまい。なんのナッツかなあって、そりゃあ山栗だべ。うまいぞ~う。パンの中の甘さがサプライズ。食べてみんさい。

ブリオッシュカネル(あずき)(210円)
(生クリームとシナモンのブリオッシュ)
これがまたあま~~くて、しあわせ。ブリオッシュがべちょべちょですね。シロップがけなんでしょうか。結構大きさがありますが、あっというまになくなってしまいました。

硬焼きバター(210円)
(バターたっぷりフランスパン)
これもまたすごいぞ。何がすごいって、写真でべろというか舌のような部位があるでしょ。ここが、ぱりぱりで食感がたのしい。そして、またサプライズ。本体の中がほとんどレア。熱を入れて膨らます、ことをしていない。ふくらんでいません。だから、その食感はもちもちのうまさで、ベロとの対比がすごい。だから、こんな形してるんだ、と感心してしまいます。

博多(178円)
(オリジナル明太子フランス)
旅でずっと持っていたので表面の明太子ツブツブがかなり取れてしまった。ので、入れていた袋を逆さにして、落ちたつぶつぶをたべました。うまい。ここで予期できなかったのは、上から切り口をつけて、明太ピューレーをそこに挟んでいました。これがうまかったなあ。パンもうまい。こんな明太フランス、初めてです。まあ、たべてみんさい。トッピングのあられもすごいな。とんでる発想。

これで、やっと10種類食べましたが、残りはあと20種類?


(2009年8月 初稿)
昨年の8月、まなちんさんが上げたレビューのパンたちの写真を見て、思わずなんじゃあこりゃあ?とびっくりしました。今まで見たこともないパンのデザイン、材料。そしてレビューを拝見しても、並々ならぬレアなパンであることに気づきます。よくよく見ると、あれ?TOP50位。おみそれしました。パン部門で全国トップ。わかるなあ。でも場所はどこ?京都?

京都と言っても広うござんす。宇治です。黄檗です。読めないでしょ。そんだけカントリーサイド。おおばく、と読むそうですが意味不明。大阪に来たときからも何とか行けないものかと思ってましたが、ちゃんとチャンスは巡ってくるんですね。今自由になるのは日曜日だけ。土曜日はプロジェクトの稼ぎ時で休んでられません。そんでたま木亭の定休日を確認したら、日曜日は営業!ほれほれ、やっぱ日ごろの行いよね。苦節10ヶ月の短い期間で行ける幸運に感謝して計画を立てました。

*ベーコンハース(189円)
 角切りベーコンとチーズ。
*カンパーニュコッペ(189円)
 深いコク。ルヴァン種の味わい。
*ルージュ(220円)
 アーモンド、クルミ、ピスタチオ。チェダーチーズがたっぷり。
*パンシュ(210円)
 角切りベーコンとじゃがいも。エスカルゴバター。
*ブルーベリーガレット(231円)
 ブルーベリーとくるみ生地にサブレ生地をのせました。

ベーコンハースは、見かけはおとなしく、どこにも売っているパンかと思いきや、全然違います。小さな小窓からのぞいていたベーコンを良く見ようとパンをちぎると、中からはでかい角切りのベーコンが出てきてサプライズでした。角切りの大きさも十分存在感のあるベーコンです。ちょっとソテーしてあるのかなあ。とにかく食べでがあって、うまい。この189円はCP高いですね。ベーコンには胡椒がかかって味のめりはりがいい。パセリの乾燥させたものが入っているようですが、これは、パンシュに入っているエスカルゴバターかもしれません。

カンパーニュコッペはルヴァン種が食べられるので買いました。ホテルの朝食時にはオーブントースターが使えますのでこれは月曜日の朝食べました。もう言うこと無いですね。コッペの中は大きな気泡で穴だらけになっており、食べたときの食感はものすごくなめらか。皮となかとの対比もすばらしく、これも189円です。生地の味もうまい。

ルージュは、最初からチェダーチーズをこぼしてぱりぱりに焼いていますので、見た目でうまさが分かります。チーズを期待して食べると、これが実は違ってました。わなにはまりました。うぐ、と食べてすげ~って思うのはナッツのうまさですね。それ、全然予期していないので驚きます。そこが、玉木さんの楽しみなのかなあ。入っているナッツがアーモンド、クルミとピスタチオ。ちゃんとポップに書いてありましたが、ポップを見ないでメルティング・チェダーを見て買うようにインパクトをそっちにもっていってる、ところがすごい。

パンシュは、パンの中央に窓を開けてベーコンとポテトが入っていることを知らせてます。このじゃがいもが入ることで、ベーコンハースと味が全然違います。その理由はじゃがいものせいではなく、おそらく味付けの違いなんでしょうか。パンシュのほうが、味が複雑です。ベーコンハースは、味はストレートにベーコン。まさかベーコンの種類までは変えないでしょうが、変えたように感じる巧みさ。

ブルーベリーガレットだけが、甘い味。サブレ生地の層が思った以上ありましたが、やっぱりパン生地のほうが断然うまい。途中からは、サブレ生地をはがして食べたくらい。

ほんとに、うまい。もっともっと食べたくなります。こんな5個くらいでレビューするのが申し訳ないくらい、隣に置いてあるパンの中身が想像できないおもしろさがあります。このトリッキーなパンたちを次々考え出している玉木さんてどんな方なんでしょうか。絶対また行きたいですね。また、魔法をかけられたい。

  • 丹丹フランス
  • リュスティック
  • 西洋あんぱん

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3位

粟 ならまち店 (近鉄奈良、京終 / 郷土料理、鍋、野菜料理)

1回

  • 昼の点数: 4.0

    • [ 料理・味 4.0
    • | サービス 3.5
    • | 雰囲気 3.5
    • | CP 3.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥4,000~¥4,999

2009/08訪問 2016/05/11

いつか食べたかった奈良大和の伝統野菜のランチフルコース。シンフォニーのごとく華やかで夢心地でした。

お店のことを知ったときから行きたかったお店です。

奈良にあるので行く機会はほとんどない、と思ってましたが思いがけない大阪出張でその行ける可能性の芽が出てきました。ただ、予約が必須なお料理なのでほいほいと行くわけにはいきません。仕事の状況を見ながら、この日ならと思って電話をすると、首尾よく、”お待ちしております。”予約した日から決行の日までの長かったこと。予約したのは、”大和と世界の野菜”コース。要予約のコースです。

お店があるのは、ならまち。近鉄奈良駅から南に下ったところにあります。奈良にはお店の開店1時間前に到着するように住之江公園を出発。途中何の問題もなく奈良まで来ました。開店まで時間があったので、ぶらぶらと興福寺を見ながら奈良公園にある柿の葉寿司店で夕飯にするおみやげをゲット。そこから戻ってきて、お店に着いたのが開店2分前。いつもながらの計画性ある行動です。このときは、30分前から夕立のような大雨が降り、お店もそこを考慮して着いたときはお店は開いてました。

入り口は日本風の新しい料亭か小料理屋さんのインプレッション。戸をひいて開けると、いらっしゃいませ、と何人もの人が一斉にウエルカムあいさつをしてくださいました。女性がひとり近づいてこられ、さあさ、傘おあずかりします。これびっしょりですから、置く所教えてください。はい、だいじょうぶですよ。やりとりがあり、顔をあげるとそこはカウンター席がひろがり、幅の広いカウンターには見たこともないような野菜がごろごろと、レイアウトも美しく飾られております。テンション、あがっちゃいます。こちらへどうぞ、とすでにマットの敷かれた席に案内されます。カウンターには、行列一人と女性客1組2人だけ。席を空けてゆっくりさせていただいたようです。

さあ、どんなお料理がまっているのでしょうか期待に胸がふくらみます。

最初から度肝を抜かれました。なんという野菜たっぷりの前菜。籠に盛られての登場です。ここから、すべてのお料理について説明していただきました。お料理と使われているやさいのことを、丁寧に親切に教えていただきました。もう絶対これはレビューに書きこまなくちゃあ、と思うくらい野菜と料理への愛情を感じたのですが、お店を出るときには野菜の名前、もうすっかり忘れておりました。

前菜の野菜の籠盛り合わせの説明の前に、もうひとつ籠が出てきました。トマトとかレモンのような見たことがないような果物が入れられてます。これが、なんと全部トマトだったんです。説明していただきます。なぜこの籠のトマトの説明から入るのか、後で分かりました。このトマトが前菜に入っているのです。カットすると分からなくなるので、その本来の姿を見せるのです。以後、同じようにいろんな野菜を厨房からもってきて見せて説明してくれます。カウンターは、野菜だらけに。この野菜、すべて農園から持って来るそうですが、別組織にしているようです。これだけ珍しい品種や伝統の大和野菜のことを知らないと栽培も難しいことは容易に想像できます。

そして、籠盛りのすべてのお料理の説明をしていただきました。白桃ジュースやそーめんかぼちゃくらいは覚えてますが。トマトの皿には5種類のトマトが入っておりそのうち2種類はオーブンにかけて濃くしているとか。これお野菜が何種類あったんでしょうか。どれも生命力を引き出され、最高の味となって提供されてました。どれも、全部おいしかったし、こんな経験初めてのことですっかり気に入ってしまいました。ズッキーニは若いうちに収穫して食べているそうで、そのままほっておくとかぼちゃのような実になると実物を見せていただきました。これは、硬くて食べられないそうですが、観賞用にはいいですね。

すべていただいて時間があったのでお店の中をお願いして見せていただきました。というのも、カウンターは入り口を入ってすぐのところにあり、そのまま座るとお店の中を全く見ないことになります。リーフレットに載っていた素敵な店内の写真。この場所見せていただけますか、とリクエスト。奥は、蔵を改造されたそうで素敵な2階だてに変身してました。母屋も2階になっていて、2階には3テーブルあるそうです。

さて、前菜のつぎに運ばれてきたのが、あんかけになった煮物、そのつぎが天ぷらでした。あっというまに全部いただきましたが、中にはむらさきとうがらしのような初めてたべる野菜も数多く、残念ながらそのことだけしか記憶にありません。ノートとれば良かったですね。つぎに自分で焼く大和芋の陶板焼きになります。写真のとろろはすでに調理されているということで、表面をぱりっとさせて中のもちもちとの対比を楽しみました。

ここでご飯になります。黒米ごはんとものすごくおいしかったおつけもの。ごはんの上に乗せていただきました。そして、大和芋を落としているお椀。そして2種類のデザート。フルーツプレートと伝統和菓子のむこだまし。これは、珍しい白いあずきを使った粟のお団子でした。別バラですよ。そして、コーヒー。

この1時間半におよぶ大和野菜のドラマにすっかり魅了されました。元気をいただきました。野菜の持っている力強さを感じました。これを考えて野菜づくりから実行された店主の想像力に敬意を表したいとおもいます。お料理は味とプレゼンテーションで最後の顔でお客さんの前に供されますが、実際はすでに素材を誕生させるところから勝負が始まっているのですね。この実物の野菜で説明していくスタイルは、それを十分実感しました。このお店では、大和牛がもうひとつの柱になってますが、その次は何をもってくるのか。そのこと、とっても楽しみにしてます。

  • 大和伝統野菜の前菜籠盛り
  • 全部トマトの種類
  • 大和伝統野菜の前菜籠盛り

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4位

北新地やまがた屋 (北新地、渡辺橋、大江橋 / ホルモン、焼肉)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    ¥10,000~¥14,999 -

2009/10訪問 2009/10/15

150分にも及んだ焼肉ライブショー。山形店主のゴッドハンドから繰り広げられた神業の焼きと最高級素材。

想像通り、いや想像以上のうまさでした。それよりも、店主山形さんの繰り広げるライブショーをすっかり堪能させてもらいました。こうゆうふうにして焼くと最も旨く食べれるのか。感心しながら神業を凝視。素材ひとつひとつで焼き分けるすごさ。部位によって焼き方を変えるんですよ。すごい。この日店主の前のカウンター席に座れたのは9人。おそらく他のかたがたも十分堪能した150分だったのではないでしょうか。

大阪に行ったら、ある雑誌で見たやまがた屋の焼肉を食べようと決めていました。店主山形さんがにっこり笑って肉を焼いている写真が載っていました。このお店に食いついたのは、”店主が焼いてくれる”という点です。よく言われますよね、このお肉は生でも食べられますから、軽く炙るだけでいいです。そりゃあ分かるよ、食べられるよ。でもさ、どの程度焼くのが一番おいしいのよ。いつも疑問に思っていました。その疑問を解決してくれる人が大阪に居る!

食べログで見たらなんとダントツで全国1位(2009年9月現在)。焼肉フリークから絶対の支持を受けているんですね。絶対に行く!

予約取れるかなと思いながら電話しました。首尾よく予約取れましたが、予約は2人以上でお願いしたいと言われ、はいはいそれでは3人でお願いします。大阪在住のくいしんぼ2人を誘う魂胆です。予約は夜の2回。18時と20時半の2回のみ。18時の予約が取れました。同席してくれる二人からも快諾の返事が。

さて、お店は北新地のビルの4階です。ちいさな看板でやまがた屋と書いてありますが、中はまったく見えません。知らない人は絶対分からないお店です。開演10分前に到着しました。扉を開けると厨房を囲むようにカウンター席のみ。部屋は照明が少し落とされ、食べるところだけ少しばかり明るい照明が。写真が発光するか心配なくらいの明るさ。

店主の山形さんと助手が厨房の中にいます。ここに座るように言われ、3人並んで座りました。カウンターの箸の数を数えると全部で9人来るようです。結局定刻までにあと男女が3組6人入ってきて、この晩の予約客9人が定刻までに揃いました。さあ、始まりです。山形さんが皆の前にすっくと立ってごあいさつ。最初にホルモンと焼肉の部位の説明がありました。業界的区分でその区分にしたがって解体以降の売買がなされるようです。ものすごく明快。分かりやすい説明。

この日注文したのは新コースと呼ばれるフルコースです。内容は、キムチ盛り合わせ、煮、生、揚、焼、野菜、飯、煮込み。もう1つのコースは旧コースと呼んでいて、少し数が少なく、煮、生、揚が入ってません。この日は、新コースと別料金のタンステーキをオーダーしました。

1組に火鉢が2つずつ運ばれてきました。なぜ2つ要るのか、あとで分かることになります。飲み物が来たあと最初に配膳されたのはキムチの盛り合わせ。前菜です。このキムチがうまかったあ。どこで仕入れるんでしょうか。旨みたっぷりで、行列が不得意な辛いだけのキムチではありません。生野のコリアンタウンからかなあ。チャンジャがうまい。鱈の胃袋ですが、コリコリで発酵のうまみ十分。ニラ、ごまの葉など珍種が白菜、ダイコン、きゅうりの間に入って、もうこれだけでも十分満足。いやあ、すごいことになるぞ。

さて、助手に新しい動きがありました。わさびとしょうがを大量にすりおろしてます。それを別々のどんぶりに入れ、醤油などどばどば入れました。肉塊を持ってくると、どんどんさばいていきます。肉塊がどんどん小さくなる。切り端をどんどん下に置いたなべの中に捨ててます。いやあ、もったいない。その捨てたところ、ちょうだい。信じられないほど小さくなった肉塊をスライスして焼肉サイズに切り分け、どんぶりに投入し冷蔵庫へ。

それが終わると店主がまな板を使います。でかいまな板で、肉切りが終わるたびに力を入れて布巾で丁寧にふき取り。その布巾が20枚も重ねておいてありましたが、終わりまでには全部使い切りました。店主が切り分けはじめたのは、タンです。見事な1本。なんでえ、って位どんどん小さく切っていきます。どんどん切り端を捨ててます。捨てるほうが多いんですよ。あとで説明がありましたが、タンの中央に太い血管が走っていて、タンステーキでは血管より上部だけを食べます。上部はタンのあじ、下部は肉のあじ。あの切り捨てたタンはどうするのかなあ。食べたい。

店主がタンの下ごしらえをしている間に助手が準備した、肺の煮込みがきました。炊いてから出汁醤油で煮るそうです。これが、ぷにゅぷにゅでうまい。繊細な味です。もちろん初めて食べます。ビールがうまい。

ここでテーブルに置かれたのは、すだち、れもん、塩。お好みで、ただし、すべての焼きには塩味をつけます、との話があります。いよいよタンから焼き始めました。

網が乗せられます。焼くには4組の4つのコンロのうち最初は2つだけ。すべての面を順番にひっくり返し。焼きが入って火が出そうになると、網をずらして焼けが進まないようにします。このテク、行列が名づけた半けつ焼き。網をくるくる回し、肉をくるくる回し、これがゴッドハンドの真髄!すごいです。ものすごいスピードと集中力。これを2時間半やるのです。ものすごい、エネルギー。とても並みの人には出来ません。

そしてようやく、最高のタンが最高の焼きを入れられて目の前に。たった一切れですよ。これが、言うまでもなく、最高のタン焼き。しっかり味があり、しっかり香ばしく、しっかり歯ごたえがあって、しっかり、溶けます。なんじゃこのタン。ひときれ1000円でも納得します。

助手が、小さいほうのコンロを使って野菜の蒸しを始めました。ふたと煙突を兼ねる陶器の蒸し器。とうもろこし、しいたけ、アスパラの3点でしたが、うまいよ絶対。塩でいただきました。

店主は次の肉塊を取り出し、またまたどんどん小さく切っていきます。どんどんキレッパシを捨てています。俺にくれ~。次なる焼きは、ハツすじ。 心房と心室の間の膜だそうです。網は新品に交換。すべて網は1回で捨ててます。半けつ焼きを駆使。おっと、ここで出ました。2コンロ使い。野菜蒸しのコンロは火が小さくなっていて、焼き過ぎないように網をぐるぐる回し、それでも燃え始めると小さなコンロに避難。なるほど。焼きあがったハツすじは、こりこいした噛み応えでした。すまんすまん、のうまさ。

次は、みのサンド。みのは第一胃で、脂肪をサンドイッチのようにはさんでいるからの命名という説明です。ライブショーですから、肉を切って説明して焼いて配膳して、と全部順番にパフォームしていくんです。

まあ、なによりも焼き方が芸術的、職人的、国宝級。小さなトングと片手は軍手。こまやかな気配りで、網を自在に火鉢にのせて、網の動きで火加減を調節。使う炭は土佐備長炭。このみのサンドは油たっぷりでしたが、しっかり焼いてこりこりにまで焼き尽くしていました。こんなこと素人には絶対にできません。

あごすじ、つらみの下の部分、こりこりで、しっかりかむとうまさがじゅわ~。
肝グレースはすい臓。やわらかいりんぱせつでむぎゅうっとうまい。
タン下は、先ほどの説明で肉のあじ。上のタンの味もうまいが、この下部も脂がうまい。

生、はさしみです。ショーの開始時に助手がどんぶりに入れていた肉がここで登場。
サーロインの下のちぼはわさび醤油で。こってり。
ハツはしょうが醤油でさっぱり。
らむしんはちぼの隣の部位でにんにく醤油漬け。それぞれの味、食感、獣を味わいます。

次の焼きは小腸。長い小腸を適当な長さに切って水洗い。表面の脂落とは包丁の背で。最後は1本ずつふきんに入れ、布巾ごとしぼる。焼きは片方だけで、焦げるほど十分に焼く。それを等分に切って、やっと食べれます。この小腸、いままで食べたことのないうまみの奥行きがありました。脂は腸の内壁ではなく、外壁についている、という説明が。

ここで驚いたことを。小腸を焦げがつくまで焼くんです。焦がさなくても十分その前で止められるのに、意思を持って焦がす。すごい。そんなこと誰も知りません。

やきれん焼きは、表面に醤油ぬりほくほく。さっぱりうまい。

芸術的に二つのコンロ上手に使い分けての火加減調節は一見の価値あります。

次の焼きは、はらみ。焼くのはかたほうだけで、最初に出してきたのが、生を中に折りたたんだ逸品。こんなはらみ、食べたことありません。次が、同じはらみ焼きでも、生を外に折りたたんだ逸品。ごはんくれ~~。

揚げは、うるで球のから揚げ。煮はせんまい、大腸、小腸、など7,8種類のホルモンを煮たもので、ここでごはんと一緒に食べます。お供は、絶品長池昆布からの塩昆布。絶対に手を抜きません。

コースのコンプリートです。山形店主もワインをぐびぐび。この日は女性店員が休みのため、一回のみ。だから、実際は8時半をとうに超えていて、はらはら心配でした。

いやあ、最高の焼きと最高の素材。感謝を申し述べるとともに山形さんと少しお話を。本当に食べるのがお好きなんですね。よく行かれるお店を教えていただきました。焼肉のことはもちろん、モツ煮込みのうまい店など。最後に出てきた昆布の話とか。

ここが全国で食べログ1位も納得のうまさでした。お店に来ることが出来た幸運に感謝するしかありません。焼肉に興味のある方、がんばって貯金して行ってみてください。ここは絶対のおすすめです。

  • 生、3点
  • はらみ、焼きが外
  • タン、焼けたぞ

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5位

たかはし中華そば店 (撫牛子 / ラーメン)

1回

  • 昼の点数: 4.5

    • [ 料理・味 4.5
    • | サービス 3.0
    • | 雰囲気 3.0
    • | CP 3.0
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2012/05訪問 2016/04/25

超濃厚津軽煮干ラーメンのたかはし。昔懐かしいノスタルジックなチョー旨いラーメン。

思い立って青森に来ています。3年ぶりです。

東京のラーメン地図が急速に変化を見せた2011年、2012年。煮干系スープの台頭です。裾野が広がり、トップレベルのお店はたちまちにして行列店。行きたいお店もたくさん出来ました。比較的行きやすいお店には、それでも足を運びましたが西東京地区は皆目手も出ません。そんじゃあ、いっそのこと青森に飛ぶか。青森なら食文化の伝統そのものの煮干ラーメンが食べられます。行列もありません。一夜漬けのレシピでなく、地元に半世紀以上根付いた本物の煮干ラーメンです。

羽田から青森行きの一番機に乗るとちょうど弘前のたかはし中華そば店の開店時間にジャストインタイムやろ、と思って初日は弘前から攻めることにします。1泊2日の急ぎ旅です。定刻に青森空港にランディング。そのままレンタカーで弘前に向います。

いいなあ、田舎は。空港は人里離れて作りますので周辺の田舎度は想像が付きますが、いつまでたってもイナカのままです。こんなだったかなあ。過去の記憶を引っ張り出そうと懸命に引き出しを開けますが、中は空っぽ。すっかり忘れてます。普通に走っていますが、たかはしに着くと30分くらい待つようになりそうです。

でも、弘前ならダイジョウブ。他の都市には申し訳ないことですが、ガイドブックを見ていても弘前には県内の他の都市にはない文化の香りを感じます。行きたいお店もたくさんあります。カフェ、もいい。那須にある人気のカフェよりもある意味惹きつけるものがあります。そう感じます。たかはしの前で待つ愚はやめて、先に弘前タウンのほうに向いました。

そこで2軒訪問。文化があるなあ。あるけど、点在しているんですね。気分もハイになり、こちらに周ってきました。お店があるのは弘前郊外の撫牛子地区です。これで、ないじょうし、と読みます。お店には広い駐車場があったと記憶してますので開店時間を過ぎても気持ちはあせりません。いくら土曜日でも、です。

お店に着くと、あれえ、まさかの工事中?店はシートで覆われています。でも駐車場は9割がた埋まっていて、店の入口を見ると“営業中”。よかったばい。

入店。おおお、これよ。煮干のにおいが店内に充満しています。食券を買います。券売機の隣にはオネエサンがスタンバイしていて、食券を買うとすぐに厨房にオーダーを入れるのです。えっと、やっぱり中華そば(700円)でしょう。食券を渡してから誘導されてカウンター席に座ります。すでにカウンターには冷たいお水が待っていて、流れるようにことは進みます。

お店にはオネエサンとオバチャンが7,8人いましたね。なんでもぱぱっとすぐやります。お客さんが帰ったあとの後片付けも早い早い。こうやって回転を上げていくんですね。厨房で麺あげしているのは2人。入店時お客さんの入りは6分くらいでしたが、どんどん後客が入って9分埋まりました。厨房もフル回転でどんどんできあがりを出していきます。

およそ3分で配膳。これですよ。このグレー色のスープ。煮干の匂いも元気に立ち上がってきています。どれどれ。スープをいただきましょう。煮干のうまさが全開ですね。実にうまい。煮干粉も使っています。こういう土着の味に限りない愛着を感じます。動物系は出しの下支えだけで、ほとんど感じません。煮干のえぐみや酸味や本命の旨みが一体となったスープです。このスープが好きなら本当の煮干好きでしょう。煮干は人を選びます。

どんだけうまい、って思うほどうまい。麺にいかないでスープばかりごくごくやってます。好みで言えば、秋田の煮干ラーメンのスープよりこっちが好きですね。塩分は高めですからスープは半分だけ飲む、と最初から決めてます。ご飯にぶっかけて猫ご飯で喰いて~。

お待たせしました、と麺にひとこと断ります。麺は自家製でこのスープに合わせてます。まさにそんな感じの中太のちぢれ。食感がふわふわしていておもしろい。このスープにぴったりですね。ふわふわでもさもさの食感、珍しいです。このお店以外では食べたことがない麺です。スープもこのお店以外では飲んだことがないスープですので、これは当然でしょう。

茹では硬めで具合がいいです。うまいです。麺量が多いですね。160,170gくらいありそうです。わっさわっさいただきます。この時間が永遠に続いても文句いいませんよ、ってくらい至福を感じています。このラーメンを食べたら、東京の濃厚煮干ラーメンを食べたくなくなります。すっかりほれ込みます。真似しようと思っても出来ない味でしょう。ただ、万人向けでないことも確かですから、このようなラーメンを東京で出しても商売的にはきびしいとは思います。本当に煮干好きの人にだけ食べてほしいラーメンですね。

大振りのチャーシュー、色が濃いけどそんなに味は濃くないめんま。トッピングはラーメンに合ってますね。ことさらコメントも不要なスープ主役のラーメンです。この1杯だけでも飛行機で青森に来る価値があると思います。思いました。まあ嗜好性の強いラーメンですので、食べなれない方には無理には勧められませんが、今食べている煮干ラーメンに大満足していないなら、ここは絶対のお勧めです。


(2009年6月 初稿)

常寿司で特選太巻き寿司を食べておなかが一杯。とは言うものの、太巻きの1本の半分しか食べてないので、ここはラーメンサイトで青森県のナンバーワンであるたかはし中華そば店に行くしかないだろうな。常寿司からだと、わずか3.9km。8分の行程ですから。たかはしへの到着が11時55分。駐車場が大きく、それでも7分通り埋まっていました。車から出ても煮干しの匂いは全くありません。当たり前だろ。

ラーメンのジャンルで煮干し系というのがあって、結構各地で人気を博してますよ。トンコツも好き、鶏がらも好きという雑食人間の成せるわざで、東京にも大阪にも人気店があり、大阪では店名に煮干しの名前まで冠している有名店もあります。青森ラーメンは、もともと煮干し系が発祥ですから滞在中は煮干しラーメンのオンパレードで何杯食べれるか、すごく楽しみにしてました。東京、大阪の煮干しラーメン人気店の祖先みたいなものですからね。

旅のルートを決めて、初日には弘前スタートとなりましたので、煮干しラーメンの最初のお店が、現在ラーメンサイトで青森のランキング断然1位であるたかはし中華そば店になり、これは神様の思し召しだわ。

ラーメンサイトのたかはしのレビューを読むと、駐車場でもう煮干しの匂いに見舞われる、とか、店内は煮干しの匂いが充満して、とかありますが、ホントにそうかなって???です。ちょっと匂ってるくらいだろ、とはなから疑ってますよ。話としては面白いが、誇張しすぎじゃないのって。あるいは、先入観でレビューしているんじゃないかって。

それから必ず言うことば。煮干し嫌いの人にはきついかな、って。これだって、ほんまかいな、と思ってます。嫌いな人のことを担ぎ出したら、なんだってそう言えるじゃん、表現力が乏しいなあ、と。このキムチ、とってもおいしいけどキムチ嫌いの人にはきついかな。ほっといてくれ!

そんじゃあ、この行列が真実を伝えてやろうか、ってことに。

お店に入るとすぐ券売機があり、先客が食券を買っているところでありました。3人客でごそごそ相談しながら購入。はやくどけっつうの、もう。やっとどいたので、券売機のメニューが見えるようになりました。中華そば、チャーシューメン、ざる中華にライスがあるだけ。ここはデフォルトの中華そば(700円)でいくかな。紙の食券を手にして店内に入ると、すぐの左手に冷水器があって横に常盤貴子(24歳)が立っていて食券を回収しています。最近テレビに出てますか、って聞こうと思い、バチンと視線をからませてから食券を渡し、だまって、カウンターの空席である椅子番号7番に着席しました。自分のあとにもお客さんが接続しており、常盤貴子も忙しいので、会話は後にしましょう。

お店は、カウンター、テーブル、小上がりがあって結構な人数が入れる大きめの器です。なにせ、青森県ナンバーワンの人気店なんですから。駐車場のスケールからも、この位の座席数が必要なのでしょう。

カウンター席は等辺に近いL字になっていて、そのLの角にマンガ本ラックがあり、入店してくる男の90%はマンガないし新聞をとってから着席します。マンガを見てラーメンを待つ、のは分かりますが、店内を見渡すとマンガを見つつラーメンをすすっている姿が多く、そんなにおもしろいマンガが今日本にあったのかと。食べているときに新聞を離さない客も2人いて、これが弘前流なのかと得心したわけです。

お客の入店が途切れたときに、常盤貴子が水を配ってくれました。またバチンと視線をからませてから、次のお客さんへと送りだします。なぜかって?ちょっと新聞を熱心に見ながらラーメンをすすっている男がいましたので、なにか、おもしろい記事でもありますかあ、と聞こうとした瞬間の出来事で、常盤貴子の登場と新聞への質問が同時勃発になってしまい。やむなく彼女の仕事優先を選んだわけです。やっぱり偉いわ、自分って。

そう言えば、店内の煮干しの匂いですが、くんくんくん、とわんこになれば気が付く程度。普通に居たのでは、普通の空気でした。そんなめちゃめちゃ煮干し工場じゃあないですよ。

カウンターの置き台が高いので、調理のようすはおもいきし立ってそんで膝を曲げるくらいじゃないと見えません。どうやら、男一人で注文に応じ作製中の様子ですが。どんなラーメンが登場してくるのかなあ、楽しみに待つことにします。それまでは、デジカメをいじって、常寿司の太巻きの写真を再生してみたりして、時間をつぶします。

10分位経ったでしょうか。オーダーの中華そばが常盤貴子の手によって運ばれてきました。何か言われましたが、はい、とだけ答え、今はこの地球上にラーメンとオレだけ。

ほほう、これはなるほどすごいラーメンですね。鼻を思わず近づけると、間違いなく強烈な煮干しの匂いがしますが、攻撃的発散をしているわけでもありません。スープは灰黄土色というか黄泥色というか迫力の色をしていて、スープの量はたっぷり。いくぞ~。

れんげでスープをすすってみると、これがまあ、完璧にうまい。いや~、これが煮干し日本一の味ですか。味は濃厚ですね。スープ自体はさらっとしていて、いわゆるしゃば系ですが、味の濃さと言うか奥行きと言うか、煮干しが複雑なあじを演出してます。えぐみも感じますが、これ、えぐみがあった方がうまいっす。れんげ1杯で足りなくて、数杯連続していただきました。あとを引く味です。もっと飲みたい、もっと飲みたいって、きりがありません。こんなに煮干しスープがおいしいとは思ってもみませんでした。これが、豚さんや鶏さんの骨に負けるなんて信じられません。コストや手間を考えると動物系の方がラクなのかなあ。定年後ラーメン屋をやるなら、濃厚煮干し系にしよう、って単純に結論づけました。

乗っていたネギのみじん切りがざくぎりになっていて、これがまたチョーうまいんだなあ。ねぎの味が辛いくらいにしっかり残り、このネギくささと煮干しのコラボレーションは絶妙です。ネギと一緒にスープをすすると、まあ桃源郷に行って来たような錯覚にみまわれますよ。塩加減もちょうどいいです。

めんまがまたうまいな。こりっこりして、しっかりしたしなちくの食感を残し、味付けもうまい。これが自家製のいいところですね。不揃いな大きさの枕木めんま。塩漬けからつくったのかな。チャーシューは、モモ肉ですが、しっかり味が付いていて、これは好みではなかった唯一のものです。ちょっとしょっぱすぎ。こんなにちゃんと味付けする必要があるか、というテーマの国際会議があるなら、そんな必要はない、に一票投じたいと思いました。

麺がまた秀逸です。中太のちじれ麺で、茹でのたくみさが効いていますね。旭川ラーメンの麺に似ていて、もっちり系で結構食べた感じがする麺でした。200g以上はありそうです。スープがシャバ系のあっさりタイプなのですが、煮干しのだしの粒子がある大きさを持っているようす。したがってスープは水分と細かな粒子の混合状態になっており、れんげのすくいによっては、スープの色が変わります。これは、すごいぞ。乳化のように均一な分子レベルの混合ではなく、煮干しの粒がスープの中で浮遊している感じでもあります。そのスープと麺がいい相性で、このラーメンには、かなりの吸引力がありました。

総合的には、どこか懐かしい感じのラーメンで、煮干し強烈ラーメンという感じではないです。子供も何人も家族と一緒にいましたが、子供が大好きな味ではないでしょうか。このお店に関しては、レビューとかコメントにあまりに先入観が強くて類型的な感想だけが先行している気味がありますが、ふつうにものすごく旨い、ふつうにものすごくだしのきいたラーメンであるという感じでありました。

普通だけに毎日食べたいし、おもしろいマンガがあるなら、マンガとラーメンを同時進行させても何ら違和感のない、大げさにありがたがることもなく、日常のうまいラーメンの位置づけでいいのではないかと思います。強気の値段設定、という感想もサイトには散見されますが、本物の材料を必要なだけきっちり使えば、自ずから他店とは一線を画す値段になるものと思います。むしろ、CPはいい、と判断します。

その意味で今回★5として格付けしたいと思いました。特殊、特別だからではなく、なんでもない普通にだしを利かせた、普通に麺にこだわったラーメンという見方をすれば、それは実はありそうでも探せば全くないに等しい貴重なラーメンであることに気づくはずです。だから、ノット・リプレイスアブルなのであると思いました。この普通においしい煮干しラーメンにとって代われるラーメンは、ありそうでない、と高く評価します。


  • 中華そば
  • (説明なし)
  • (説明なし)

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6位

中華蕎麦 とみ田 (松戸 / ラーメン、つけ麺)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 4.5 ]
  • 使った金額(1人)
    - ~¥999

2010/12訪問 2010/12/31

2時間の行列の先で待っていたつけ麺。山岸神様の世紀の大発明を進化させたのは、笑顔の孫弟子だった。

(2010年12月 再訪)
今年最後のとみ田です。

この日は、久しぶりにつくばにある喜乃壷に行って来ました。最近何度か昼飯時にお店の前を通ったのですが、車が1,2台置けそうな感じでそろそろ落ち着いてきたのかな、的な空気感が漂っていまして。

いやあ、うまかった。煮干、塩、細めんでいきましたけど、死ぬほどうまい。大感激してお店を出ました。ここからの自分の行動が理解できません。なんと、松戸の中華蕎麦とみ田に向かって車を走らせます。喜乃壷の麺量はたっぷりあって、しかもスープの最後の1滴までいただき、満腹の満腹なのに、どうして?とみ田?。。。。。。食べたいから。

行き先が松戸駅であることを菜美に伝えます。あかん、終了時間に間に合わない。そこでトライアンドエラー。帰りも便利なように、車で我孫子駅まで行き、駅前の駐車場に車を置いて電車で松戸に行けば余裕であることが分かりました。喜乃壷からとみ田か。まあ、一燈、トニー、トミーには負けるけど、自分の年齢ではええほうやろ。まだ現役やさかい。

とみ田に着いたのが余裕の14時35分。ちょっと早すぎるわ。外待ちを数えてみたら23人か。この日はめっちゃ寒くてそれが幸いしたな。15分後には、長椅子に昇格。それから10分後には、座布団付き椅子に昇格、とスピード出世で店内に入ったのが到着して38分。ええやんか。この日は、ちょっと少なめで、つけそば+半熟玉子(900円)で。300gも要らないので、麺少なめにしてもらい、代わりにチャーシューを1枚プラスしてもらいました。

店内へ。調理場のだぼシャツ姿のトミーにご挨拶。案内されたのは、前回に引き続き元テーブルがあったところで、道をみるサイド。またトミーの調理が見えんがな。

およそ5分で配膳。これや。多分、今年最後のとみ田やね。星の入った全粒粉の麺はエッジが立ちまくり、眉目秀麗や。2本つまんで、いただきます。まあ、うみゃあことうみゃあこと。これ、蕎麦つゆでもいけますね。久しぶりですが、また、うまくなったようです。どうしてこんな麺が作れるのか?不思議です。他の店はどうしてまずく作れるのか。

硬い食感を残し、しめ、水切りともにパーフェクト。いつもながら、天才の仕事に凄さを感じます。少し麺を楽しんだあと、いよいよつけ汁。れんげですくい、いただきます。なんじゃいこれは、って思うテンションの高いうまみ。またまたこいつも進化しちょる。豚骨の濃度が一段と上がったンちゃう?魚節のインパクトも、世の中これだけ豚骨魚介が蔓延して猫も杓子もメニューにしてる時代に、全く次元の違う豚骨魚介のインパクトを追求している巨人。うまいまずいのチンケなレベルじゃないね。うますぎる。

麺を浸して食べると、小麦も魚介も一気に一段高みの風味が引き出されてきましたね。まったく、凄みまででてきたつけそばを、一気呵成にいただきました。チャーシュー、半熟玉子、なんのコメントも出来ないパーフェクトな仕上がりでした。割りスープもこれだけで400円取れるね。ありがとう、トミー。


(2010年9月再訪)
通算4回目のとみ田です。ようやく時間のやり繰りがついて、とみ田に行くことが出来ました。

なまじ、つくばの活龍に行ってつけ麺を食べたことから、麺休前の総決算、つけ麺の口直しにとみ田に行かないわけにはいかなくなっちゃいました。また、折りしも浜松町の大つけ博でとみ田の出番が近づいていて、つけ博出店期間中は当然臨時休業ですから。もうこの日しかない、という日に何時間でも行列待ち覚悟で行ってきました。食べられればいい。

事情から車で行かざるを得ないことになりまして、それじゃあヨーカドーの立駐がいいでしょう。とみ田の斜め後ろ30mにあって、3000円のお買い物で2時間まで無料。ビールをまとめて買えばいいので、助かります。首尾よく立駐に置けて、すっと行列の最後尾に並びます。

ざっと待ちは20人。この程度なら1時間位経てば、あの神聖なとみ田の店内に入れるはずです。待ちはほとんどが学生風、ときどきラヲタさん風。ら~のことを1時間しゃべりっぱなしのラヲタさん風には、こちらにはもうすっかり消え去った情熱と言うものを感じます。全く周囲が見えなくなるほどのあっぱっぱ~のしゃべりが、うらやましい。途中で若い店員から食券を買うようコールがあり。かねてから決めていた、特製つけそば(950円)の麺少な目、おまけが味玉でお願いしました。

さあ、徐々に列が短くなって、いよいよ入店です。列にジョインしてから55分後でした。いつもの店員Aが店内の先導役で、あれええ、そっち?テーブル席を取り除いて作った窓側のカウンター席の最左翼へ。つまり、製麺所の隣。やむなく座ったが、そうそう、店主にご挨拶やと思って振り向いたら、にこっと笑顔でこっちを向いた富田店長がいたわ。入店のときこちらに挨拶しようと待ち受けていたのかもね。相変わらずの気配りの店主に心がなごみます。

またしばらく来れないので、店主の芸術的な所作をこの瞳にしっかり焼き付けようと思っていたのにいい。ま、仕方ないね。それから4分ほどで配膳となりました。さ、ここからは、目の前のつけそばと自分だけがこの世に存在する時間の始まり。

すごいオーラやね。どうよ、この麺とつけ汁の存在感は。麺は角断面の太麺でつやつやしていて、凝視すると星が入っているのが見えます。これが風味をよくしているんですね。全粒粉を使いこなしてつけ麺の最高峰に挑戦する意欲。それ以前も日本一、麺を改良しても日本一。麺をつかんでそのまま食べてみます。このこしが強靭でそのうえでもっちりとした食感を出す。ここがすごい。時間前には弟子がふたりで粉だらけになって製麺しているのを目撃しますが、そこからすでに勝負が始まっていて。

仕上げは店主による茹であげと〆。どれかの段階かがだめなら当然このクオリティは生まれない。真剣勝負そのものを毎日連続して継続し、営業時間も緊張の糸を張り詰めたまま。富田店主の哲学そのものの気がします。

大つけ博で、オーバーボイルした麺のレビがありましたが、そんなあふぉなことはとみ田の名前にかけて絶対しない、できないから、店主以下全員でイベントに参加する。すべてやることに筋が通っていて、そんじょのぽっと出とは格段の差を感じます。

麺のクオリティを確認して、安心したところでつけ汁。箸でかき回しましたが、このつけ汁の粘度は他のとみ田ライクのお店のつけ汁と全然違いますね。全くの別物。箸でかき混ぜてふと表面を見ると、もう既に表面に膜が張っています。すかさずに麺をつかんで、さっと汁をつけて、わっせわっせ。うま~~。

濃厚な味に強靭な麺が受けて立つ。魚が先行して、ここまでやるかの濃厚な豚鶏のコク味がフォローしていく唯一無二のドロドロ汁のうまさよ。山岸翁の世紀の大発明である酸味を入れる、手法を極限まで追求してこういうふうに酸味を使うというお手本のような汁。う~ん、記憶にあるとみ田のつけ麺よりずっとうまい。汁はもちろん熱々。その熱で麺が息をふきかえすのがまた興味深い。ゆずの爽やかさ。ゆずの風が味蕾と鼻腔をくすぐる。まったくこの店だけが、雲の上に一軒あるような実力の違いを感じました。

バラ巻きチャーシューと味玉のうまさ。もう教えたくない、ってほどうまい。チャーシューをどのような味の設計にするのか。この汁とこの麺の世界で存在価値のあるチャーシューはどうあるべきか。そのような疑問に対して、このチャーシュー以外の答えを思いつきません。味玉のうまさよ。熱々です。おまけのハーフ味玉とは全く別物。せめて味玉はトッピングしたほうがいいですよ。そんじょの味玉と同じ値段とは思えない感激が待ってます。

う~んう~んうなりながら、一気にいただきました。麺が少なかった?それも事実ですが、その分大切に気持ちを込めて、一箸ごとに愛情をもっていただきました。いとおしみながら、いただきました。麺少なめ、これでいい。あっけなく自分たちだけの世界は終焉を向かえ、あっさり割りスープで一幕のドラマが終わりました。

ったく、富田店主って男は。席を立って振り向くとまた店主の笑顔がありました。ごちそうさまでした、断然うまいなあ。声を掛けて店から出て行きました。


(2009年12月再訪)

開店時間定刻の11時になりました。店内から出てきた店員さんから、大変お待たせいたしました。さあどうぞ、の声が掛かります。

2時間座っていた椅子から1つ背伸びをして立ち上がり、店内に向かいます。待ち行列の先頭でしたから、当然入場の列の先頭に立って、店内へ行進を開始します。さあ、ここから特別な場所、特別な空間に入って行きます。今から、壮大なギャラクシーオペラの第二幕が始まります。興奮を押させ切れません。

厨房にはすでに調理を開始している富田店主トミーがいてちょうどおたまでスープをどんぶりに移しているところです。それでも、きっちりこちらを見て笑みの交換を。できた天才です。一番奥のカウンター席に座り、長い時間待っていて乾いた喉に冷たいお水を供給してあげます。注文はすでに券売機で食券を渡した段階で言ってありますので、それをもとに調理が始まっているわけです。厨房にはトミーとベテランの補佐のふたり。フロアは愛嬌のあるひげが出てきて面倒を見てくれます。

この日は、今年最後の行列に並ぼうと決めてました。だんだん日程がなくなってくるし、寒さも厳しくなるんで2時間の行列ができるのはこの日が最後だな、と。ところが起きてみると、ものすごく寒い日で風も冷たく、試練という言葉がうかんだくらいです。いっぱい重ね着をしてお店に到着したのが09時丁度。一番端の椅子に腰掛けて読書開始。2番手は15分後に接続してきました。

店内ではもうスケジュール通りの麺製作。フードをかぶった2人の若手が製麺機と格闘しながら桜ROZEOのお客さんのために奮闘してます。やがて予定の分量がすべて完成され、麺箱に詰められた自家製麺が軽トラックいっぱいになって出発していきました。

10時半。スケジュール通り、食券買ってくださいのコールがかかりました。店内に入ってもう決めていた特製つけそば(950円)の食券を購入。券売機の横に立っている店員さんに渡します。

麺量を250gにしてください。(デフォルトで300gあり、減量中なので少し少なめをお願いしました。)

麺少な目でだいたい250gぐらいになりますが、それでいいですか。

いいです。そうしてください。

そのときは、トッピングののりかめんまが増量になりますが。

それでは、めんまでお願いします。

そんなやりとりがあったので、店内に入ればもう席に座ってつけそばの出来上がりをひたすら待っているだけです。前回も同じ席。席の目の前には、山岸神様が天才トミーのご子息をひざの上にのせている写真が飾られています。写真のなかで、神様も天才ジュニアも心から笑っているいいショットです。

お店の中にはクリスマスソングが流れてますね。うきうきの2乗になりました。

お待たせいたしました。背中から声が聞こえたので、あわてて体をずらしてこの日の主役をカウンターの上に置いてもらいました。

これだあ。やっと食べれる2009年年末のつけそば。8ヶ月ぶりになります。明らかに違うのは麺とめんま。これ増量の分です、と別皿に入っためんまが枕木から一般形に変わってました。麺は聞いていた通りの全粒粉を使った自家製麺で色がちがいますし、反射する光も違いますし、全粒ですから星もはいってます。でも見るからにうまそう。最近うまい麺を立て続けに食べて、うまいうまいと言ってますが、更に上を行くような風貌にまた一段とテンションがあがります。

麺の上のは分厚いバラ巻きチャーシューを乗せ、これも食いつきたくなるルックスです。一方つけ汁のほうは、見るからに粘度の高そうな汁の上に、のり、刻みネギ、なるとが乗ってます。味玉とめんまは沈んでました。

2時間並ぶだけでこれを食べることができる仕合せ。トミーが心をこめて作ってくれた一杯。

麺を2,3本つかんで試食してみましたが、こんな麺は初めてです。全粒粉でどうしてこんなコシのある麺が作れるのか。硬いくらいのコシでありながら、口の中で反発する弾力も兼ね備えている。そして、全粒にしたことで、麺の風味が強烈に伝わってきます。穀物が太陽から受けたちょっと枯れ草のような匂いがします。すごいなあ。今まで食べてきた全粒粉のラーメンは、風味を第一義にしているのだから食感はしょうがないな、と思っていましたが、天才にかかると、食感も風味もどちらも非の打ち所がない麺に仕上げてしまうのですね。

その麺をつけ汁に漬けてみると、麺が肩の力が抜けたようにすっと弾力が増して、歯の噛み応えもさっと変わっていくのが分かります。こっちのほうが麺のうまみをより強く感じます。温度なのかなあ。ここまで変わるとは思っていませんでしたので、おどろきました。そして、変わったことで麺の魅力がぐんと増します。この変化を読んで麺を作っているんでしょう。逆算をして製麺の諸元を決める。トミーは絶対そうしているはずです。出来成りじゃあない。計算して作る。

つけ汁のこの味はどうだ、と思うくらいもう完成された特濃トンコツ魚介です。この日も食べていてあまりのうまさに鳥肌が立ちました。バランスがどうだとかそんなレベルのつけ汁じゃあないですね。まさにゴッドハンドから創造された芸術品。この才能をラーメンの世界で生かすのがもったいない。イタリアンとかフレンチならもっと幅広く評価する機関やシステムがあるし、世界のグルメ富豪が自家用ジェット機で食べに来る料理も脱ラーメンとなれば、可能なんじゃないか。そんな才能の片鱗が見えるつけ麺です。びっくりしました。

計算と感性と努力、だと思いますが、ちょっとトミーは抜きに出ているどころか、断然他とは次元を超えた料理人だと思います。それが、チャーシューや味玉にもちゃんと気を抜かずに完成品の中のパーツとしてどうなんだ、取り出しての単体パーツとしてはどうなんだ。料理の全体を俯瞰視野でサーベイできるんだと思います。ご本人は、他の料理人と同じことをしていると思っているんでしょうが、実は全然違う世界で料理しているんです。

一杯のつけそばを食べながら、いろいろ考えていました。もしあなたが今年未だとみ田のつけそばを食べていないなら、どんな苦労をしても松戸に食べに行くべきだと思います。ここのつけそばは、いままでの自分の過去のつけ麺の概念が全部こわれて新しく生まれ変わる、と断言いたします。


(2009年4月初稿)
http://u.tabelog.com/000088607/r/rvwdtl/950962/

  • つけそば+半熟玉子
  • (説明なし)
  • 2010年9月の特製つけそば

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7位

幸楽 (第一通り、新浜松、遠州病院 / とんかつ、コロッケ)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥2,000~¥2,999

2009/10訪問 2009/10/30

最高のとんかつを追求し、最高の素材を探し当てた伝説のとんかつ料理人。その脂の旨さはまた伝説を生む。

急遽大阪に再入国しなければならない状況だと連絡が入りました。(今帰って来たばかりだろ。1週間くらい代わりの人間出せばいいだろ、と思いましたが。)大丈夫ですよ。

そんじゃあ、また取材エンジョイしようか、って大人の対応をして。行く日は決まりましたが、千葉への永久帰国日が決まらないのでやっぱり新幹線移動。となると、前回同様途中下車の取材ができる。名古屋でNew Delhiに行ってビリヤ二を食べる、のがベストなんですけど10月のビリヤ二をつくる日は終わってしまったようです。

そこで、新幹線の停車駅から行けるBMしたお店をピックアップし、出した結論は浜松駅下車でとんかつとうなぎを食べる。移動日の制約から日曜営業の昼営業が前提条件でしたが、どちらもクリアしてまずはとんかつの幸楽に行くことに相成ったわけです。

雑誌が一度取り上げると、それを見た別の雑誌の雑誌記者がネタに使うので、いつまでも何年も取材が続き。それを目にした食べログのレビュアーがお店を訪問してレビューをUPし、それを見た者がまた訪問してレビュー。その繰り返しで、結局店主が最高品質の豚との出会って、その素材入手のくだりを含め、お店に関するデーターは一番最初に取材した記者が書いたことが、そのまま残り。それを孫引きしてあたかも自分が聞いてきたことのようにUPされ。

ということが想像されるので、先行レビューは信頼できる人のものだけを斜め読みしてBMを決めてます。

お店に着いたのが開店20分後。お店は新幹線の浜松駅から歩いて10分ほど。大通りから一筋入った路地にありました。店舗はすっかり時間の波で洗われ、ちょっとくたびれた外観を見せてます。ごく普通のどこにでもあるとんかつ屋の風情を見て、なんだかほっとした気持ちになりました。

重たいキャリーバッグをゴロゴロ駅からひきずってきました。ただ歩きだけですから簡単なものです。お店の入り口の戸を開けて入店しました。さあどんな展開になるのか、わくわくです。

せま。せまいです。カウンター席が奥に伸びて8席くらい。左が厨房ですが、古い作りなのでスペースが生かされてなく、ものがごてごて置かれている感じ。調理用のコンロはふたつで、大きなフライパンと中華なべが火口に乗ってます。その左に、今はもうほとんど見かけなくなった鋳鉄製のガスコンロがあり、大きな鍋が乗ってました。これだけの厨房で、今風と違って使いにくそうです。

先客は2名。食事中でした。厨房には店主と奥様が立たれ、ご主人は元気そうに見えます。ご高齢との記事がありましたが、体躯がりっぱなので年齢に見えません。奥様は短髪できりっとしていて、てきぱきと仕事をされてました。

どうぞ奥のほうへ。ゆっくりしてください、とご主人から声がかかりました。大きな荷物を持っていたので、旅は大変でしょう、というニュアンスの心遣いだったようです。キャリーバッグは一番奥にぶっこみ、調理が見たくて席は真ん中辺に座ります。カウンターに置いてあるメニューに目を通します。UPされたメニューのチラ見はしてますが、内容までは見てません。

とんかつだけかと思っていましたが、いろいろあるんですね。そっと隣を見たら、ああ、とんかつじゃあなさそうです。エビフライ、カニコロッケ、串カツ、トリカラ。どれも食べたい。カツはロースとヒレで松竹梅のランクが。松だけヒレが100円高く、後はロースもヒレも同じ値段。

すみません、ロースの松(2400円)お願いします。

ご主人は、カウンター席の真ん前にある大きなまな板に豚のヒレを1本置いて、ぺティナイフを使って細かな筋取りをしていました。ぺティナイフではなくて、もともと、もう少し長かった包丁が研ぎこんでいるうちに、ぺティとしてちょうどいい大きさになったような、使い込んでいるナイフです。ず~っと丹念に筋を取ってます。職人の面目躍如。

行列の注文を受け、厨房の中で動きが変わりました。奥様は冷蔵庫から豆腐をとりだして、赤だしの準備開始。鋳鉄製のガス台に乗っている鍋は、赤だし用だったんですね。豆腐の1丁を4等分し、こまかくサイコロ状に切って鍋に投入。豆腐以外の材料はすべて準備が整っているようです。

ご主人が冷蔵庫からロース肉の大きなかたまりを取り出しました。相当大きいです。肉のセリで見るような枝肉からロースの部分だけを切り出したような大きさ。豚自体とっても大きなものなんですね。そこから1枚切り出すわけですが、この1枚が大きさも厚さもたっぷり取って、否が応でもテンションがあがります。行列のために切り出されたロース肉に下味をつけ、小麦粉、玉子液、パン粉をつけて中華なべに入っている油に投入しました。さあ、いよいよです。その間、盛り合わせ皿にあらかじめ乗っていた野菜の隣にサラダを添えてとんかつが乗れば完成。揚げる油の温度を調整しながらじっと揚がるのを待ちます。6分、7分、8分と相当長い時間をとりじっくりと揚げていく職人が一番気を遣う時間です。9分を過ぎたところで箸でつまみ上げてまな板の上に置き、さくさくって包丁で切って皿に乗せて、さっと行列の目の前に差し出されました。

おまちどうさまでした。

これかあ。ご主人が捜し求めて到達した技術によって完成された最高峰に君臨するとんかつ、です。大きいし厚い。こちらも、じっくり味わいましょう。

ご主人に一声掛け、PORTERの小さいバッグからデジカメを取り出して記念撮影。とんかつですから、中央部の一切れを回して火の通り具合を撮影します。思ったよりしっかりと火が入っているのが分かります。

もう待てません。一切れつまみ、そのままいただきます。ううう。しっかりした味が広がるすばらしいとんかつです。じわああっと肉のうまみが広がります。今まで経験したことがない肉質のとんかつですね。実にうまい。今まで自分史で最高のとんかつと思っていたのが柏の塩梅と茂原の豚食健美優膳のとんかつですが、どちらも同じ系統です。やわらかくて、食感が豚肉とは思えない逸品です。そのとんかつとは系統が全然違う。

肉の繊維を感じ、決して硬くはないのですが、繊維の間にうまさが詰まっているのではないかと錯覚させる肉のコクを感じます。噛みしめることを要求する肉という感じでしょうか。飲み込みたくない。噛むごとに繊維から放出されるうまみ成分を感じ、それが噛み応えがある肉だからこそ噛み続けたくなるといううまさスパイラル。これは、やっぱり来てよかったな。

肉のうまさもさることながら、脂が実にうまい。この脂のうまさはどこのよりもうまい。自分史ナンバーワン。すーっと溶けてうまさの余韻を残します。

ソースを入れているのが100均にあるようなプラボトル。ソースを掛けて食べるととんかつの味にめりはりがついて、これはソースと一緒がいい。岩塩も置いてあったので試しましたが、やっぱりソースがダントツにいいな。素よりもソースがあったほうがいい。

ごはんは炊き立てで小盛りです。奥様から、遠慮なくお代わりしてくれと言われました。赤だしには豆腐のほか、小粒のなめこが入っていました。

なにしろでかい、厚いとんかつで、ずっと噛みたいとんかつですからそう簡単にはなくなりません。ご主人から声がかかりました。

食べ切れなかったら、どうぞお持ちになってください。冷えてもおいしいですよ。

いやあ、本当にとってもおいしいです。噛み続けると旨さがどんどん出てくるようで、ゆっくりいただきます。ごはんのおかわりをしなくても、このとんかつはここで全部いただきますから。ありがとうございます。

時間をかけ、時間を楽しみながら全部いただきました。気がつくと満席になっています。

どうもごちそうさまでした、とご主人にお礼を申し述べて退場します。出口で奥様に精算をして、奥様にもお礼を。

後継のかた、決まりましたか。

いえいえ、まだなんですよ。

ご主人と奥様の声に送られて、奇跡の桃源郷から下界に出て行きました。

  • 黄金伝説
  • 黄金伝説
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8位

茶寮 宝泉 (松ケ崎、茶山 / 甘味処、和菓子)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 4.5
    • | 雰囲気 5.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥1,000~¥1,999

2009/09訪問 2009/10/02

日本庭園を見ながら静謐、上質な京都時間をゆっくりと堪能できる日本座敷。そこでいただく本物の和菓子。

京都、この音の響きは日本語の中で特別な郷愁を感じる。それは、なぜ?子供のころから、いにしえに花開いた雅やかな京都文化のことを刷り込まれているのではないかと思う。百人一首の絵札に描かれた十二単が、雄弁にみやびな世界を事実としてわれわれの目の前に現れる。だから、京都。そんな、京都。

そろそろ千葉に引き上げる時間が迫ってきていますので、京都遠征もこれが最後になるかもしれません。それがあって、この日は京都らしいお店で京都らしい食べ物をいただくことにしました。となれば、以前から行きたかったここ、茶寮宝泉をおいて他にありません。

場所は、下鴨神社の北側にあたりますので、茶山駅の近くにあるお店にまず行ってからその後に宝泉に行けば効率的に回れます。茶山駅のお店からは歩いて2kmぐらいでしょうか。例によって、茶山で開店と同時に入ったお店でお昼を食べ、うまかったあ、と背伸びをしてから出発。コンパスをたよりに宝泉を目指してちょうど北西の方向に進路を取ります。これを南西の方向に行けば下鴨神社に行くはずですから、間違えないように歩いていけば、そんなには変なところに行くはずがありません。

距離的にこの辺かなあと目処を付けて左折した所に福助というりっぱなお料理屋さんがあり、裏に当たる勝手口に板前さんがいましたので、道を聞きました。

もう一本先の道を曲がった角にありますよ。

親切に教えていただきます。ホテルにもどって福助で検索すると会席料理のお店であることが分かりました。言われた通りに進むと、家の周りには情緒ある塀を回したお屋敷が何軒かあって、それぞれ正面玄関を探して表札を見ると、普通の苗字の表札がかかっていて、こんなお屋敷に住んでいる人もいるんだと驚いてしまいます。この黄土色の塀に囲まれた家が宝泉じゃなければ、もう候補の家はない、と思って入り口を探してぐるっと半周すると、そこが宝泉。やれやれで玄関に進みました。

さすがコノくらいのお屋敷になるとアプローチまで違います。品があります。手入れされていることが実感できます。玄関に到着し、格子になった戸を引きました。

そこは、エントランスの空間になっていて、左手が和菓子を販売する店舗機能になっているようです。何種類もの和菓子が余裕の空間の中で美しく優雅に陳列されてます。右手に靴箱があって多分こちらから靴をぬいで座敷にあがってたべるんだよなあ、って考えていたら奥からオネエサンが出てきました。リクルートスーツの上着を脱いだような、長袖の白いブラウスに黒っぽいタイトスカート。

あのお、和菓子をいただきたくて参りましたが。

ああ、それなら靴を脱いでおあがりください。あちらに部屋があって、二人が座れるような長いテーブルがございますので、どこでもご自由にお座りください。

あ、それでは上がらせていただきます。(あちゃあ。そうだよ、座敷にあがるんだ。いつものように、京都遠征でもはだしでクロックス。靴箱見てもクロックス、いないよ。)

座敷に向かう廊下で、既に屋敷のお庭が見事なことにきがつきました。昔はこんな贅沢を楽しんでいたんだ。座敷は3部屋あって一番奥が一番広く、手前に次の間のような形で2部屋あります。たしかに、二人用のテーブルがレイアウトされてました。奥の間にお客さんがかたまって入っているようなので、手前の部屋に決めました。座ってから庭をぼ~っと見てると、今度は違うオネエサンがやはり同じ格好でお茶とお茶菓子を持ってきてくれました。黒豆の甘納豆です。

お茶もうまいし、甘納豆もうまいし、部屋はくつろげるし、庭の景色がすばらしい。この床の間がある部屋は8畳、隣は6畳間でした。庭が見えるような開放的な作りなので、ずっと広く感じます。

また、オネエサン登場。

本日の和菓子の見本です。それと、こちらがメニューでここからここまでは飲み物がついてません。飲み物は、裏に書いてあります。ごゆっくり、どうぞ。

あのお、お部屋とかお庭とかお料理の写真を撮らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか。(つうふうに、写真許可をもらうときの決め台詞化してます。誰でも使用可。無料。)

どうぞ、撮ってください。

それからの3分が実に長い3分でした。和菓子も食べたい。わらび餅も食べたい。さんざん迷って、わらび餅に軍配をあげました。やはり、なかなか食べれる物ではないですから。本物のわらび餅を食べてみたい。

オネエサンを呼んで、わらび餅(950円)と抹茶(420円)をオーダーします。
(わらび餅:数量限定の国産わらび粉を丹念に練り上げました。他に類のない食感をお楽しみください。お好みで沖縄波照間黒蜜をかけてお召し上がりください。)

このとき、わらび餅はこれから作り始めるので15分かかるけど、いいか、と聞かれました。はい、待たせていただきます、とこの空間、この景色、この雰囲気をいただいてますから、1時間でも待てます。来しかた行く末を考えるのぴったり。京文化のみやびなやかな衣食住を思い起こすもよし。

ぴたり15分後でした。オネエサンが運んで来たのはオーダーしたわらび餅と抹茶。

おお、これが写真見た黒い色したわらび餅ですか。

味をつけているので、最初はそのままお召し上がりください。お好みで黒蜜をおかけください。そのようにアドバイスされました。

わらび餅がつやつや、くろぐろ輝いてます。うつくしい。それを見ながら最初に抹茶をいただきます。ふう、うまい。京都でいただく抹茶ってどうしてこんなにうまいのかなあ。子供のころ祖父が立ててくれた抹茶もおいしかったなあ、なんてお庭を見ながら回想してます。

いよいよわらび餅を食べます。これがまあなんという衝撃的な食感。ほんのり甘く思い出せないようななつかしい深い味。ぷよぷよでぶりんぶりん。柔らかでつるつるでコシがあるわらび餅。噛み切る最後で何か芥子のみのこまかな粒を噛んだようなじゃり感がある。とっても不思議な和菓子です。

あとを引く味なんだなあ。コシがとっても強くてすぱっとは噛み切れず、しぶといにゅるがんこさがある。だから、また齧りたくなるし、齧り甲斐のある大きさに丸めているのもあとひきの原因になっている。昔はこんなわらび餅を食べていたのかなあ。

ここでこの不思議宇宙の旅が950円+420円なんです。時間になんの制限もなく。京都らしい京都の食べ物で京都時間を楽しむ。この企画は大成功でした。

  • わらび餅 for ever
  • 時間よとまれ
  • 京都時間

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9位

無鉄砲 大阪店 (今宮戎、大国町、恵美須町 / ラーメン)

1回

  • 夜の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.0
    • | CP 4.5
    • | 酒・ドリンク - ]
  • 使った金額(1人)
    ~¥999 -

2009/10訪問 2009/10/15

大阪で濃厚トンコツを食べるならここ、無鉄砲。粘度が高く濃厚なスープは、旨みも断然濃厚でサイコ~や。

(2009年10月再訪)
興奮しました。うまい。今まで食べた2杯もものすごくうまかったが、それより断然一番旨い。限りなく無限大に近い旨さ、なんてぶつぶつ独り言をいいながら、絶賛の言葉を捜してました。どんなとんこつより、うまい。

お店に、どんな希望でも言ってくれれば出来る限りこたえますよ、みたいなこと書いてあるんです。3回目の訪問ですが、次はいつ来れるか分かりません。思いっきりわがまましようと思っての訪問です。

お店到着が夜の部の開店25分前。シャッターポジションです。関西では極端に早い時間から並ぶ習慣はないようですね。このあいだ、京都で有名行列店に行き、55分前でシャッター。開店時間まで、後客なし!うえ~ん。

ただこの日のこのお店、開店時間には20人位の列に。食べ終わって開店後15分でお店から出てきましたが、25人待ちでした。あと30分早く来れば並ばなくていいのにねえ。

定刻に暖簾が上げられ、チケットはとんこつチャーシュー(900円)で。カウンター席の端っこに座るとすぐに店員が注文を聞きに来ます。今回は若い男。いくぞ。

あのお、スープは普通でおねがいします。(ここで、スープこってり、というと背油ちゃっちゃが多くなりますが、不要。)だだ、お願いですが、スープは熱々で。麺は硬め、よりもう少し硬めで。ネギは、多目よりもっと多目で出来れば1.5倍くらいいただけたらうれしいな。

行列の好みをぶつけます。配膳されたのは4分後。

すげ~、ネギ。聞いてくれましたよ。どれどれ、スープはどない?うま~い。いやあ、今まででダントツにうまい。このコクはどうだ。このスープ、濃いとかうすいとか超濃厚とかじゃなくて、超うまい!うまさと濃さの相関は分かりませんが、うまいんです、とにかく。もう★5しか考えられません。麺もぴったり硬茹で。この中細麺がうまいんだなあ。がむしゃらの極太はいかんよ。合ってない。こんな麺じゃあないと共倒れだね。

ニンニクも濃くてうまい。もうタレはどろどろ。それに高菜と紅しょうがを脇役に従えて、恍惚の一杯をいただきました。このお店、食べている途中で、味はどうか、って店員が聞きに来るんです。あのわがままを言った男の店員が行列が食べているところに来ましたよ。

どうですか。

いやあ、ありがとう。最高だよ。今までで一番。ネギもサンキュウでした。

スープの温度、いかがでしたか。

いやあ、熱くてうまい。いろいろすまんね。

にかああ、と笑って頷いて去っていきました。大阪に来ていろいろオイシイラーメンをいただき、大変シアワセでしたが、この日のこのとんこつチャーシューはそのどれもを凌駕する極みの1杯でした。

(2009年9月 再訪)
奈良帯解にある豚の骨の店長が、新規開店したつけ麺無心の立ち上げに一生懸命で、豚の骨を無鉄砲弟子がむしゃらにまかせっきりにしている状態がずっと続いています。

無鉄砲大阪店の普通にとんこつラーメンと呼んでいるらー麺の極濃厚トンコツスープは、粘度が濃いいだけではなく、うまみがすごい。濃厚で旨みも濃厚。味の調節も、ラーメンたれ、ごま、醤油にんにく、激辛高菜、紅生姜と多彩に揃っており、青ネギたっぷりで濃厚スープを心行くまで堪能できる。

そのとんこつラーメンに感激してから、もう1ヶ月経ち、やっとの再訪です。場所は、大国町の駅からすぐ。大国町の4#出口がエレベーターもあって地上に出ても横断する必要がないので一番重宝するのに、まだ工事中。いつまでやってるねん。結局会計年度のせいで、儲けを一度に出せないので、税金対策に合わせての工事日程。いい加減にせいや。ハンデキャップ持ってる人にどう謝罪するねん。

お店到着が20時半。思ったより長い行列で、店外だけで20人超えてます。店内に5人は待っているはず。一瞬やめか、と思いましたが、いつ来てもこんな調子かなって、最後尾に接続。待ち客の95%は20歳代のそれも20代前半の男。残りの5%は、行列さんひとり。だいたい、2,3,5人のグループで、白か黒のTシャツを着て、手ぶら、の類型。店内に入るまで35分。ラヲタさん、含有せず。

店内に入るとすぐに券売機でチケット購入しますが、この日のオーダーはWスープラーメン。この大阪店は、とんこつ、正油、Wスープの3種類のみ。前回は、とんこつだったので今回はWスープで行きましょうか。

チケ買うと店員が寄ってきて、オーダーの確認。

麺かためで、ねぎ多目で、スープは普通でおねがいします。

スープを濃厚というと、濃厚トンコツスペシャルバージョンではなくて、背脂ちゃっちゃ、をするだけ、というのを前回学びました。

お店到着、店内誘導、チヶ購入、着席、配膳までは45分でした。

そして、待望のWスープの登場。ネギは、サービスの多目の量です。もっとほしいけど、別料金トッピングはなし。

記念撮影ももどかしく、最初の一杯れんげですくい。

うううう、なんだよ、このうまさ。涙が出るぜ。おめえらも、うまいもの作ってくれるじゃないか。全然違いますね。このトンコツのごっついうまさ、迫力。これなんだよな。やっぱり、全然、天と地の差がありますね。がむしゃらにやればいい、つうもんじゃないな。頭を使い、舌を使い、お客様に最高の味を提供しようとする心意気。むしろ、がむしゃらな気持ちなんて邪魔なだけなんじゃないの、って言いたくなります。もう一度勉強しなおせ、って。

やっぱり、無鉄砲大阪はハンパじゃなかったということを改めて思いました。ほんと、全然別物よ。味も粘度と同様濃厚です。40%の正油スープが入っているにもかかわらず、粘度がものすごく高い。とんこつラーメンは、この倍くらい濃いんだなあ。Wも名品ですね。できれば、にぼトンコツでいってほしいのですが。豚の骨があてにならないんで。

麺は一転、中細麺で強いねじれがあります。うん、この麺もいいですね。ばかの一つ覚えで極太にする、なんてことをしないのが首から上を使っている証拠。このあと、大阪で首から上を使ってそのまますごい味を実現したラーメンに遭遇しますが、客をうならす味って腕力じゃないな。

(2009年8月初レビュー)
前から行きたいと思い、近いからまあいつでも行けるわ、と思っていた無鉄砲大阪本店をこの日の取材店に指名しました。千葉県成田にある濃厚鶏白湯ラーメンの鶏の骨の店主が尊敬してやまないお店です。地図で確認すると、な~んだ、と思うくらい宿から近い。大国町を降りてすぐの場所にあります。
入口に券売機があるので先にチケットを買います。もちろん狙いはどろんドロンジョとんこつ。お店のコードネームは、とんこつラーメン(700円)。チケット入手後は丸椅子に座っての順番待ち。

麺は、かためで。
スープは、こってりで。
ねぎは多めで。

カウンターからは厨房が見えてますが、迫力で豚骨を茹で込んでいます。

こうやってかきまわすことで、骨関係をずんどこ溶かしているんですね。いつも骨のまわりは、新鮮なスープを触れさす。濃度をどんどんあげていき、確かに閉店に近づくほど濃くなる理屈です。

カウンターの目の前の壁に一枚の写真が。写っているのはラーメン作りの正装をしている二人。黒Tシャツにタオルはちまき。それぞれのお店のユニフォーム。写真の中で二人はにっこりしています。場所は、千葉県松戸市の中華蕎麦とみ田。写真のひとりは冨田店主。だからもう一人は、ここ無鉄砲の店主でしょうね。とみ田に表敬訪問したときの写真でしょう。ほしい!

これかあ。これが食べたかった無鉄砲のどろドロンジョですか。見た目で青ネギがたっぷりとかかり(サービス)、濃厚そうな表情のスープに思わず喝采したくなります。先ほど目撃した背脂のちゃっちゃは、表面のあちこちに飛散してます。チャーシューの一部がのぞいてますが、3枚肉のぺらぺら。こんな表情ですよ。のりはちゃっちゃ攻撃にあって、べっちょり。あるだけ、の感じ。

うぐぐ。これがまあなんという旨さでしょう。信じられないな、この濃厚な味。スープの粘度も濃厚なら、味も濃厚ですね。とんこつラーメンの旨い店のスープが、ぎゅっと凝縮されて旨さが跳ね上がった印象。べたつきは感じません。温度が低いかな。アツアツではない。アツアツではないですが、うまい。ちょっと驚きました。こんなにうまいとは思わなかったな。ひきつづき、背脂のかたまり部分を入れて飲みますが、同じだなあ。うまい。脂のあるなしは、味にあんまし影響ないな。

このスープに青ネギを混ぜて飲むと、これはホント絶品中の絶品。うますぎ。

麺を引っ張り出すと、これは中太麺でリクエスト通りカタ麺にあがってます。スープのコーティングで口はべとべとになりながら、麺もいいわ。この麺にこのスープか。相性びったしだね。麺が熱いので、スープもうまくなる。やめられません。麺量は少なく、老人にはありがたい。もうこの時点で、再訪決めてます。大阪店は、あと正油ラーメンとWラーメンの2種類がひかえてます。

実にうまい。

と絶賛しながら、うれしスマイルで食べてましたが、三分の二くらいで、そろそろチェンジオブペースだろ。待ってましたの、ラーメンのたれ、と、辛し高菜を投入。

まずは、たれを入れた部分を食べるとやっぱ正解ね。ぐっとめりはりがついて、全くちがうラーメン味になるのが、うれしいわい。そこから高菜をまぜまぜし、またまたアナザーワールド。これは、はまるなあ。

ということで、想像以上のうまさ&とんこつが進化するとこんなになる、の見本を食べたようで、すっかりの満足でした。再訪と豚の骨訪問、早く実現したいですね。

  • ねぎ特別多目、スープ熱々
  • 硬め以上に硬めで
  • どろどろがうまい

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10位

いとう (東山、三条京阪、三条 / フレンチ)

1回

  • 昼の点数: 5.0

    • [ 料理・味 5.0
    • | サービス 5.0
    • | 雰囲気 4.5
    • | CP 5.0
    • | 酒・ドリンク 5.0 ]
  • 使った金額(1人)
    - ¥5,000~¥5,999

2009/09訪問 2009/09/18

通算500件目のレビューに決めたお店はここ。お店、シェフ、すべての読者のみなさま、全部全部感謝。

とうとう500件目になりました。もうそれだけで、感無量です。始めた当初は、100件までいくのかなあ、なんて思っていましたから。こんな極私流レビューに対しても、ずっとあたたかいはげましをいただき、みなさまには深く感謝いたします。あなたのことです。

記念レビューのお店をどこにするか。決める前に決めたことがあります。それは、千葉からBさんを呼ぶこと。ここまで来れたのも、Aさん、Bさん、Cさんの協力の賜物です。3人の協力なしにはここまで出来なかったことです。感謝を込め、代表してBさんに大阪に駆けつけてもらいました。そして二人して京都に行き、今回お世話になる西洋厨房いとうに向かいました。場所は知恩院の前、東山三条です。

少し早起きしてたまき亭に立ち寄り、焼きたてでやけどするくらい熱いパンを食べてもらいました。この計画は成功でしたね。この顛末は後ほど報告します。そこから、京都に行き、地下鉄で三条京阪へ。そこから、暑い日差しの中ふたりで歩いてお店まで。15分くらいでした。

お店は想像したとおりの、全く地味な外観です。ここがフレンチのお店?って感じですが、そこが行列の今回お店を決めた理由です。今回は料理を楽しんでください、とあらかじめBさんに言ってました。京都・フレンチという語感からは、古い民家を使った素敵な雰囲気の中で、とか、豪華食材とシェフの技、なんて思うステレオタイプのイメージがあります。今回は、それも魅力ありますが、まじめなフレンチをいただこう、という気持ちでこのお店を指名させていただきました。

ふう、と息を継いでドアを開けます。ちょっと緊張してました。お店の中は想像以上に、こじんまりとしていました。

こんにちは。いらっしゃいませ。厨房で準備をしていたシェフのいとうさんが振り返って、ごあいさつされました。短髪で精悍な顔をされ、見るからに律儀、実直という言葉がピッタリのかたでした。電話で予約をしたときに、少し話をしてました。
今日は、よろしくお願いします。

厨房を囲むように作られた3辺からなるカウンター席。厨房と言っても、どうやら火を使う場所は奥に作られているようで、この場所は、シェフのパフォーマンスが見られる場所のようです。カウンターの1辺には何人腰掛けるのでしょうか。この日は、われわれのあとから2組3人が入ってきたので、ちょうどシェフを囲む形で3組が1辺ずつ使えてゆったり過ごせました。

しばし、おしぼりで手を拭きながらこれから始まるランチに思いを馳せます。シェフから飲み物を聞かれましたので、迷わずビールをお願いしました。何もなくてもビールですが、ここまで歩いてきてのどが渇いてます。陶器の冷えたグラスにビールをついで、乾杯!いままでの協力に感謝して。500回、おつかれさま。

今日のお料理はあらかじめ電話でオーダーを入れてあります。5000円のコースです。シェフらしいな、と思ったのは、お店に置いてあったランチメニューにしても、ぜんぜんかっこつけず、必要なことだけ書かれていて。そんなことに一生懸命にならずに、もっとやることが、と言っているような。

Bコース
京都地野菜を取り込んだオードヴル
本日のお魚料理
本日のお肉料理
デザート
エスプレッソetc

さて、シェフが調理開始しました。バーナーに火をつけて、とうもろこしを焼き始めました。ん?オードヴル?

違いました。メニューに書いてませんが、シェフにとっては当然のスープからのスタートでした。そのスープに入れるコーンの下拵えでした。

インカのめざめの冷たいスープ
インカのめざめは聞いたことがありましたが、食べるのは初めてです。とっても小さなじゃがいもで、小さいほど甘い希少種のじゃがいものことだそうです。果肉が濃黄色で栗のような甘さがある。
その通りの自然に甘いコクのある冷たいスープでした。そこに、風味と食感のために焼いたとうもろこしのつぶつぶを入れる。この味の料理は初めて食べましたが、このときほど素材の力強さを感じたことをありません。すばらしいスープです。それを、まあ、さりげなく、普通っぽく見せる器を選んで配膳する。らしい、実にシェフらしい。ここが、いいんです。

フォアグラと近江しゃもの胸肉ともも肉のテリーヌ、しゃもの内臓のゼリーとバルサミコソースで
これもシェフの実力が出てしまう料理です。シャモのパテですね。あわててワインをお願いしました。味の複雑さとしゃも肉のうまさがからみあって、これは食べ応えがありました。アクセントにバルサミコをもってくるんですか。なるほどねえ、たしかに、いいアクセントになります。ゼリーだけでもその味のハーモニーに圧倒されるのに、見た目とアクセントを兼ねたバルサミコソースに、もっとありませんか。

う~ん、これはいいお店に当たったもんだな、とこの時点で更に期待がふくらみます。いとうシェフは、料理の配膳のときには、使っている素材や料理のことを全部説明してくれるのですが、早口と声が小さいときがあるのとこっちが知識がないんで、よく分からないときもありました。とってもシャイな話し方に好感が持てます。やっぱり、このお店を選んだ眼に狂いはない。

シェフがいろんな野菜の下拵えを始めました。メニューにあるオードヴルですね。

京都地野菜を取り込んだオードヴル
これがメインと思うほどの華やかでボリュームのある1皿です。シェフの話では、これは京野菜ではない、京都の地野菜だ、と何回も念を押されてました。小規模に野菜を作っているところから入手しているということで、流通しているものを集めている野菜とはちがいます。ここが、違うんだなあ。野菜によって何箇所かに分けての入手とか。京都の材木屋さんが作っている路地野菜もあるそうですよ。

全部の野菜を教えていただきましたが、分かったのはこのくらい。2種類の万願寺とうがらし、かぼちゃ、ズッキーニ、なす、きゅうり、白なす、赤おくら、マクワウリ。プラス、砂肝のパテ、牛肉のたたき、トマトソース、レモンオイル。

形の凝った皿に、たっぷりの野菜。熱が入って調理されていたり、そのままだったり。これこそ味のワンダーランドでした。もうここまででごちそうさま、でもおかしくない、すばらしい1皿でした。野菜が違う。野菜がいきがいい。ソースが違う。

スズキの低温ソテー、はものミートソース添え、まつたけ、黒米のリゾット、サマートリュフのせ
この本日の魚料理も迫力でした。魚とは思えない味の膨らみをサポート隊の力を存分に借りてお客さんに提供する。このワザはどこで学んだのですか?スズキはぱりぱりに香ばしく焼き上げられているのに内部はじわっと膨らんで水分が魚本来の旨みを残している。この分野の料理にうとい行列ですが、この料理のすごさは分かります。何より、旨い。こんな旨い魚料理、過去に記憶がありません。一番の素材に培ったワザ。眼の前でさっさと手を動かしてどんどん次々に料理を出してくるシェフを、尊敬のまなざしで見てしまいます。

タン元の赤ワイン煮、3種類の芋、ナス、デーツ
この料理だけでしたね、想像した味の延長線上で、旨いなあと思ったのは。あとの料理は想像も出来ませんでしたから。タンのうまさを引き出す調理方法は、それは行列のやり方とは比べものにならない手のこんだものでしょうね。柔らかくするのと歯ごたえを残して肉のうまみを残すという二律背反のどこに着地点を置くのか。ど真ん中の正解だと思いました。

シャラン鴨のロースト、にんにくソース、サマートリュフ、デーツ
この鴨、めちゃめちゃうまい。濃厚な味、噛みこんだときの歯ごたえ、風味、ローストのこげ味、すべて満点だと思います。肉料理は、Bさんと別々なのをオーダーしましたが、こっちの鴨の取り合いでした。魚は1種類しか選べません。鴨の素材も違うんでしょうが、やはりローストの方法なんでしょうね。う~ん、またまた、目の前のシェフは只者でないのに気がつきます。シェフの経歴を全く存じませんが、すごい経歴をお持ちなんでしょうね。尊敬光線を発してお顔を見てしまいました。

デザートとコーヒー
キャラメル塩アイス、ココナツミルク・バニラのブラマンジェ、洋ナシコンポート
参りました。デザートまで完璧です。

値段のことを言いたくありませんが、こんなCPの高いフレンチとは思っていませんでした。安過ぎる。Bさんとふたりで、すばらしい料理ストーリーに酔いしれました。お料理中心で行く、が、今回の狙いだったのですが、予想以上の料理ドラマにすっかり興奮してしまいました。記念レビューが恥ずかしくなるほど、お料理のほうがずっとすばらしく、そのすばらしさをきっちり伝える自信がありません。そして、このお料理だからこそ、この空間が生きてくるんだと。この無駄や華美を排した空間こそ逆に料理に専念し、料理のすばらしさを純粋に感じ、感動できるんだとやっと分かりました。

いとうシェフ、西洋厨房いとう、に助けられて実力以上に内容のある500回記念レビューを書くことが出来ました。たいへんありがとうございました。

また次回から、第一歩。今度はゆっくりいきますよ。

  • 京都地野菜のオードヴル
  • 京都地野菜のオードヴル
  • フォアグラと近江しゃものテリーヌ

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