8回
2022/07 訪問
日本料理には季節の物語がある
正午、エレベーターで地下一階へ。カウンター11席、BGMは当然無い。この日の料理は...
・先付 七夕にちなんで 器の上には梶の木の葉 織姫と彦星が会うために天の川を渡る船の舵に似ているから梶(カジ)の木 五色の糸は中国の伝承、陰陽五行説(木火土金水)に因む 蓋を取ると 鴨茄子の油煮 車海老 雲丹 長芋 オクラ
・冬瓜と鮑のお椀
・ノドグロに茗荷を使った鮨飯
・マグロ太巻き 赤身中トロ大トロ
・鮎の焼きもの食べ比べ まずは琵琶湖の鮎 次に郡上八幡 長良川の鮎
・スッポンの唐揚げ
・八寸その一 枝豆のずんだの餡で絡めた帆立貝と白瓜 万願寺唐辛子 イチジクに胡麻ダレ
・八寸そのニ スズキの焼き物
・八寸その三 グラスはすべて110年前のバカラ トマトとジュンサイ 青梅を甘酸っぱく炊いたもの ワカメと白玉 竹の筒には桑名の蛤と三つ葉のお浸し 皿には 胡瓜とクラゲと鰻を使った酢の物 タコと小豆を炊いた蛸の小倉煮 穴子の山椒焼き 卵を蒸しあげた卵しんじょう ホオズキの中にはどんこ椎茸と三度豆(インゲン)の胡麻白和え
・鱧カツ 山椒のソース
・平貝の磯部焼きとカラスミ 以前はフォアグラ最中が出ていた手順 これが新スタンダードになるのか?
・鱧しゃぶ
・氷の器に蕎麦
・毛蟹とコロッケ、とうもろこし、枝豆のご飯
・水羊羹
大陸では機織りが上手な織女と働き者の牽牛にあやかって、織物その他の技芸の上達を祈る「乞巧奠(きこうでん)」という行事が、七月七日に行われていた。仏教とともに伝来し、これに日本古来の棚機女(たなばたつめ)信仰や祓え(邪鬼払い)の行事と結びつき、現在の日本の七夕につながる。笹に願いごとを書いた短冊を飾る行事も元は梶の木の葉に歌を書いて星に手向ける風習だった。そんな物語を季節の日本料理にこめて供してくれる。料理の背景にはストーリーがある。しのはら劇場はいつ来ても素晴らしい。次は秋。
2022/07/08 更新
2021/12 訪問
季節を感じる和の真髄
地下一階のお店、早く来る人が多いと地下のエレベーターホールがぎゅうぎゅうになってしまう。時間通りの来店が吉。BGMはない。本日は11席。酒はクラフトビール、八海山、天賦、日高見。
・山茶花の飾り
・フグの汁 聖護院かぶら
・トラフグとあん肝のお造り
・柚子に詰めた蒸し寿司河豚白子
・栗の渋皮煮
・青首鴨焼き物
・スッポンの唐揚げタレマブシ
・マグロの太巻き
・八寸
・フォアグラとあんこうがきとウイスキーゼリーのモナカ
・みぞれ鍋 たら白子 甘鯛 セリ
・上海蟹めし
・デザート 黒糖と百合根で作った葛焼き
篠原さんはいつも明るく気持ち良い。師走を感じる素晴らしいコースであった。季節を表すしつらえと料理、それこそ和の真髄。
2021/12/06 更新
2021/10 訪問
訪れるたび楽しく、感動する
カウンター10席。BGMはない。秋らしいしつらえの料理たち。日本酒は宮泉、一白水成、神指蔵
・紅葉狩り 甲羅返し!に毛蟹、キャビア、菊菜、菊花
・信州松茸のお椀
・お造り はも油通し 車海老
・藁苞に穴子と飯蒸 栗、銀杏、芝漬け
・子持ち鮎の唐揚げ
・焼きスッポン
・八寸 月見 豊作を祈る 献盃 伊勢海老ほうれん草 いちじく、マグロ太巻き
フォアグラマンゴーパッションフルーツシャインマスカットもなか
・栗の渋皮煮
・蕎麦 混ぜたらすぐ食べる!
・猪、蓮根、小芋、松茸のお鍋
・ご飯 生イクラ
・松茸雑炊
・デザート 百合根入り葛饅頭
そしてスッポンはいつも旨い。名店になっても篠原さんは偉ぶらず明るく居心地が良い。料理もいいが、一番いいところはその気持ちよさだ。
2021/10/31 更新
大阪四天王寺で春、聖徳太子の命日を御祈祷する聖霊会(しょうりょうえ)がありお能が奉納される。春の季語に「貝寄風(かいよせ)」というのがあり、これは3月下旬ごろ吹く西風のことだが、聖霊会ではこの貝寄風で大阪住吉の浜辺に打ち寄せられた貝から造花をつくり太子に献じる。また関西では昔からこの時期の貝の酢の物を「かいよせ」という。そんな言葉の連想から本日の先付けは彩られている。
・香煎茶
・聖霊会(しょうりょうえ)
・京湯葉を干瓢で巻いた大原木(おはらぎ) 大原女(おはらめ)が京都へ売りに来る薪に見立てた京料理
・合鴨
・手巻き うなぎ・花山椒・玉子しんじょう
・スッポン竜田揚げ
・八寸
・鮎 琵琶湖
・握り マグロ サワラ
・(追加)フグ唐揚げ
・かぶら鍋 桜鯛 蛤 ウルイ
・(追加)飛騨牛
・ヒラメ胡麻和え、飛騨牛しぐれ煮、水茄子
・うすい豆ご飯
・赤だし
・デザート 桜の葉を使ったきんとん
季節ならではの物語とともに供される料理。和食の真髄である季節感、季節の流れの中に自分もいるという感覚を経験できる。毎度のことながら素晴らしいと思う。