蓼喰人さんが投稿したプレゼンテ スギ(千葉/佐倉)の口コミ詳細

蓼喰人の「蕎麦屋酒」ガイド

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蓼喰人 (男性・東京都) 認証済

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プレゼンテ スギ佐倉、京成佐倉、大佐倉/イタリアン、イノベーティブ

1

  • 昼の点数:4.8

    • ¥10,000~¥14,999 / 1人
      • 料理・味 4.8
      • |サービス 4.8
      • |雰囲気 4.8
      • |CP 4.8
      • |酒・ドリンク 4.8
1回目

2020/05 訪問

  • 昼の点数:4.8

    • [ 料理・味4.8
    • | サービス4.8
    • | 雰囲気4.8
    • | CP4.8
    • | 酒・ドリンク4.8
    ¥10,000~¥14,999
    / 1人

'成田詣で'ならぬ'佐倉詣で'も納得

 そろそろ下火となる兆しが見えて来たとは言え、まだ終息には時間が掛かると思われるコロナ騒動。
 そんな世情の中でも、今年も私の誕生日が巡ってきた。
 例年通りいつも食べ歩きに付き合ってくれている友人が、会食の席をセッティングしてくれた。

 今回は私のたっての希望で、斬新な調理法と遊び心が溢れた料理の数々で評判の高い、こちらの創作イタリアンを選んでもらった。
 マイフォロアーさんの多くが絶賛されており、かねてより是非一度訪れてみたかった一軒である。

 場所は千葉の佐倉で、もう少し行けば成田なので遠いイメージがあるが、都心からは電車で1時間くらい。
 駅はJRの佐倉の方が近いが、我々は便の良い「京成佐倉」で降りると、土曜日の昼前ながら駅前は閑散としている。
 ここからは2㎞ほどは有り、雨模様でもあるためタクシーで向かう。
 当地では有名店のようで店名を告げるとドライバーはすぐ分かり、ものの10分ほどで到着。

 さすがにこの辺りまで来ると自然が近くに感じられ、雨に濡れた新緑が清々しい。
 幹線道路に面してかなり広い敷地を占めており、自家用車で訪れる客向けのゆったりとした駐車スペースの向こうに、南欧風の白壁に赤瓦、それにアーチ状の入り口が印象的な瀟洒な一軒家が佇んでいる。

 全て予約客で昼は11時半スタートで統一されており、定刻通りに揃った4組8人が、マダムに導かれて入って左手のメインダイニングに通された。
 内部も清楚な雰囲気で大き目のテーブルがゆったりと配されており、BGMにはヒーリング系が静かに流されている。
 芸術的に畳み込まれたナフキンと、機能性とデザイン性に優れたカトラリーの設えが好ましい。

 まず飲み物を訊かれたが、こちらは車で訪れる客が多いのでノンアルコールドリンクの充実が目を引く。
 我々は最初から、ワインをボトルでもらうつもり。
 ワインリストは無く、おすすめがマダムから口頭で伝えられた。

 'しっかり目の白'の要望で頼んだのは「Scarbolo Lara Sunset Scent」というフリウリのシャルドネ。
 華やかさと深みのある味わいが、なかなか良い。
 大き目の豪華なワイングラスは作家物で、保冷のためのボトルレストも洒落ている。

 コースは数多くの料理が少しずつ出てくるスタイルだが、その素材のほとんどは地元の千葉の産物で、さらに自ら収穫した野菜や、家族で周辺を散策がてら摘んできた山菜や野草も使われるとのこと。
 また'料理は化学'を打ち出した、かの「エル・ブジ」が取り入れたことで有名な「ガストロバッグ」なる減圧加熱調理器具を駆使した、画期的な料理も登場するようで大いに楽しみである。

 
 卓上に置かれたメニューには、何やら謎めいた文言がランダムに並んでいる。
 しかし実際にご主人とマダムにより皿が運ばれる際には、その都度丁寧な説明が添えられた。

*'シェフからの最初の贈り物'「定点 トマト」:ご主人の子供のころの思い出の「りんご飴」がモチーフ。
 箱庭状の木枠に置かれた石に、竹串に刺さった飴でコーティングされたミニトマトが差し込まれている。
 ローズゼラニウムの青葉と竹炭がトッピングされており、まさに遊び心が溢れている。

フォアグラと新玉ねぎ:フォアグラのペーストの上に、柔らかく煮た新玉ねぎと生クリームを窒素ガスで泡状にしたムースが掛かっている。
 人工イクラの手法で粒状に成型したオリーブオイルと、玉ねぎを炭化するまでローストした網目状のチュイールが飾られている。
 ちなみにこの器は、3Ⅾプリンターで作られたものとのこと。

イカと春の香り:蕗の薹と合わせた赤イカのタルタルの上に、ルッコラのアイスクリームが盛られている。
 蕗の薹とルッコラの苦みと、赤イカの甘みの対比が楽しい。
 添えられているのは「カタバミの花」と「ユキノシタの葉」で、いずれも我が家の庭でもおなじみの野草。
 特に雑草として抜き取られる運命にあるカタバミの、微かな酸味を含んだ味わいに感心。

GV鰹:房州勝浦産の鰹に前述のガストロバックを使い、フランボワーズの果汁と鰹中落ちの出汁を含ませてある。
 ご主人は'追いかつお'と言う言葉を使っていたが、食感は変わらない鰹の刺身にさらなる旨味が加わっており実に面白い。
 上にはバラの花を模した、薄切りのビーツのピクルスが飾られている。
 敷かれているのは、こちらも地場の牛乳から作られたヨーグルトで、水分を抜いて凝縮した味が鰹に良く合う。

クロワッサン:近所で採られた「マテバシイ」という、ドングリの粉末が振りかけられて焼かれている。
 焼き立てなので、サクッとした表面と中のもっちり感が好ましい。

黒い塊:これもポルチーニや生ハムの味をGVで含ませたポテトの塊が、竹炭入りの衣でフリットにされている。
 味が十分に浸み込んでいながら煮崩れていない、ポテトの食感が不思議。
 山菜の「ニワトコ」風味のビネガーを混ぜたマスタードが敷かれている。
 皿の周囲にはポルチーニの粉末が撒かれており、お子さんの泥遊びの汚れを表現しているとのこと。

*'再生':鹿のコンソメスープが、大き目のワイングラスで供された。
 一緒に見せてくれたのは自家製の「鹿節」で、これを加えることでより深みが増している。
 グラスに立ち込める香りが芳しく、雑味の無い凝縮された旨味が秀逸。

アワビと筍のフラン:ガラスの器の底にはアワビや蛤の出汁で作ったフラン(洋風茶碗蒸し)が蒸し固められており、その上に鮑肝のソースが流され、さらに3時間蒸した鮑のスライスと筍が盛られている。
 地元の筍はアクが少なく最小限の火通しのためシャキシャキの歯触りで、垂らされた緑のソースがイタリアンパセリなのも面白い。
 苦味やクセの少ない肝のソースが味を纏めている。

アイスキャンディー:レモングラスと檜の香りのする、一口で頬張れるアイスキャンディー。
 塩味が結構効いており、コースに抑揚が生まれる。

本日の焼き立てパン:バターとチーズを使った、焼き立てのフォカッチャが登場。
 香りも食感も良く、いくらでも食べられそう。

High&Low ステーキ:ネーミングは高温調理と低温調理を繰り返すことに由来するようだ。
 近くの八千代産の黒毛和牛を、高温でローストした後に冷風に晒し、さらに低温でじっくりと仕上げると言う、精妙な技が施されている。
 薪釜を使っており、燻香を纏わせた肉は実に柔らかく、噛めばジューシーな旨味がほとばしる。
 人参と牛蒡のピクルスが添えられており、輪切りの人参には顔が彫り込まれているが、それが皿により表情が違うのが面白い。

Sugi畑をお皿に乗せて:ガストロバックされた根菜類に、摘んできたビオラなどのエディブルフラワーが飾られている、まさに春の野の光景。
 ドレッシングはムース状とレモン風味のオリーブオイルをサラサラに加工した2種類が添えられ、口の中で弾ける食感も楽しい。

杉寿司:漬けを作るようにGVされたメジマグロの中トロと、古代米のシャリで握られた鮨の上に、サマートリュフの薄切りと唐墨に似せて作られた卵黄が飾られている。
 一口で頬張れば、様々な味と香りが交錯する。
 梅の花が浮かび上がるガラスの皿は、紅白の色違いが使われていた。

本日のパスタ:蓬が練り込まれた手打ちパスタが、松の実とバジルの代わりに鬼胡桃とパクチーで作られた、ジェノベーゼソースで和えられている。
 カットされた筍やゼンマイも加わり、上には刻んだクレソンが盛られているが、これらも全て地場の素材。
 色彩的には緑で統一されているが、味と香りは実に複雑。
 
 この後がデザートの部になるが、その前に'食後の飲み物'を訊かれた。
 コーヒーも有るが、マダムにより茶葉のサンプルが提示される「ハーブティー」が面白そう。
 香りも嗅がせてもらえるので、私は「オーガニックアフリカンネクター」をお相手は「ホワイトオーチャード」を注文しておく。

エアーアイス:ヨーグルトのセミフレッド風の軽い食感のアイスクリームで、掛かっている山吹色に緑の点が散らされているソースは、マンゴーと木の芽(山椒の葉)で作ったもの。
 発想の妙が感じられ、実際の味も納得。
 ポリジという薬草にも使われる、可憐な花があしらわれている。

苦みと香り:元々苦みのあるトレビスの葉をパリパリになるまで乾燥焼きにしたものと、ショコラの取り合わせだが、ショコラの中には何と「ドクダミ」が混ぜ込まれている。
 薬効は有ると聞いているが、これも我が家では臭みの在る厄介者の雑草で、これを違和感なく取り入れている点に感心。

食べられなさそうで食べられる:こちらの名物のひとつで、モアイ像を模した型で作られたフィナンシェ。
 色もそれらしく見せるために竹炭が加えられており、一見するとモアイのフィギュアだが美味しく食べられる。

食べられないけれど食べられそう:宝箱の中に収められていたのは琥珀色の小さな円盤状の塊で、一見するとキャンディーのようだが実際はハーブ入りの石鹸で、これはお土産として持ち帰るもの。

 最後に予めお願いしておいた、バースディプレートが登場。
 可愛らしい花束の図柄とメッセージが手書きされており、キャンドルが灯されクッキーが添えられている。
 改めてこの店を選んでくれた友人に感謝。
 洒落たポットで供されたハーブティを啜りながら、満ち足りた気分に浸る。


 バラエティに富んだコースを振り返ると、全てにわたり丁寧な仕事が施されており、しっかりした技術力の上で繰り出される作品群には感心することしきり。
 特にGVなど新しい調理法の使いこなしや、一見突飛と思われる食材の取り合わせからは、単なる遊び心を超越したハイレベルな技と才気が窺える。

 使われている器の選び方も印象に残る。
 ほとんどが高名なクリエーターによる、芸術性に優れた作品で、それを愛でることでも満足度は高い。
 さらにそれに合わせた盛り付けのセンスも素晴らしく、ご主人自身もアーチストと言える。

 ご主人夫妻の応対ぶりにも好感が持てる。
 得てしてこういったスタイルでは、才能をひけらかすように、独善的な価値観を客に押し付けるようなケースも見られるが、こちらはそのような懸念は全くなく気持ちよくご主人の世界に馴染めた。

 今回はご馳走になったのでお勘定については大凡だが、この日のコースは@6,000円でワイン1本を加えても、税込みでトータル2万円ちょっととのこと。
 充実の内容からすれば、極めてリーズナブルに思う。


 店の立地は、ご主人にとっては理想的だったと思われる。
 周囲に自然が残るこの辺りは作物の栽培に好適で、また良質な肉も生産され、さらに海からもそれほど遠くなくので新鮮な海産物も手に入りやすい。
 地産地消のスタイルの、まさにお手本のような店と言える。

 近所ならば頻繁に通いたい店で、実際にMFさんの中にも足繁く訪れている方がいらっしゃる。
 '成田詣で'ならぬ'佐倉詣で'も納得である。

 実は当初の予定では、こちらの後には優れた展示物と手入れが行き届いた広大な庭園で有名な「川村美術館」に立ち寄るつもりでいたが、このご時世のため休館中で叶わなかった。
 折しも雨模様の天候で行っても存分に楽しめなかったかも知れないが、次回はそちらも含めて是非再びこの地を訪れたいと思う。

  • 「定点 トマト飴」

  • ワイングラスは作家物

  • ボトルレスト状のクーラーが洒落ている

  • 「フォアグラと新玉ねぎのムース」

  • 新玉ねぎの甘さが生きている

  • 「イカと春の香り」

  • 春の香りとイカの甘みが楽しい

  • 「GV鰹」バラの花を模したビーツが美しい

  • フランボワーズのエキスが注入された鰹

  • 自家製ヨーグルトを添えて

  • どんぐりの粉を塗した「クロワッサン」

  • 焼きたてのもっちり感が印象的

  • 「黒い塊」

  • GVで仕上げたポテトは食感しっかり

  • 「再生」鹿のコンソメ

  • 自家製の鹿節

  • 「アワビと筍のフラン」

  • シャキシャキとした筍

  • 3時間蒸し上げたアワビ

  • 肝のソースも美味い

  • 「アイスキャンディー」

  • 肉料理用のカトラリー

  • 「High&Low ステーキ」

  • 人参の表情が違う

  • 低温でじっくりと火入れされた肉はジューシー

  • 「本日のパン」

  • バターとチーズの風味が心地よい

  • 「Sugi畑をお皿に乗せて」

  • まさに野菜の競演

  • 「杉寿司」

  • 皿の柄が紅白

  • マグロとトリュフのマリアージュ

  • 「本日のパスタ」

  • 蓬を練り込んだパスタとパクチーと胡桃のジェノペーゼソースとのマリアージュ

  • デザート用のカトラリー

  • 「エアーアイス」

  • ヨーグルトアイスとマンゴーに山椒のソース

  • 独特の組み合わせが面白い

  • 私のハーブティ「オーガニックアフリカンネクター」

  • ハーブティーを注ぐ

  • お相手のハーブティ「ホワイトオーチャード」

  • ハーブティーのサンプル

  • 「乾燥させたトレビスとショコラムース」

  • ショコラとドクダミの融合

  • '食べられなさそうで食べられる'フィナンシェ

  • '食べられないけど食べられそう'な手作り石鹸

  • バースデープレート

  • 本日のメニュー

  • 芸術的なナフキン・カトラリー

  • センスあふれる卓上

  • おおらかな雰囲気

  • 洒落た佇まい

2020/05/22 更新

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