蓼喰人さんが投稿した初音鮨(東京/蒲田)の口コミ詳細

蓼喰人の「蕎麦屋酒」ガイド

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蓼喰人 (男性・東京都) 認証済

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初音鮨蒲田、蓮沼、京急蒲田/寿司

1

  • 昼の点数:4.8

      • 料理・味 4.8
      • |サービス 5.0
      • |雰囲気 5.0
      • |CP 4.0
      • |酒・ドリンク 4.8
1回目

2017/01 訪問

  • 昼の点数:4.8

    • [ 料理・味4.8
    • | サービス5.0
    • | 雰囲気5.0
    • | CP4.0
    • | 酒・ドリンク4.8

味はもとより見事なエンターテイメントを満喫

 いつもお世話になっているマイフォロアーさんから、こちらへのお誘いを頂く。
 かねてより一度は訪れてみたかった店であり、喜び勇んでお受けする。

 普段は夜だけの営業のようだが、土曜日に限り昼でも開けている。
 定員は8名でもちろん完全予約制であるが、席を確保するのは至難の技とのこと。
 ご一緒したのはお声を掛けて頂いた眉目秀麗なご婦人と、初めてお目に掛かる下町のお店に精通されている好青年。

 場所は蒲田駅から広い通りを5.6分進んだ、分かりやすい所。
 12時丁度に一斉に仕事がスタートするため早めに参集せよとのご指示が有り、15分くらい前に無事到着。
 外観は洒落たカフェのようにも見えるが、一歩中に入るとそこは完全に和の空間で、待合室的な畳敷きの小上がりには季節の設えや生花が飾られ、華やいだ雰囲気を醸し出している。
 客席は奥の掘りごたつ式のL字型のカウンターで、艶やかな和服姿の女将さんにより、到着順に案内された。

 この日は息子さんがご両親を伴って訪れたご一家3人、常連と思しきお一人で寄られた男性の方2名、それに我々と言うメンバー。
 私はご主人の手捌きが横から眺められる、恰好の席に座らせてもらった。

 先に女将さんから飲み物を訊かれるが、私は「生ビール」を所望。
 程なくご主人の挨拶でスタートと相成ったが、それはまるで寄席の口上のようで、これからの楽しいひと時への期待が高まる。

 早速今し方炊き上げて酢を打ったばかりのシャリを客に提示し、まずそれを少量ずつ味見させる。
 酢には砂糖などの甘味は一切加えておらず、食感も多少パラついているように思うが、これが徐々になじんで酢飯として落ち着いた味わいになるとのこと。

 ご主人の軽妙な語り口とユーモアのセンスは落語家も顔負けで、時々に交える食材や仕事に関する薀蓄話にも、客はつい引き付けられていく。
 こちらの質問にも的確に答えてくれるし、写真撮影も大歓迎とのこと。
 しかも撮られることを楽しんでいるかのような表情やポーズには、旺盛なサービス精神が溢れている。
 要所ごとに奥から姿を見せる、終始微笑みを絶やさない女将さんとの意気もぴったりで、夫唱婦随のほほえましさが感じ取れる。

 おまかせのコースは前菜的なものは無く、17種類ほどの握りずしのみで構成される。
 季節ごとの旬物が鮨だねとして登場するが、選りすぐった上物であることはもちろん、そのすべてに繊細な仕事が施されている。

 ネタのほとんどは握る直前に客の目の前で包丁で引かれ、それを大皿に並べてゆく。
 その皿も素材が適温になるように、程良く温められたものが使われている。

 また握った鮨は1個ずつ、直接客に手渡しされるのもこちらの特色で、これも江戸前伝統の手法のひとつとのこと。
 これを味わう時は、逆さまにしてネタを舌の上に乗せるように口に入れる事を薦められる。
 握り具合は中に空気を含ませているが、手渡しされても形が崩れるようなことは無く、口の中ではらりと解ける卓越の技を見せる。
 箸は出されないが、もちろん客の手元にはおしぼりの他に手拭き用の布巾も用意されている。

 種類によって仕上げも工夫されており、塩で出す場合は手のひらに少量の手塩をしてからネタを取り、その上にシャリを乗せて握っていた。
 煮切りを塗って出す場合には、独特の毛の短い刷毛で少量を垂らす程度。
 山葵は案外少な目で、ネタの下に忍ばせることも有れば、上に乗せて出す場合も有る。
 それぞれの特性に合わせて、仕事のやり方に違いが見せる点は実に面白い。

 握りは登場順に次の通り。
アオリイカ:本来夏場が旬のアオリイカがこの時期に上がることを、ご主人は懸念していた。
 塩と酢橘で食べさせるが、イカの甘味が感じられる。
 
唐墨+アオリイカのゲソたたき:昨年仕込んだという自家製の唐墨をドーンと見せてくれたが、これだけの大きさのものは珍しい。
 これを丁寧に皮を剥いて薄くスライスした3枚に、アオリイカのゲソをたたいてから炙ったものを挟んで握られている。
 これには唐墨の仕込みで使った日本酒の「会津中将」が、少量ずつ添えられた。
 唐墨のねっとりとした食感と適度な塩気が、イカの風味や歯触りと相俟ってなかなか楽しい。

:淡路島の近海で獲れた天然ものを地焼きで。
 焼く前の開いたものを見せてくれたが、1㎏を超える大物でその迫力に驚く。
 皮目の香ばしさと歯応え、適度に落ちた脂の旨味が好ましい。

 ここでガリが登場。
 新生姜の時期に大量に仕込んでいるそうで、一般的なスライスでは無く丸のまま漬け込んだものを、2ミリほどにカットして出される。
 こちらにも甘味の添加は全く無く、一方辛味は極めて穏やかで、食感も驚くほど柔らかい。
 一般的なガリの概念とは異なり、あくまでも握りずしの合間の口直しとしての役割を持たせている。

赤貝:大分産とのこと。
 身の下に「ひも」も合わせて握っているが、これも間違いのない美味さ。

かんぱち:数日間熟成させた腹側が極薄に長く引かれ、これを巻き込むようにして握られた。
 味の凝縮が感じられる。

 ここで後で出される本鮪が、'土手'のままの巨塊で披露された。
 今回は青森の「三厩」の産。
 ご主人は専用の包丁で血合いを削ぎ落としていく。
 切り立てはやや黒ずんでいるが、空気に触れることで鮮やかな赤色に変化していくとのこと。
 
しらかわ(しろあまだい):甘鯛の中でもとりわけ珍重される高級魚である。
 しかも今回は4㎏を超える大物とのこと。
 昨年末に仕入れたものを最初に塩で〆て水分を抜き、酢洗いした後で昆布〆にするという最良の仕事が施されている。
 ねっとりとした舌触りと旨みを2枚づけで堪能。

:産地は失念したが、こちらも〆具合が絶妙。
 これも2枚づけで握られた。

くえ:千葉の船形で上がったものとのこと。
 これも十分に寝かせて、アミノ酸を活性化させている。
 霜降りにしてさらに旨味がアップ。

あんきも:薄味で煮上げた塊が皿で運ばれた。
 これをカットしていくが、断面のオレンジ色のマーブル模様は、オキアミを食べている証拠とのこと。
 濃厚な味わいは、下手なフォアグラなどよりずっと美味い。

 ここでこれも後で出される「毛ガニ」を、生の状態で見せてくれた。
 手に持った様子からして、ずっしりと身が詰まっていることが窺える。
 これを20分ほど蒸し上げるとのこと。

赤身づけ:予め漬け込まれた'さく'から、やや厚めにスライスされていく。
 深紅の色合いが見るからに美味しそう。
 シャリを包み込むように握られており、旨味が口の中で広がる。

白子:鱈の白子である「雲子」が、形を崩さないように握られている。
 形が整っている割に、口に入れるとすぐに蕩けてしまうクリーミーさ。
 もちろん臭みなどは全くない。

中とろ:切りつけて並べられたグラデーションの色彩が美しい。
 本鮪ならではの、独特の渋みが心地よい。

毛ガニ:いよいよ姿のまま美しく蒸し上がった毛ガニが登場。
 まだ湯気の立っている熱々が、手際良く捌かれていく。
 私は蟹の中では繊細な味わいの毛ガニが一番好きだが、如何せんズワイなどに比べれば身を取り出すのが面倒くさい。
 ご主人はまず足を捥いで殻に包丁目を入れて、俎板に綺麗に並べて見せた。
 その後で身を丁寧に外し、一人前ずつ間隔をとって盛られていく。

 足の付け根の部分は、奥の方で女将さんが身を取り出しており、これが酢飯に加えられた。
 エキスが漏れ出さないように下を向けて蒸された甲羅に溜まった、濃厚な蟹味噌もドバっと混ぜ合わされ、一旦一人前ずつ大皿に盛りつけられる。
 この酢飯の上に足の身を乗せておむすび状に握られ、これを2つにカットしたものが、2回にわたって各々に手渡された。
 毛ガニの旨みを余すところなく取り込んだ味わいは、まさに口福の極みである。

炙りとろ:これも'さく'のまま炙られたものが'づけ'にされており、スライスされた状態はまるでローストビーフのよう。
 味もそれに近く、多めに添えられた山葵が効いている。

鉄火巻き:ご主人は通常の海苔にさらに半分の幅を付け足し、これに薄く酢飯を伸ばした。
 この上に先に出された鮪3種の残った部分を、びっしりと並べた。
 はみ出すのではと心配なほどだが、一気に巻き上げてすぐさま人数分にカットしていく。
 断面はモザイクのように鮪の身が折り重なり、頬張れば贅沢な味わいが口いっぱいに広がった。

干瓢巻き:細巻きを4つ切りにカットされて渡される。
 しっかりとした歯応えが感じられる煮加減で、ここで初めて砂糖の味が登場。
 
玉子焼き:海老のすり身と山芋のすりおろしが混ぜて焼かれているとのこと。
 上品な甘みとねっとりとした舌触りで、デザート感覚で楽しめた。

 酒の記述が後になったが、蕎麦と違って鮨に酒は不可欠とは言えないが、やはり美味いものには美味い酒が付き物。
 銘柄は女将さんにお任せだが、その場に合わせた冷酒を次々と出してもらった。
 出された順に「開運」「五凛」「」「日高見」「奥播磨」といったラインナップ。
 いずれも良かったが、女将さんの笑顔でのお酌となれば美味さも一入である。

 
 まことに充実した時間が流れた。
 入手が難しいと思われる選りすぐった鮨ネタの数々と、それに見合う手間のかけ方には感心。
 奇を衒ったような部分もあるが、根底には江戸前鮨の流儀がきちんと受け継がれていることが判る。

 それにも増して印象に残ったのは、ご主人のキャラの濃さである。
 巧みな話術に加えて、効果的にネタを披露して客の心を掴んでいく手法は、まさにエンターテイメントと言える。
 お勘定は4万円近くになったが、総体的な満足度からすれば、決して高くは無いと思う。

 実に得難い経験をさせていただいた思いである。
 改めてお誘い頂いたMさん、ご一緒いただいたHさんに感謝申し上げたい。
 なおレビューの内容については、メモを取っていたわけでは無いのでうろ覚えのため、多少いい加減な点があることをご容赦願いたい。

2017/01/25 更新

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