3回
2017/11 訪問
やっぱり美味しい『ゼノビアホンモス』
広尾散歩通りにあるシリアをメインとしたアラビア料理のお店です。
お店の雰囲気も料理も本格派のお店で、本物のアラビア料理が楽しめます。
いただいたのは、
■前菜盛り合わせ(1,600円)
前菜の中から3種を選び、さらにジャバティ(薄いナン)が付いてきます。
選んだのは、『ホンモス』『ムッタバル』『ムハンマラ』の3種類です。前菜を単品注文した際よりもやや小さいお皿で提供されます。
ホンモスは、アラビアではメジャーな豆のペーストです。ひよこ豆をペースト状にしてオリーブオイルをかけてあります。後でレビューするゼノビアホンモスと比べると、刺激が無い分、マイルドで食べやすい印象です。穏やかですが刺激が無いとも言えます。好みで選ぶといいですね。
ムッタバルは、ナスとゴマのペーストです。見た目は白いのでホンモスとの区別がつきにくいですね。写真の左奥のややざらつきのあるのがムッタバルです。ナスは皮を剥いて使っているため白いですが、味は見事なまでに「焼きナス」です。結構な香ばしさを感じますね。こんなに白くて穏やかそうなのに香ばしさを感じるというとても不思議な料理です。
ムハンマラは、唐辛子とクルミのペーストとのこと。本日の挑戦メニューです。しかし、食べると拍子抜けです。この赤い色合いでありながら、そんなに辛くないのです。クルミの旨みの中に適度な唐辛子の辛さで常識的な美味しさです。もっと、暴力的な辛さを想像していましたが、意外に普通でした。
■アラビアナン(350円)
前菜盛り合わせには、薄いナンのジャバティが付きますが、それと比較するためにアラビアナンも注文です。
見た目どおり、アラビアナンのほうがふんわりですね。全体的にはジャバティのほうが香ばしさを感じますが、アラビアナンの軽く焦げ目のついた辺縁のあたりのほうが香ばしいです。
純粋に美味しさから言えばアラビアナンですが、ジャバティのほうが希少性があって気分が盛り上がりますね。
■ゼノビアホンモス(700円)
アラビアの豆ペーストの『ホンモス』のスペシャル版です。やはり、これを食べないとこのお店に来た気がしません。
前回のレビューで青唐辛子が入っていることをお伝えしましたが、新たな発見がありました。緑の小さな葉っぱはパセリとのことです。
豆の旨みにピリリと効く青唐辛子、それにパセリやオリーブオイルによりこの味わいは完成されますね。枝豆でビールを飲む感覚でお酒がいただけます。
■ファットーシュ(1,400円)
ザクロのサラダです。レタス・オリーブ・トマトとともにザクロの実が入ったサラダです。揚げた春巻きの皮のようなものが入りますね。
味わいの中で特徴的なのは、皿の縁に塗られたソースです。これは、ザクロを煮詰めて作ったソースで、熟成感のある甘さが特徴です。具もザクロ、ソースもザクロとザクロ尽くしの珍しいサラダですね。
■ローストチキン・フルサイズ(4,000円)
インスタ映えするような、どーんと大きな1羽で出てくるのを期待していたのですが、食べやすいよう半羽にカットして、2皿に盛られて出てきました。残念です。
雛鶏サイズなので半羽で1人前ぐらいの感じです。手羽の部分は香ばしく、モモ肉は柔らかく、部位による味や食感の違いを楽しめますね。
また、付け合わせのインディカ米のピラフは、今日もしっとりしていて美味しいです。白いソースはニンニク風味です。
■シシタウグ(1,800円)
こちらは、定番のチキンの串焼きです。チキンティッカのアラビア版という感じでしょうか?
ローストチキンもそうですが、インドの文化圏よりもスパイスが控えめなので、素材の味を強く感じることができます。かといって、シンプル過ぎず、また、日本から離れているので同じ素材でも日本のものとは異なるものも多く、実におもしろいですね。
●エフェス・ゴールデン(600円)
前回はモルツをいただいたトルコのビールのエフェスですが、ゴールデンは青い瓶のビールです。
いわゆるピルスナータイプですが、この色の瓶のビールは総じて軽いですね。
●タイペ・アンバー(900円)
前回はダークをいただいた、パレスチナのビールのタイペです。今回は3種飲み比べしてみました。
ダークは、相当濃く、ギネスに近い感じ。アンバーは程よく濃く、ハーフ&ハーフぐらいの感じです。ゴールデンがビールそのものの味がわかるかと思いますが、若干の酸味を感じました。
タイペは、珍しいイスラム圏のビールの中でも美味しいですね。ただし、値段も張ります。
日本で飲めるお店は少ないので、見つけたらチャレンジしたいビールでしょう。
●モロッコワイン・赤(4,000円)
『レ・トロワ・ドメーヌ ゲロワンヌ』という銘柄です。
モロッコにもワイン法があるのかA.O.Cです。
なで肩のボトルが示すようにバランスのよい口当たりですが、ややソフトな印象です。
しっかりとしたワインを普段から飲んでいる人には物足りないかもしれませんね。
●チュネジアワイン・赤(4,000円)
『マゴン』という銘柄です。こちらもA.O.Cですね。
チュニジアは、地中海を挟んでイタリアの向かいにある国です。それもあってか、味わいは、キャンティのような感じで、程よい重厚感の中に酸があります。
●菊茶(500円)
菊の花のお茶ですが、ジャスミン茶がベースになっているので、菊の香りでむせかえるっていうほどではありません。イスラム教徒はお酒を飲まないので実は、意外にお茶文化が発達していておもしろいですね。
●マッタ茶(500円)
アラビア特有のお茶です。マテ茶ですが、葉っぱもグラスに入っていて、金属製のストローでいただきます。ストローの下部には茶こしが付いているので茶葉は口には入らないという仕組みです。
お店の他のお客さんに日本人はいませんでした。外国人のお客さんは、水たばこを楽しんでいます。値段は1台2,500円とのこと。次回はこれも試してみたいと思いました。
アラビア料理は、日本人にあまりなじみがないので非常におもしろいですね。イスラム圏でもトルコ料理あたりは都内でも多く見かけますが、ここまで本格的なアラビア料理のお店は珍しいですね。
興味のある方にはおすすめしたいお店です。
2017/12/11 更新
2017/10 訪問
日本一美味しいホンモスが食べられる本物のアラビア料理店
広尾にあるアラビア料理店です。
『アラビア料理』と国名ではなく、地域の名前でざっくりと表現したのは、私の知識では正確に説明できないからです。また、日本人の多くは、このあたりの国についての知識に乏しいということもあります。
お店の公式サイトによると、シリア人シェフによる本格アラビア料理店とのこと。屋号のゼノビアとは、シリアに栄えたパルミラ王国の女王の名前です。
個人的見解ですが、「シリアをメインとしたアラビア料理店」が正確な表現でしょう。
お店は、広尾散歩通り(広尾商店街)の飲食店が多く入るビルの地下1階にあります。
店内は、「アラジンと魔法のランプ」のランプ的な金属製のランプが並び、照明も同じくアラビア感のランタンになっており、雰囲気はバッチリですね。
テーブル席主体ですが、奥に個室があり、こちらは絨毯敷きな感じでした。(正確に確認してません)
お店の方は、全員が外国の方です。日本語は通じますが、固有名詞を現地語読みするのとカタカナ表記した場合に差があるので、コミュニケーションにはやや難がありますね。メニューを指差しながら、注文するなどちょっとした配慮で問題なく利用できるので臆する必要はありません。
店長さんらしき男性は、日本語が堪能です。
メニューは、見慣れぬ料理もあれば、羊肉や豆料理などで、周辺国と似た文化の料理もあり、興味をそそりますね。もちろん、ハラールです。
飲み物には、お酒があります。そして、意外に豊富です。
ビールは、パレスチナ、レバノン、モロッコ、チュニジアとイスラム教国の産地のものが並びます。1本600円〜900円と値は張りますが、他ではみられないラインナップです。
いただいたのは、
■ゼノビアホンモス(700円)
ホンモスとは、ひよこ豆のペーストです。周辺国ではフムスと呼ばれることもあります。
ゼノビアはお店の屋号なので、お店の屋号を冠したホンモスですね。ということで、メニューの説明にはスペシャルホンモスとあります。
アラビア料理の定番中の定番なので頼みましたが、正直、今までは味気ない豆ペーストの印象で苦手でした。
しかし、こちらのものは、青唐辛子(おそらく、生ではなく、塩漬けか酢漬けにし、非加熱で加工したもの)を加えてあります。そのため、豆ペーストに軽い風味と辛さが加わりますね。また、オリーブオイルもたっぷりかけてあり、その風味もあって、シンプルだけど実に美味しいです。滑らかな豆腐ペーストという感じで、枝豆でビールを飲む感覚で、ホンモスでビールが飲めますね。
豆が好きな人には絶対に食べていただきたいメニューです。
■ジャバティ(250円)
薄焼きの円形のナンです。インドではチャパティと呼ばれるものですね。
インドから西アジアまでは結構な距離がありますが、文化的に近いものを感じるときもあり、実に興味深いです。
味はまさにチャパティで、ホンモスを塗っていただきました。
■ヤレンジ(900円)
前菜の中でも、最も興味をひくメニューですね。
ぶどうの葉の中にパセリ、トマト、米などか入ったものとの説明があります。ぶどうの葉が食用になるとは驚きです。
100円ライターぐらいのサイズの葉は、何かに漬けてしっとりしている感じです。
お店のフェイスブックを見ると大量に仕込んでいる写真が掲載されていました。
味は、クセの無い葉物野菜を酢漬けにした感じです。酸味は強すぎず、ピクルスが好きな人には美味しいでしょう。
携帯できる保存食の野菜なんだと推察しています。
■ミックスケバブ(3,200円)
シシカバブ、シシタウグ、ラムチョップの3点盛りとのこと。2人でシェアするのにちょうどいい量です。
シシカバブは、インド・ネパールではシークケバブと呼ばれる羊肉の串焼きです。ストレートに肉の味を感じられます。スパイスやつなぎは少ないようですね。
シシタウグは、シシウタークとも呼ばれる鶏肉の串焼きです。こちらもシシカバブと同じく、あまり強い味付けはせず、肉の味を楽しめるように作ってあります。
ラムチョップも塩焼きですね。スパイスを多用するインドに対し、アラビアでは素材の味を重視するようです。
付け合わせにインディカ米のピラフとジャバティも付きます。このインディカ米は1粒が非常に長くショートパスタみたいです。また、そう感じさせる質感がありますね。パサパサではなく、しっとりとした仕上がりです。
■シャクリーヤ(1,800円)
肉とジャガイモのヨーグルト煮です。バターライスが付きますが、2段重ねの焼き物の器で提供されるあたりがアラビア感がありますね。
上の段はこのヨーグルト煮、下の段はバターライスです。
肉は羊肉で、大きなジャガイモがゴロゴロと入ります。汁はサラサラで、ヨーグルト由来の酸味があります。甘さは無く、スッキリとした印象の煮込みですね。
シリアの家庭料理とのことで、別々に食べてもよし、バターライスにかけてもいいとのこと。
かけて食べると、お茶漬けのような食感で飲んだ後にもスルッと入りますね。
●タイベ・ダーク(900円)
パレスチナ産のビールで、ゴールデン、アンバー、ダークの3種類がありました。都内でも扱うお店が少ない上に3種揃うのは貴重です。
タイベとは、アラビア語で「美味しい」の意味、聖地パレスチナで唯一のビール醸造所とのこと。
1994年創業の醸造所で、歴史は浅いようですが、ビールとしての味わいはなかなかで、ビール党にも納得してもらえる濃厚な黒ビールでした。
●アルマザ(700円)
レバノン産のビールです。
アルマザとは、アラビア語で「ダイアモンド」の意味で、ラベルにもダイアモンドが描かれています。
ピルスナータイプの軽いビールです。世界中どこの国のビールでも、この色の瓶のビールは軽いですね。
●カサブランカ(700円)
モロッコ産のビールです。
カサブランカは、北アフリカの都市の名前です。
瓶の色は、褐色ですが、味は、緑色の瓶のビールな感じで軽いです。
●セルチア(600円)
チュニジア産のビールです。
イスラム教国のビールを飲んで、地中海沿岸をひと回りしてしまいそうな勢いですが、この辺りから味覚があいまいです。緑色の瓶のビールな感じの軽さがありました。
●エフィス・モルツ(600円)
トルコ産のビールです。
こちらは、ゴールデンとモルツの2種類があります。同じイスラム教国でも、ヨーロッパの文化が色濃く伝播しているところのほうがお酒が充実していますね。モルツをいただきましたが、青瓶のビールよりも麦芽が濃い印象で、日本人向きなイメージですね。
●セドラティン(700円)
ハーブ&スパイスリキュールとのこと。チュニジア産で40度あります。
香りは、ストレートにアルコールです。ヤバいヤツです。
味はイタリアのヴェルモットのアルコール度数を上げたような味わいですね。
●レバノンワイン(5,000円)
メニューには、ざっくりと「レバノンワイン」と書かれていますが、「シャトー・クサラ レゼルヴ・デュ・クヴァン」という銘柄です。
後日調べると、シラー40%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%、カベルネ・フラン30%。フレンチオークで12ヶ月間熟成とのこと。
確かに飲んだ瞬間は、ボルドーっぽい感じの重厚な美味しさがありました。香りからフランスの品種かな?とは思いましたが、すべてがフランスの品種でしたね。
レバノンは、紀元前からワインが作られ、地中海沿岸の都市に輸出されていたらしく、歴史はあります。それを考慮すれば、レバノンのワインは決して珍しいものではありませんね。土着のブドウ品種だったらもっと楽しかったかもしれません。
食後にはサービスでお菓子とミント茶が出ました。こういう点も本格的ですね。イスラム教徒の嗜好品というと、水たばことミント茶のイメージがあるので、これがいただけると最後まで外国気分です。
アラビア料理というもの自体が、世界中の美味しい料理があつまる東京でも珍しい存在ですから、満喫できるこちらのお店は貴重でしょう。また、種類豊富な珍しい瓶のビール数々は、ビール好きにもたまらないお店でしょう。
値段は、ちょっと高めですが、広尾なので周辺の飲食店の相場を勘案すればさほどでもありません。
興味のある人にはおすすめしたいお店ですね。
2017/11/10 更新
広尾散歩通りにあるシリアをメインとしたアラビア料理のお店です。
お店の雰囲気も料理も本格派のお店で、本物のアラビア料理が楽しめます。
今回の訪問で3回目です。お店の方ともすっかり顔なじみになりましたし、訪問の度にアラビア料理の知識が増えていく気がします。
珍しいお店なので、気になる方は以前のレビューも読んでいただけるとありがたいです。
いただいたのは、
■タッブーラ(1,500円)
パセリのサラダです。
細かく刻んだパセリのサラダです。横にトマトを細かく刻んだものも添えられていて、これがネギトロみたいに見えます。
それ以外にレモンが2カット添えられています。
食べると、サラダはパセリ以外にも何か混ざっているようですが、ほぼ、パセリの味です。しかし、一般的なパセリよりも香りがマイルドで食べやすいですね。
丁寧に観察しても葉が縮れておらず、イタリアンパセリに近い感じかと思います。
味付けは、ソフトな酸味と塩胡椒でしょう。この酸味ですが何かのビネガーかと思いましたが、レモン汁とのこと。更に添えられているレモンで酸味をプラスして、酸っぱくして食べるのが本場流とのことです。
通を気取るなら、添えてあるレモンもしっかりと絞って使いたいですね。
■ゼノビアホンモス(700円)
何度も食べているとその日の気分によって微妙に違うようで、今日のホンモスはキュウリの飾りがついています。
味のほうは、豆の旨みにピリリと効く青唐辛子とパセリとオリーブオイルの風味は完成された味わいです。
やはり、これは食べるべき1品ですね。
■ジャバティ(250円)
ゼノビアホンモスに合わせるべき、不発酵のパンのようなものです。
■コッパ(900円)
ひき肉とナッツのコロッケとのこと。
ひき肉にはマトンが使われているようで独特の風味がします。それに細かく砕いたナッツが入ります。ピーナッツほどの硬さが無いので、カシューナッツかピスタチオかそのあたりでしょう。
コロッケと説明されていますが、衣が無く、丸めて素揚げにした感じです。素材の味をはっきりと感じる料理ですね。
ソースらしき、クリーム色のものが添えてありますが、あまり個性の無い不思議な味です。
■ファッタバーテンジャン(1,600円)
ナスとマトンのトマトソースという説明ですが、マトンのお肉が見えません。入っているもののほとんどがナスですね。しかし、食べるとマトンの風味が全体に広がっているという、不思議な食べ物です。
ナスをマトンのダシ汁でのばしたトマトソースで煮たという感じの料理です。マトンもナスもアラビア料理の定番素材なので、やや地味なメインですが定番アラビア料理でしょう。
■サマカマシウィーヤ(3,000円)
丸々1尾の魚を焼き、トマトソースを塗り付けて仕上げたものです。
豪華な料理なようで人参を使った飾りも添えられています。ちょうど魚の頭のところに人参があって、まるで伊勢海老みたいに見えますね。日本人にもウケそうな豪華な見た目です。
魚は淡水魚かと思いますが、白身のふっくらとしたものです。鯛かスズキあたりをイメージしてもらえるといいでしょう。
トマトソースですが、トマトのフレッシュさはなく、何か他のものも加えてありますが、判別できません。
カレーのような風味を感じますが、辛いわけではありません。
何かエキゾチックな味のする魚料理という感じです。
これもレモンスライスが添えてあるので、酸味が欲しいときは使いましょう。
●ギネス(600円)
コストパフォーマンスを考えると、珍しい中東系のビールよりもギネスのほうが安くて美味しいですね。店にも慣れてきたのでコストパフォーマンス重視でのんでみました。
●ボッカ(600円)
チュニジア産のいちじくのお酒とのこと。36度あります。
グラスは、なかなかのサイズのショットグラスですが、下のほうのガラスが厚く量は、そんなに入りません。お冷も一緒に提供してくれて良心的です。
いちじくの風味を感じるとまでは言えませんが、こういう蒸留酒特有の華やかな香りがします。
思ったよりも強くなく、飲めますね。
食べる度に新しい発見があって、実に興味深いアラビア料理です。
インドとヨーロッパの地中海沿岸あたりに近いので文化的には、そのあたりに近いものもありますが、インドほどスパイシーでなく、地中海ほどオリーブオイルとトマトが中心にならない料理ですね。
日本では珍しいアラビア料理店です。広尾でおすすめのお店ですね。