2回
2019/08 訪問
またまた進化。今回の鮎と甘鯛の料理は素晴らしすぎて言葉を失う!
昨年は予約が取れず食べることが出来ず残念な思いをしたので、今年は1ヶ月以上前から予約。
シェフと奥様2人で切り盛りしているこの店のコース料理は抜群に美味しい。
予約時に何回めの訪問かとメインが何だったかを伝えておくと対応して頂けるので、キチンと対応した方が良い。
今回は何を出してくれるのだろうと、ワクワクしながら始まったコースは、
・前菜:枝豆ととまどの冷製ジュレ
・前菜:鮎のトウモロコシの衣を付けたフリッター
・前菜:キュウリで巻いたハマチの冷製前菜
・フォアグラとトウモロコシの温かいスープ
・魚料理:甘鯛の鱗焼き料理
・グラニテ
・肉料理:エゾジカのソテー
・デザート:マンゴープリン
・プチフルーツ(桃、巨峰)
・コーヒー
ここの料理はコースの中にビックリさせられる料理が何品か含まれる。
今回では無いが、豚肉の数時間低温で火を入れたローストは、大袈裟ではなく人生最高の豚肉料理と思っている。
さて今回のコースで紹介したい料理は2品。
「鮎のトウモロコシの衣を付けたフリッター」と「甘鯛の鱗焼き料理」である。
最初の鮎の料理だが、皿を出された段階では鮎は衣に覆われて姿を見ることは出来ない。衣は普通の衣ではない。どうやればかくも鮮やかなツンツン衣に揚げることが出来るのかと不思議になる様な姿。トウモロコシだそうだが衣の食感、味の中に隠れた鮎の味が素晴らしい。鮎といえば塩焼き、京都では山椒をまぶした甘露煮が好きだが、塩焼きを否定するものではないが、デリケートな身をほぐしながら食べる時、マンネリ化した食感と味で「季節を感じる」だけになりがち。良質の苔を食べた天然鮎を食べると考え方が変わると言われたことがあるが未経験。このフライ(フリッター)はこの料理方法であるが故の美味しさ。揚油、トウモロコシの衣(モジャモジャと繊細なツンツン)で食感がプラス、そして中身の鮎は丸ごと。良質の組み合わせであるが故の味のコラボレーション。素晴らしい。ナス、ズッキーニ、ベイクドトマトとの組み合わせとベースソースとアクセントソースが組み合わされて、「前菜」を超越した一品料理となっている。
2つ目のメインの魚の位置付けとなっている「甘鯛の鱗焼き料理(マツカサポワレでは何かおかしい)」。無骨なネーミングは私が勝手に付けたものだが、夏の魚、高級魚。「甘鯛の鱗仕立て」としたら整うかもしれない。「和食」として何回か食べたことがあるがフレンチとしての料理は初めて。皿の盛り付けの美しさ。別に奇をてらっている訳でも高級感を狙っている訳でも無く、ホッキ貝を組み合わせて、ベースソースは甘鯛の身とホッキ貝で使おうと決めてナイフを入れる。
甘鯛の鱗が弾け、甘鯛のしっとりとした身質を感じながら切り分け、フォークで口に運ぶ。甘鯛って鱗と一緒に食べると何でこんなに美味しいのか!と毎回思う。そして今回はフレンチだぞと言い聞かせて慎重に味を探る。和風・洋風の調理、関係ないし、フランス人が甘鯛、しかも鱗を食べるかどうか知らないが、期待通り、イヤ、想像以上の美味さ。あまりの凄さにメンバーは黙り込んでしまった。
そしてホッキ貝との食感の対比が良い。食べ終わることが惜しまれる皿なのである。
口直しとデザートを除き6品のコース。どれ一つ手抜きを感じない計算されたもの。
軽井沢の名店エルミタージュで修行されたご主人の腕は益々進化しているように感じる。
すべてお一人で作られており、6品の上に凝ったデザートを求めるのは酷。しかし、最近当たり前になってしまったデザートの2部構成はしっかり守られて、大満足の軽井沢ディナー。
来年も絶対に行く事を決めた。
2019/09/14 更新
2年ぶりの訪問。
今回も1ヶ月前の予約。
電話予約の際、コースの価格が8,000円から15,000円と告げられ少々驚いたが、この店のレベルなら8,000円が破格と思っていたので、気にもならなかった。
さて当日の夜。
実は少し不安と言うか心配した事があった。それは元々高いレベルの料理だった8,000円のコースと厨房の体制(シェフ1人)からのUP分を一皿の量を減らして皿の数を増やす事も難しいので、高級食材に走るのでは無いか、と言う懸念。
結論を先に述べると、この懸念は当たった。
キャビア、ウニ、トリュフ、鮑、黒毛和牛と高級食材のオンパレード。
しかし、後述するが、見せかけの高級食材使用とは無縁、しっかりと組み立てられた一連のコースは素晴らしいもの、料理の質は以前と微塵も変わらぬ素晴らしいものだった。
コースを紹介すると
・キャビアの前菜
・ウニとムースの前菜
・鮎と黒トリュフ
・夏野菜のサラダ
・甘鯛、鮑、ホタテのフライ
・グラニテ
・黒毛和牛のロースト
・桃とマンゴーのデザート
・トリュフチョコレート
・飲み物(コーヒー、紅茶、ハーブティー)
説明はあったが記憶していないので、大体こんな感じ。
個人的にキャビアをまともに頂くのは2回目。「まとも」と言う意味は、薄っぺらい罐に詰められたキャビアをスプーンで掬ってクラッカーやプリニ(蕎麦粉のパンケーキ)に乗せて薬味で頂く食べ方。この時はデパートでピンキリの中の下(それでも十分高価)を買ってしまい大失敗。
今回はポーランド産のキャビアとの事で3人で1缶。プリニに乗せて好みでサワークリーム、炒り卵、玉ねぎの微塵切りを薬味で使って頂く本格的なもの。私は事実上生まれて初めての本格的キャビアと言う事で大感激。プリニも美味いしキャビアのプチプチ感、しつこく無く、それでいて独特の濃厚感のある味を頭に刻みながら楽しむ。
次はシャンパングラスのムースの上にこれでもか、と盛られた生ウニの前菜。これはウニの味と香りが際立った上に、ムースのマイルド感が絶妙に合う。旨いの一言。
続いて小振りの鮎1匹丸ごと春巻きの皮で包み油で軽く揚げた料理に夏の黒トリュフをたっぷりとまぶした料理。これは正直な所、トリュフが鮎に会うかと言う話になる。鮎をこの様な調理法で頂くのは初めて。もちろん鮎は丸ごと頂く訳だが、トリュフの香りを生かすために、ソースが抑え気味になっている。おそらく、トリュフの香りを生かそうと言う狙いだと思うが、ここに大きなトリュフのスライスが5枚。ここまで来ると、香りを楽しむと言うより、しっかり添えて楽しむレベル。ここで一例として温められた卵の黄身とトリュフの組み合わせを挙げると、この組み合わせの味と香りを否定する人は少ないと思う。では鮎とはどうか?もし鮎の塩焼きならばどうだろう?
個人的な意見だが、かなり親和性が高くなった調理法であると思う。鮎を春巻の皮で包み揚げた事で鮎の身の質が変わり、丸ごと食べると、内臓の苦味が塩焼きとは別の次元で美味しい。そこに夏トリュフである。頭の固定概念がこの組合せを受け入れていない気がする。
一つ飛ばして魚の料理。
この店の魚の調理法はいつも素晴らしい。基本はシンプルで、カリッとして欲しいところはカリッ。ふっくらして欲しいところはふっくら。しっとりして欲しいところしっとり。
ソースもそれぞれ3種類整えられている。
甘鯛の鱗の美味しい事、ナイフを入れ、鱗と共にソースをつけた身の部分を味わうと、鱗のパリパリした食感から上品な、そして何と表現すれば良いのか言葉に困るが、引き込まれる様な旨味が溢れる。この食感・味との対比で鮑が引き立つ。ソースの色から肝をベースに作られていると推測される。お陰様で、65歳を過ぎてから、まともな鮑を頂く様になったが、この鮑は「鮑」が美味しいのでは無く「料理」が美味しい。絶妙の歯応え、湧き上がる鮑の味と香り。
甘鯛と鮑に圧倒されて、もう1つのホタテは何も覚えていない。
グラニテを挟んで肉料理。
素晴らしい黒毛和牛のロースト。正直、又、ステーキ?と思って口に入れたが、これも牛が美味しいのでは無く「料理」が美味しいのだ。個人的な見解を述べさせて頂くと、豚は肉の味の差が明確、特に脂身の味が豚の種別と飼育方法で圧倒的な差が出るが、牛は部位の違いによる肉質と熟成かどうか分からないが、A5ランクと銘打っても不思議な食感、焼き加減の影響も受けやすいのか全く頂けないローストに出会う事が多い。それなりに美味しくはあるので、おかしなことを言い出すやつだ、と思って頂いて構わないが、牛のローストってこうなんだよネと言うツボにドンピシャハマる。
前回の投稿で述べたが、ここで頂いた低温ローストの豚のローストを出して欲しいとお願いしても、良い肉を仕入れる事ができないと断られることから、私には分からない肉質、熟成を見極めた素材を料理されているのであろう。その素材を料理の腕で仕上げて出される一皿。素晴らしい。
コースは結構なボリュームだったが、この美味しさには敵わない。メンバーには90歳過ぎもいたのだが、もう食べられないと言いながら、肉はしっかりと完食した。
今回の訪問で改めて気付いた事は、今の15,000越えのコースはどうしても高級素材を入れて納得感を得ようとする。食べる側に立つと、何か変わり映えがしない料理として捉えがちになるが、料理人の腕が正に試される時代に入ったのだな、という事。
今回、軽井沢で洋食系を3回頂いたが、間違いなくエフアの圧勝である。