3回
2021/07 訪問
フランス料理らしいフランス料理
広島和牛「比婆牛」と、東広島ブランド地鶏「東広島こい地鶏」を味わうコースをいただきました。
タイトルに「フランス料理らしいフランス料理」と書きましたが、
下記本文を読んで頂ければ、解かる人には伝わるのでは、と思っています。
2020年代の現在、広島そして日本においても今や貴重な「フランス料理らしいフランス料理」が味わえる、稀有なレストランだと思っています。
●比婆牛ラムシンのタルタル 東広島こい地鶏の雄鶏白子のタルトレット
エピュレさんの定番アミューズのミニタルトです。
極限まで薄く延ばされたタルトは、口に入れると驚きの軽さと香ばしさ!
鶏白子はブイヨンドレギュームで優しくポッシェされて、フンワフワ!
こんなに小さいのに、ベーコンと炒めたシュークルートと共にオンザタルトされてます。
タルタルは今の日本では生肉御法度なので、低温調理されたもの。
本場フランスの流儀に従って、うずらの黄身が鎮座しています。上からパルメザン。
わずか2cmにも満たない小さなアミューズなのに、きちんと「料理」として成立していて、
ミニマムじゃなくて「ミニチュア」なのです。
すごいねー。どれだけ手間がかかってるんだ!最初からのけぞる。
●東広島こい地鶏のカクテル レフォールのソース
レフォールはホースラディッシュの仏語読みです。西洋わさびのことです。
骨付きのモモ肉を、こい地鶏のブイヨンで、優しくポッシェして煮汁を含ます。
ブリュノワーズして添えられた野菜は、大根を茹でたもの。
ブイヨン、生クリーム、レフォールでエスプーマ。上の緑はマイクロパセリ。
地鶏はもちろん美味しいのですが、
このエスプーマが、ル・ココ時代から通っている私にとっては、正にシェフの味!
塩味のピントの決め方などが、すごくこちらのシェフらしいんだよね。
●広島和牛の牛タンキューブ ルクルス・ド・ヴァラシエンヌ
「ルクルス・ド・ヴァラシエンヌ」は、1930年頃のフランス料理らしくて、それを現代風に再現されたものだそうです。
う~む、すごい。
トレフミヤモトさんのクロメスキとか、ステラマリスさんのテット・ド・ヴォー海ガメ風みたいな料理ですな。
フランス料理人として、古典に挑戦する、という意味が込められた一皿だと思いました。
こういう一皿は、ガチのフレンチ好きの人にこそ、届いて欲しいなぁ~。伝わって欲しい!
古典らしく、牛タンをなんと1週間塩漬けするところから始まるそうです。
それを5~6時間もかけて、ゆっくりゆがいて、皮を剥いて冷やしてから、冷燻にかける。
工程がほんまに古典やな~。今の時代だと絶対ない。
同じく、今の時代では、なかなか見かけなくなった(これもめっちゃ手間がかかるので)フォワグラのテリーヌ!と層にしながらテリーヌ型に詰めていくそうです。
合わせるソースも、クラシックの定番の組み合わせで、リンゴのソースとコンポート。
当時は冷蔵庫が一般普及してなかっただろうから、いろんな意味でもっと濃厚な味わいだったんだろうな。
一皿にかかった手間を考えると、パクパクと食べるのが申し訳ない気分になるような一皿でした。
時代に想いを馳せながら、いただきました。
●東広島こい地鶏のコンソメスープ クネルとモモ肉のグリエ
ガチフレンチのお店が「コンソメ」と表記する場合、それは「本物のコンソメ」を意味します。
フォン・ド・ヴォライユじゃあないよ、コンソメだよー!
これに関しては、商品名としてコンソメを普及させた味の素さんの罪咎ですな。
クネルもコンソメも「一羽全部を使い切る」というフランス料理の根源思想に基づいたものでしょう。
そういう意味では、これはスープでありながら、メインディッシュなのです。
本物の上質なコンソメにある「飲むとくちびるがくっつく」スープでした。
●広島和牛テールのヴィエノワーズ アッシパルマンティエ風
ヴィエノワーズは、広く解釈するとグラタン風といいますか、パン粉をかけて香ばしく焼いた~みたいな意味です。
アッシパルマンティエも、ポテトを使ったグラタン~みたいな意味です。
(ちなみに、ここでは日本で言うグラタンの意味で使ってます。広い意味だとグラタンは上から炙るとか表面に焦げ目を付ける、という意味になります)
牛テールは、これまたクラシックな赤ワイン煮込みに仕立ててあり、
赤ワインでマリネしたのちに、熾火で煮込むようにオーブンでじっくり煮込んであるそうです。
モチのロンながら、これは赤ワインを呼ぶ味ですね。
「マリアージュ」とは、まさにこういう料理の為に産まれた言葉です。
●東広島こい地鶏 雌鶏の胸肉のロースト シェリーのソース
さあ、クライマックスです!
シェフ曰く「東広島こい地鶏の雌は、ブレスのプーラルドの雌鶏にも負けていません。広島が誇れる素晴らしい地鶏です!」との事。
なお、東広島こい地鶏は、2021年現在、広島県下で唯一の地鶏となります。
なんと、今まで広島県には地鶏がいなかったのです!(昔は帝釈地鶏があったのですが、残念ながら消滅してしまいました)
その現状に対してチャレンジされたのが、広島大学の「日本鶏資源資源開発プロジェクト研究センター」さん!(なんと、広島大学は、鶏の研究としては、日本で1~2位を争うトップレベルなのです!)
長年の研究成果が実り、やっと2021年に広島県初のJAS認定地鶏として誕生したのが東広島こい地鶏になります。
詳しくはこちらのニュースを読んでください→ https://www.city.higashihiroshima.lg.jp
こい地鶏のローストですが、お皿の上では外されていますが、骨付きで焼き上げたそうです。
イマドキの機械任せの低温調理なんかではなく、フライパンで焼いてはオーブンに入れて、を何度も繰り返して、昔ながらの「職人の勘と経験による火入れ」!キュイジニエですなぁ。
写真から伝わると思いますが、バッチシの火入れ!
香ばしく焼き上げられた皮の旨味と、しっとりレアーで繊細な身の味わいのコラボレーション!
ソースは、こい地鶏のジュとブイヨンに、エシャロット、シェリー、バター。
添えられたハコベが粋なアクセントに。
●比婆牛 ヒレ肉のロースト 比婆牛のジュのソース ソースベアルネーズのニュアンスを添えて
改めて解説しますと、比婆牛は、広島和牛の中でもっとも希少な広島牛となります。
たしか、月に3頭程度しか出荷されないはず。
なので非冷凍フレッシュの比婆牛は、かなり入手が難しいのが現実です。
仕入れ価格も、神戸ビーフと同じくらいします。
おそらく、世間に初めて公開される情報となりますが、
なんと、日本の黒毛和種の黒育第1号は、広島県の比婆牛なのです。
上記写真は、その証拠となる書類。左上に黒育第0001号と記載されています。ここから日本の「黒毛和種」の歴史はスタートしたのです。
ちなみに黒育とは育種の意味で「もっとも保存し育てる最高ランクの種」という意味です。(その下のランクに、黒高(高等)>本原>基本~とランクが続きます。)
詳しくは比婆牛のWikipediaを読んで頂きたいのですが、
↓↓↓
全国和牛登録協会が認定している最古の4大蔓牛は以下の通り。
竹の谷蔓 : 1830年備中阿賀郡で誕生、現在の千屋牛
岩倉蔓 : 1843年備後比婆郡で誕生、現在の比婆牛
周助蔓 : 1845年但馬美方郡で誕生、現在の但馬牛
ト蔵蔓 : 1855年出雲仁多郡で誕生、現在の奥出雲和牛
とあります。
比婆牛は、日本の黒毛和牛のルーツとなる4大蔓牛の1つなのです!
そういった背景を受けて、
フランスの産地呼称制度AOCに倣って、日本で作られた地理的表示保護制度GI。
2019年に、比婆牛は、中四国地方で初めてGI認証された黒毛和種となりました。
参考ニュース
食肉通信 https://www.shokuniku.co.jp/6120
JAニュース https://org.ja-group.jp/challenge/article_post/2290/
GIについて、解かり易く表現すれば、
農林水産省が「この農林水産物は国が保護しないといけない貴重な日本国の財産だ」と認めた農林水産物という事です。
比婆牛は、広島が日本と世界に誇る、生きた財産なのです!!
それが食べられるなんて・・・!
ちなみに「そんな貴重な財産を食うんかい」とツッコミがありそうなので、書いておくと、
ハンガリーの国宝であるマンガリッツァ豚は、絶滅しかけていたのですが、
「食べて応援しようぜ!」ってなったら、ビジネスとして成り立ったので増え出して、絶滅せずに復活できた経緯があります。
絶滅するほど食べるのはもちろんいけませんが、「食べて応援」できるSDGsもあるんですよ。
話がそれましたが、
日本全体で、月にわずか3頭程度しか出荷されない、超希少性のある比婆牛、のヒレステーキ!
こちらのローストは、オーブンのみを用いて、
4~5人前の塊のまま、オーブンに入れては出し、入れては出し、を繰り返して、火入れをされたそうです。
素晴らしい火入れ!
比婆牛の味わいを邪魔しない、ジュのソースに、牛香と相性の良い葱を添えて。(マイクロ葱!)
比婆牛の印象としては、あっさりした水のような牛肉、という印象。
これは、旨味を求めて品種改良を繰り返された現代の黒毛和牛と比較して、昔の牛の味わいを残すからなのかな、と思いました。
前に、天然記念物で日本在来牛の見島牛を食べた時にも、同様の感想を持ったので。
そもそも、見島牛や岩倉蔓比婆牛の時代って、まだ食用として牛が育てられていなかった頃ですからね。(その頃は主に農耕や運搬用)
水のような味わいは、広島県は軟水という地域性も関係するのかな、など、
いろいろと考えを巡らせながら味わいました。楽しかった!!
私としては、「とにかく旨味が強ければ良し!」じゃないと思うし、
「中国山脈がはぐくんだ水のように飲み込める牛肉」というのも、ひとつの食文化としてアリだと思います。
食材の持つ個性をちゃんと評価できる世の中でありたいですね。
●紅八朔のタルト
JA全農ひろしまさんが保有される、広島卵を使用したタルトになります。
JA全農ひろしまさんは、今「3-R」というSDGsに取り組んでらして、鶏に輸入飼料でなく広島県産米を食べさせて育てたりと、カッコイイ取り組みをされているんです! → https://cokecco.zennoh.or.jp/item/
こういう取り組みは、もっと私達広島の消費者がちゃんと知って、評価していきたいですよね!(私達がちゃんと評価してあげないと、SDGsは続かないと思います)
紅八朔のタルトは、インスタ映えする白いトゲトゲは、広島卵で作ったメレンゲ。
その中に、クレームと紅八朔。
手前に添えられているのは、蜂蜜のアイスクリームでした。
さっぱりと濃厚が同居した、食後の満足感を満たしてくれるデザートになっていて、
食べる直前にタルトに絞られたクレーム、クレームにオンされたサクサクメレンゲは、
時間が経つと水分がタルトやメレンゲに移ってしまうので、
まさにレストランでしか食べられない、アシェットデセールでした!
という訳で、
広島県の誇る広島食材と、エピュレさんの渾身の調理が合わさって、
マジで最高のディナー体験でした!
ソムリエさんによるワインペアリングも、もちろん素晴らしかったです!
ただ、ペアリングの感想まで全部書くと、長くなり過ぎるので、ここでは割愛させて頂きました。すみません。
本投稿はブログ記事を転載しています。
↓転載元ブログです。広島グルメが1000軒以上!こちらでは写真などもっとたくさん掲載しています。
ぜひ読んでみてください。→ http://syokuki.com
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2021/07/22 更新
2019/05 訪問
洗練されたストイックなフレンチ
広島に多くのファンを持つフレンチの名店「ルココ」さんが、
広島市南区に移転し、エピュレ(EPURE)さんという名前で再スタートされました。
アミューズはアンチョビのムースと、鶏のリエット
最初からワインがススム逸品です。
お魚料理はサワラのポシェ シャンパーニュソースです。
相変わらずの繊細な火入れに感心します。
ウズラのソテー
小型の鳥って、ウマいんですよ。
この日は他に山バトも出ました。
この日は他に、野菜のムース、フォアグラなど、全部で7皿が出てきました。
ワインはボトルもありますが、グラスで色んな種類を楽しませてくださいますよ。
コース料理のみで完全予約制のお店です。
↓広島食べ歩きブログやってます。広島グルメが900軒以上!こちらでは写真などもっとたくさん掲載しています。
ぜひ読んでみてください。
http://syokuki.com
2022/06/29 更新
正直、今の広島のフランス料理で、No.1はどこか?と聞かれたら、
私は「エピュレさんでしょうね」と答えると思う。(2022年6月現在では)
そのくらい、美味しい。洗練されている。
友達のフーディーが、東京で今話題の「セザン/SÉZANNE」さんも行ってるのだけど、
そのセザンさんに、エピュレさんはお料理で負けていない、とまで言っていた。
自分も先日に、東京や大阪に行って、著名なお店を回ってフレンチを食べてきましたが、それらの著名店と比べても、実際にエピュレさんの方が味もサービスも上だな、と思った。
マジで今イチ推しです。
過去から比べても、今が一番良い気がする。
シェフにお話を伺ってみたら、シェフはもう50代で、60歳で引退するかもしれないから、
あと最後の数年を、悔いが残らないように、毎日全力でやり切るだけです~とおっしゃってて、
その言葉が(当たり前だけれど)口だけじゃなくて、本当に料理に表れていると感じます。
あとは、これは少し個人的に思う事なのだけど、
エピュレさんは、初めて行くなら、誰か既存のお客様に連れてきてもらう方が、より良い結果に巡り合えるような気がする。
これは、シェフがお客様によって差を付けている~という意味では全然なくて(誤解のないようにお願いします)
初めてのお客様は、シェフから見ても、例えば、味の好みとか嗜好が全く解からないので、やり辛い面があるように、感じている。
そこが解からないと、シェフの狙いが外れる事もあるような気がする。凸凹のピースがハマらないというか。(凸=作り手の狙い、凹=食べ手の感性や嗜好)
なので、誰か紹介者なり、既存の常連客さんに連れてきてもらって、その人達に任せてアテンドしてもらうのが、この店の真価を味わい易いような気がしています。
ところで。
今、広島のグルメさん達の間で話題の食材「榊山牛(さかきやまぎゅう)」。
こちらのエピュレさんも、榊山牛の正規取扱店となります。
今、榊山牛正規取扱店を全店巡ってやろう~と思って、少しずつ巡っている最中。
過去に
①ル・ジャルダングルマンさん
②ニコンさん
と食べログに載せてるので、良かったらそちらも見てみてください。
榊山牛ですが、念願の牧場見学に訪れる事ができて、生産者さんから直に話をお聞きする事が出来て、余計にファンになってしまいました。
(榊山牛牧場・精肉加工場の訪問レポート記事は「榊山牛 牧場」でググってみてください。私の書いた記事が出てくると思います。)
ここで、ちょっとだけ、自慢させて欲しい。
エピュレさんの前身時代「ル・ココ」さんを知っている人や、昔のエピュレさんをご存じの方は、こちらのシェフは昔は全く和牛を使われない主義だったのを、ご承知かと思う。
ル・ココ時代を知ってるフーディー友達は、今、シェフが和牛を使われているのを知って、めちゃタマゲたほどで、私も昔のシェフを知ってるので、自分でも驚いているほどだ。
そんで、実は、シェフが和牛を使うようになられたキッカケですが、実は私がキッカケの1つなのです。えへへ。
昔に、広島県が主催した「広島和牛シンポジウム2019」で、私は発表者として登壇したのですが、その時のレポート制作で、ヒアリング対象として、こちらのシェフに感想を求めたり、
また、その後、
「比婆牛と東広島こい地鶏」のレストランイベントをエピュレさんで開催させて頂いたり~
とする内に、(このレストランイベントもググると出てきます、読んでみてね。)
シェフが「それがきっかけで(それだけが理由じゃないけど)広島和牛を使おうかなぁと考えが変わってきました」と言っていただけた事がある。
これは自分にとっても、すごく嬉しい事だったので、ここに書き残しておきたい。
自分記念です。
さて、この日のメニュー。
おまかせコースです。
☆アミューズ3種
・ブーダンノワールとカカオ
・マドレーヌサレ
・ビーツ
☆菊芋(この球状のクリームのムースは、ル・ココ時代を知る人には懐かしい、昔からのシェフの定番スタイルだ。)
☆ズワイガニレムラード
☆榊山牛のミルフィーユ仕立て シャントレル茸のソース
☆アオハタのサフランソース
☆オマール海老ビスクのソース
☆榊山牛サーロインのロースト(肝心のメインだが、食うのに夢中で写真を撮り忘れた。。)
☆チーズ エポワス モンドール
☆リンゴとプラリネのデザートシードルの泡
全部、最高すぎた。とても美味しい。素晴らしかった。
ワインもいろいろいただきました、写真をご参照ください。ゆうて写真撮り忘れたのも、けっこうあって、2本しか撮れてない。。
珍しいのは、ラタフィア 4.5リットルボトル。
日本にまだ数本しか入ってないらしいが、その1本がこちらのお店にある~というのも、
冒頭に書いたように、日本トップクラスの味わいのお店、というのが、解かる人には知られている~という証左でないかと思う。
珍しいので、これはぜひ飲んでみられる事をお薦めする。
ちなみに、食べログのフォロワーさん向けに、あえて説明を書き加えておくと、
なんで大きいサイズが良いか~というと、品質が安定してて間違いが無いから。そういう理由で大きいサイズが作られているのです。
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最後まで読んで下さり、ありがとうございました。
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↓転載元ブログです。広島グルメが1000軒以上!こちらでは写真などもっとたくさん掲載しています。
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