【あべの・天王寺】店主こだわりの蕎麦・3態【二八・十割】

　「とろろそば」（950円）は、やや大きめの器の底にそばつゆとともに蕎麦が横たわり、その上にたっぷりのとろろが覆い被さっています。てっぺんには粉状の海苔と山葵が乗せられていて、いい香りを漂わせています。
　蕎麦は細切りで、風味は弱いものの適度なコシがあり、ツルツルした口当たりが艶やかです。そばつゆは味は控え目ながら出汁が利いていて、蕎麦の風味を邪魔しません。

　とろろはたっぷり盛られていて、もちろん蕎麦との相性も抜群。歯切れのいい蕎麦と、ねっとりとしたとろろによるテクスチャーの対比が心地いい。

　最後は蕎麦湯をいただきます。やや薄目だが香りも風味も良好。もちろんそばつゆを足せば味わいが広がります。

　「辛味大根」（1,350円）は、趣ある陶器の器の上に瑞々しく艶やかに輝く薄緑色の蕎麦が盛られています。別の器には細かく刻まれたネギと、たっぷりの辛味大根がそれぞれ盛られています。
　蕎麦だけを手繰ると、ふくよかな蕎麦の香りが口腔に広がるとともに、ほんのり甘味を感じます。
そばつゆに少し浸してと、鰹節の風味が蕎麦に旨みを与え、リッチな味わいになります。

　今度は辛味大根とともにそばつゆに浸して口に運ぶと、ツーンと鼻腔を突き抜ける辛みとともに、実に爽やかで瑞々しい風味が広がります。
　辛味大根はきめ細やかに下ろされていて、それによってさらに辛味を増しているようです。

　ここの蕎麦湯はポタージュのごとく濃厚。あまりにも爽やかすぎる辛み大根のお蕎麦の後に、ほっこりした蕎麦湯は実に味わい深い。

　「細挽きせいろ」（800円）は、最初は何もつけずにいただいてみると、ツルっとした食感の中にコシも充分。蕎麦の香りも豊かです。
　蕎麦汁は、イノシン酸のうま味が強い風合い。これはよくできています。

　「荒挽き田舎」（800円）は、蕎麦のプチプチした食感とともに香りが上ってくる。実に瑞々しくって爽やかです。

　お蕎麦を堪能した後はお楽しみ、蕎麦湯です。
　ポタージュのように濃厚な蕎麦湯にうま味の強い蕎麦つゆ…この蕎麦湯を飲みたいがために蕎麦屋に足を運んでいると言えば言い過ぎか…