京都・奈良のマイベスト割烹十選

出典:レールモントフさん

京都・奈良のマイベスト割烹十選

四季折々に、寺社仏閣を訪れると共に、リーズナブルな予算でお昼を頂ける、京料理の伝統の味と技を引き継ぐ、素晴らしいお店を探して。

記事作成日:2021/01/04

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このまとめ記事は食べログレビュアーによる2856の口コミを参考にまとめました。

京料理 伝統を受け継ぐ味と技

四季折々の京都の寺社と庭は美しい、その時々に色々な表情で魅せてくれる。そして季節に合わせて様々な特別公開があり、毎月のように新しい発見があって飽きさせない。そんな京都に訪れた際、もう一つの楽しみが京の伝統の味。

一昨年、修学院離宮に訪れた際に、麓の「乃り英」さんで頂いた【鰆と生姜の鼈甲煮】が素晴らしかった、特に三日三晩昆布と煮込んだ生姜の鼈甲煮で鰆の苦みは消え、正に京の伝統の技を感じさせられた。また女将さんから今は無き「乃り泉」さんの料理人としてのこだわりのお話が聞けたことも、とても興味深かった。
また祇園の「丸山」さんに訪れた際は、暖簾を潜ってから既に料理を頂くセレモニーは始まっているかのような素晴らしい造り、そしておもてなし、また【若狭ぐじの兜煮】が生涯忘れられない味になった。この時、来年は京の伝統を受け継ぐ味と技を探訪してみようと思い立ったのです。

ここでは、訪れた素晴らしい割烹料理店を厳選し、季節に沿って十選をご紹介させて頂きます。また、合わせて、「美味いものなし」と言われた京都の隣、奈良も今は変わり、美味しい日本料理を提供する店も増え、こちらも合わせて紹介させて頂ければと思います。

古都の美と一緒に、素晴らしい味と技に触れて頂くきっかけとなれば幸いです。

二月  五感を満たすひと時(祇園)

祇園 末友

暖簾を潜り中へ。中潜りと内玄関はさながら露地庭のよう、長石を配した三和土には打ち水がされ、自然光から徐々に明るさを抑え、灯篭の灯りが映え、蹲踞の八坂の水音のみが響く静寂、心が和み落ち着く瞬間です。

信楽焼の綺麗なお皿に盛り付けられているのは、奥に、「炙り鰆のお造り」、蕪の桜漬けを挟んでいます、しっとりして、ほんのり甘く絶品です。そして左手前が「くもこの白子揚げ」、正に旬の味です、菜種ソースで頂きます。右手前には小さく細い「紅はるか」が一文字に、甘さが控えめできめ細やかな味わいです。正面手前が、「蓮根の揚げ餅」あんぽ柿のソースで頂きます。あっさりしていて実に美味しい。

フルーツのジュレ。キウイ、苺、オレンジ、林檎に金柑のゼリーを掛けています。冷たく、あっさりしていて口当たりも良く、これは本当に美味しい。

◇どのお料理も、厳選してこだわった季節の食材を使い、素材の味そのものを存分に生かすよう工夫を凝らした素晴らしい数々でした。暖簾を潜ったその瞬間からお店を後にして八坂の塔を見ながら歩きだすまで、心が洗われほっこりする、五感を満たすひと時でした。

三月  創業は易く、守勢は難しに挑む(烏丸)

和ごころ 泉

梅の枝が添えられほのかに香り、季節を存分に感じさせる素晴らしい逸品です。お料理は手前から、鰆の幽庵焼き、その右隣りが、ムラサキ花豆と白花豆の甘煮、その上が、丸こんにゃく、海老と花丸胡瓜のお串と、辛し和えした水菜のお浸し。そしてその上が、ちぎり餅の可愛い器に乗ったいかなごの釘煮と、酢味噌和えした赤貝のてっぱいです、最後が、こちらオリジナルの玉子カステラです。

青い模様が入った素敵な椀に入っています。蓋を開けると、生姜の香りが広がります。厚揚げに蕗を乗せて、その上に生姜が添えられています、周りにはのれそれが泳いで、餡が掛けられています。出汁も効いて、しっかりした味わいがするものの、あっさりしていて、餡、のれそれ、生姜、蕗と非常にバランス良く何とも言えない味わいです。

大皿に驚くほど細い錦糸玉子のちらし寿司です。

◇早春の季節と桃の節句を感じさせてくれる素材とお料理の数々でした、どれも上品で優しい出汁が効いていて、それでいて素材の旬の味わいがしっかり出ているお料理ばかりでした。「創業は易く、守成は難し」と故事は言います、創業は偉大なことですが、それ以上に継続することは並大抵ではないと、しかしながら、敢えてこの地を選んで、師匠の思いを受け継ぎ、和の心を伝えたいという気迫を、感じずにはいられない素晴らしいお料理でした。

五月 最高のハーモニーを奏でる至高の馳走(祇園)

味 ふくしま

左上から、もずく酢、出汁巻玉子、そして中段左が生姜のご飯、その横が、鱒の木の芽焼き、よもぎ麩の味噌田楽、トコブシ、鰻の八幡巻き、琵琶湖で採れたホンモロコの南蛮漬け、胡瓜で巻いた鯛の錦糸巻き、甘く炊いた丸十(薩摩芋)、その前は、蛸の柔らか煮、鯛の子、左に、香の物の昆布と大根です。
どれもこの季節の旬のものがギュっと詰め込まれた宝石箱のような素晴らしい逸品です。

トロトロのお茄子で、絹さやが添えらています。お椀の蓋を開けると削りたての鮪節の香りがサッと入って来て、茄子の上で踊っているではありませんか。茄子はまるで揚げ茄子の外側が無くてお豆腐のように柔らかく、脂の乗った出汁とよく合います。今日最高の逸品です。

マンゴと苺、どちらも芳醇で甘く、シンプルですが、それが反って美味しい。

◇どのお料理も本当にバランスがいい、手間暇を掛けて下ごしらえをし、この季節ならではの旬のものを、今一番美味しい食べ方で食べて頂くという「おもてなしの心」を存分に感じさせて頂きました。香り、見た目の美しさ、味わい、どれも素晴らしく、最高のハーモニーを奏でる至高の馳走の数々でした。

六月  温故知新(東山)

祇園 にし

丸桶に一面氷を張って、赤、青、金色と透明の5つのガラスの器に入ったお料理が、まるで金魚鉢で金魚が泳ぎ回っているかのよう。季節感、清涼感たっぷりの素晴らしい作品に仕上がっている。

青いガラスの器にとうもろこしのムース、赤いガラスの器が能登の絹もずく酢、その前が蛸の柔らか煮と丸十のレモン味、さざえのガラスの器には無花果とささ身の胡麻和え、そしてその右後ろが極細素麺に塩トマトのみぞれかけ。

鮎と白だつの吉野煮。白だつが沢山入っていて、葛でまったりとして、生姜が効いた出汁と良く絡む。琵琶湖で採れた鮎の子も柔らかく、骨を全く感じさせない、香ばしく非常に味わい深い。揚げた蓼の葉も変わった食感を生み出していて、今日最高の逸品。

宮崎マンゴーとプリン。パフェのようなグラスに入ったプリンは、ムースのような感じ、マンゴーが芳醇でとても美味しい。

◇京料理本来の手間暇を掛けた繊細さと素材の良さを引き出した料理はもちろん、ところどころにフレンチの要素を取り込んだ斬新な味付けと盛り付け、現代人の好みが良く反映されている。正にボルドーとのマリアージュも可能にする洗練された繊細な料理だ、「故きを温ね新しきを知る」、京料理を革新して行く新進のエースの出現を感じた。

七月 加えるのではなく、素材の良さを引き出す (木屋町)

日本料理 とくを

青いストライプが入った涼しげなガラス鉢に、二色の魚そうめんに温泉卵と胡瓜を添えた一品。祇園祭りのこの時期は、鱧と魚そうめんを頂くのが京の風習らしい。

銀鱈の西京焼きとよもぎ麩の味噌焼き、そして薬味にセロリを甘辛く煮詰めたものを添えてある。銀鱈は柔らかく、味は濃すぎず、まさに素材の味を生かし切った今日一番の逸品、実に美味しい。

たん熊ゆずりの小さな丸鍋は、鱧の柳川風鍋。鱧のおだしがよく染み、出汁が柔らかく、山椒も効いて風味を増す。牛蒡は実に細く上品な味を演出している。

◇八寸のような目を楽します派手さこそ無いが、どの料理にも共通するのは、出汁が柔らかく優しい、どれも飲み干してしまう。聞けば、上質の昆布を贅沢に使い、煮出さず長時間水に浸けて出汁を取るこだわり。何かを加えるのではなく、どうすれば素材の良さを引き出せるかを突き詰めた今が旬の料理ばかり、優しい上品な味が自然と滲み出ていた。

八月  瀬戸内 x シャンパーニュ(清水五条)

東山 吉寿

左上の器には搾菜を細かく刻んで鮎の南蛮漬けにトッピングした一品とトコブシの柔らか煮。
搾菜が鮎の南蛮漬けを食べ易くしています、トコブシはかなり大きいサイズです。
そして鬼灯を器に見立てた鮎の白子と飛魚の子の和え物。生臭さもなく美味しく仕上げています。
季節を感じさせてくれる美しい一品。

銀の器に入った穴子の真薯。穴子の食感が残るようにしながらも、食べ易くするために油で揚げて出汁で煮る一手間を加えたオランダ真薯にし、オクラを乗せてスダチで香りづけをしていて、薄すぎない良い出汁に仕上がっている秀逸な一品。

テーマのシャンパーニュとのマリアージュです。頂いたのは、シャルル・エドシックNVです、シャンパンと名乗るだけあってやはり美味しい。

◇こちらはお店のご主人が、カウンター越しに目の前で必ずお料理に一手間加え、取り分けをし、解説をしてくれるスタイルの演出型のお店でした。

瀬戸内の旬の新鮮な山海物を、素晴らしい演出と美しい盛り付け、お料理の香り、そして繊細で優しい京ならではの味わいを存分に楽しませて頂きました。

九月 名残、旬、走りと、季節を表現する(祇園)

祇園 さゝ木

杉の八寸(24cm)の角盆に葛の葉が二枚引かれ、右奥にかぼすを器にして、萩の花に見立てて、海老や豆をムース仕立てに色鮮やかで爽やかな一品、かぼすの蓋を絞って酸味を効かせて頂く粋な計らい。真ん中に茗荷を添えた鯖寿司、その右下が南京の煮物と里芋の利休揚げ。そして、左手前にほうれん草と胡桃の白和え。秋の七草の葛や萩見立てが秋を感じさせてくれる。

祇園 さゝ木

銀のトレーに色とりどりの五種のデザート、まるでラッフルズホテルのハイティーを連想させる。綺麗なグラスに梨、メロン、葡萄が入って無花果のジュレを掛けた一品。二品目はオレンジのシャーベット。小さなガラスの器に入ったパンナコッタに紅茶のゼリー掛けが三品目。四品目は無花果のフラン。最後がどら焼きの皮に栗餡とアーモンドをキャラメル仕立てにした斬新な一品。どれも上品で繊細、甘すぎず素材を大事にした優しい味。

◇一つ一つのお料理は、味だけでなく、見た目や、そして香り、驚きとインパクトにこだわって趣向を凝らしている。
それでも、ベースに流れるものは、京の伝統、夏が陰り秋を感じる自然の移り変わりに、名残りの鱧や太刀魚、旬の無花果や葛、走りの栗と、自然を尊び、季節の移り変わりを表現している素晴らしい料理でした。

素晴らしいおもてなしと美味しい料理は、幸せな気持ちにさせてくれる(奈良町)

つる由

綺麗な蓮の器に入った、石鯛、烏賊、そして何とくえの炙り。石鯛も新鮮で美味しいがやはりくえの炙りが何とも美味で最高。

「穴子、大根、焼き茄子、海老芋、生麩の炊き合わせ」。穴子は大きく、脂がのって、出汁がよく効いていて絶品、茄子も香ばしく、生麩も出汁が染込んで大変美味しい。

土鍋で炊いた「くえの混ぜご飯」。

◇素晴らしい旬の食材を生かした料理の数々。しかしそれだけではない、随所におしぼりを替えて頂き、お茶も、初めは煎茶、次にほうじ茶、そして番茶?、最後がお薄と料理に合わせて変えてくれる趣向は本当に素晴らしい。

素晴らしいおもてなしと美味しい料理は、本当に人を幸せな気持ちにさせてくれる、母がお腹一杯と言いながらも、出て来る料理を笑顔で美味しい美味しいと箸をつける、周りもいつのまにか料理に感嘆し舌鼓を打ち、笑顔になる。

十月  火を巧みに操る魔術師(京丹後)

魚菜料理 縄屋

栗の渋皮煮と天然きのこの茶碗蒸し。大銀杏茸の香りと栗ならではの甘さ、そこにピリッと黒胡椒が効いて、秋の深山を堪能出来る素敵な一品。

黒米と玉葱を酢ずけにしたソースの上に、焼き太刀魚を乗せ、自家製クレソンを上から散りばめた品。太刀魚が大きく、身が新鮮、皮はパリッと少し香ばしく、中はフワッと柔らかくホクホクで、旨味を閉じ込めている、そして最深部はレアでまた味わい深い。まるで火を巧みに操る魔術師、下の黒米と玉葱のソースにも良く合い、今日一番の最高の逸品。

蓮根餅の抹茶ぜんざい。蓮根餅と言えば和久傳だが、その味をしっかり継承している、弾力があってプリプリ、抹茶は濃く、餡子と良く合う。

◇厳選された旬の素材はもちろんのこと、弥栄の土地、野山、網野の漁港、海が感じられ、料理人としてだけでなく、生産者としての想いや拘りも料理や器にこもっている。素朴な味、素材本来の味、想像していた京料理とは違った、もちろん、京譲りの炊き合わせや水菓子などもありながら、窯で火を巧みに操りながら絶妙な焼き加減はこちらの真骨頂。縄屋ワールドを堪能させて頂いた。

十一月  秋の宝石箱(奈良法蓮町)

和やまむら

秋の宝石箱のような美しさ、右から、柿の器に入った柿なます、続いてカボスを器にした春菊のぬた和え、その横も少し大きめのカボスの器に擬製豆腐と板谷貝の包み焼きが、まるで栗が弾けている様、その上に銀杏とアーモンド揚げを松葉を見立てた冷や麦で串刺しにして添えられている。そして左端もカボスの器に鯛の手毬寿司と車海老、山海の馳走が銀杏の葉や色付いたもみじ、柿の葉に埋もれ絵画のような素晴らしい盛り付け、そして落ち葉たちを除ければ、その下にはこちらご自慢の胡麻豆腐が顔を出す。

帆立にしめじと水菜を添えたカボスのゼリー掛け。色合いがとても綺麗、そして帆立は大きく柔らかい、箸で簡単に割けるほど、それに酸味があって爽やかなゼリーが実によく合う絶品、トッピングされた山芋も良いアクセントになっていて実に美味しい。

南瓜麩、海老芋、蕪にほうれん草。蓋を開けると柚子の香りが一面立ち込める、出汁も良く出来ている、蕪も柔らかい、そしてこの南瓜麩が丁度良い固さで出汁と相まって本当に美味しい。

◇「奈良に美味いものなし」と言われた時代は終わっていた。京の料理にも全く引けを取らない、旬の食材の美しさ、味、香りをふんだんに引き出した素晴らしい料理の数々だった。

十二月 お竈はんの御飯に 炭火の肴と山野草を添えて(神楽岡)

草喰 なかひがし

左奥から柚子皮を器にして南瓜と蕪のすりおろしみぞれ和え、その上には金時豆と貝割れが添えられている。右横には、ブロッコリーとカリフラワーの蒸し焼き。その前やや中央に、林檎で挟んだ鹿肉の燻製。上には、抹茶を掛けた味女泥鰌(アジメドジョウ)と鰹の腹皮の炙り焼き。左下には、栗きんとんに銀杏を入れて、クワイ煎餅を挿してサザンカに見立てる。その右がさやごと乾煎りした黒豆。

塩断ちした新巻鮭を酒粕に三日三晩漬け込んで、赤大根で挟んで朴葉で捲いて蒸し焼きにしたもの。和歌山の摘果みかんのジャムと酒粕を味りんに漬けて焼いたもの、枯葉をイメージした乾燥させた大根の葉が添えられている。皿にはカワセミが枝にとまっている様が描かれていて、その枝でまるで蓑虫が巣作りをしているかのようにそれぞれの料理が盛り付けられている、想像力を掻き立てられる逸品。

サンタがソリを走らせている。引っ張る荷物は、大原で採れたキウイと橘、キャラ水菓子の大作。

◇どの料理にも力強さと命を感じずにはいられないものばかりだった、ひとつの余りも無駄も無かった。そして、季節感たっぷりに名残りや走りも表現されていて、手間暇を掛けて最高の味に仕上げられていた。ふと暖簾を潜る前に消えそうな手書きの看板が思い出された。「お竈はんの御飯に、炭火の肴と山野草を添えて」大将の想いに触れた気がした。目の前の命ある食べものとは、その瞬間が一期一会。美味しく全てを頂いて成仏を願ってご馳走様をした。

※本記事は、2021/01/04に作成されています。内容、金額、メニュー等が現在と異なる場合がありますので、訪問の際は必ず事前に電話等でご確認ください。

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